みのりの姉
「みのりって兄弟いたっけ。」
「お姉ちゃんがいるよ。
会ったことあるでしょ、こはるも。」
「あー、あるわ。
市民プール行く時に迎えに来てくれたやんね。
びっくりしたわ、白のシビック乗ってバオンバオン鳴らして来るからよ、うちのオカンがきゃーきゃー大騒ぎしてたわ。」
「あれね、先輩から安く買ったとか貰ったとかで、ヤン車仕様だったんだよね。
驚かせちゃってごめんね。
今はもちろん違う車に乗ってるけどね。」
「車だけじゃなくって、お姉さんも金髪で豹柄キャミソール着てて、これから市民プールに引率する姿には見えんかったわ。」
「ごめんね、うちの愚姉が。
服装も驚かせちゃったよね、オカンさん。」
「いや、うちのオカン大阪出身やから豹柄に耐性があるからな。
服装にはノーリアクションやったわ。
あれって中2の頃やっけ。
そう思えば姉ちゃんとは4歳差か?
歳の差的に在学が被らないから、アンタのお姉さんがヤンキーだってのはバレてなかったな。」
「本人が言うにはヤンキーじゃないらしいよ。」
「無理あるわ。
見た目はええわ。
好みの服装とかあるから。
ゴスロリ着たヤンキーが居たっていいし、短ラン着たオタクが居たっていいもんな。
けどなぁ、先輩から車を貰うっていうエピソードだけでヤンキー指数が振り切れとんねん。」
「そんな事ないよ。
じゃあみのりだってヤンキーじゃん。」
「えぇ?そんな事ないよ。
オカンから伝染ってしまった呪いの様な半端な関西弁が口を悪くしてしまっているのは不利な所ではあるけれど。
それでもちゃうよ。
なんでそう思ったん。」
「えー、だってこはる、先輩から貰ったりしてるじゃん、教科書とか。」
「それは違うよ。
先輩から貰うものの中で一番ヤンキー指数が低いのが教科書やん。」
「先輩から貰うっていう行動にヤンキー指数が付いてるんじゃなくて、車にヤンキー指数が付いてくるの?
全然わからないんだけど。
じゃあトヨタやホンダは大人になっても抗争とかしてるって事?
鉄パイプで殴り合ったりさ。」
「大企業がそんなことするかいな。
低いわぁ、解像度が。
先輩から車を貰うっていう全部やねん。
そこから何を引いても足してもヤンキー指数には関係ないねん。
先輩から車を貰う、はい、ヤンキー。
理解した?」
「先輩から、車を、貰う。」
「はい、ヤンキー。
それはヤンキー。」
「偏見じゃんか。
よく分からないよ、他にどんなのがあります?
ヤンキー指数専門家のみのりさん。」
「普段なら高いよ?
私とみのりの仲やから安くしといてやるけども。
ベタな所でいうと、捨て猫を拾うとかかな。」
「はい、ダウト。
姉は猫アレルギーだからダメです。」
「いやいや、あれ?
姉はヤンキーちゃうんやろ?
なら全部を制覇しなくてもいいやん。
とりあえず高ポイントは取ってるけど、これから巻き返して非ヤンキーになるかもしれんし。」
「そっか。
確かに姉ちゃんは自認非ヤンキーだから、家族である僕も一応そのスタンスでいようかな。
我が姉は不良にあらず!
他は?ヤンキー指数高いのって何さ。」
「女ヤンキーやんな。
なら彼氏もヤンキーやろ。」
「いや、運動部だったよ。
今はその人とちゃんと結婚して子供もいるし。」
「おぉ、ヤンキー指数が下がった…訳ないやろ。
トントンや。
運動部の彼氏で下がって、高校の同級生と結婚で上がったからプラマイゼロや。
でも素敵やなぁ、純愛やなぁ。
彼氏、今は旦那さんか。
なんの部活やったん?」
「ボクシング部。」
「はい上昇!」
「えぇ!そこをなんとか!
なんで運動部なら下がってボクシング部なら上がるのさ!」
「人殴ることをスポーツと呼ぶのはヤンキーだけや!
まぁ、可哀想だからなんとか旦那さんを深掘りして指数を下げよか。
お仕事は何されてる方なん。」
「たしか車屋。」
「アップやアップ。」
「でもレクサスだよ。」
「ディーラーならダウンか…?
んー、難しいとこやけど、おまけで下げといたるわ。
えーと、お子さんおるって話やもんな、名前はなんて言うの?」
「あきちゃん。」
「おぉ、なんか安心すらしたわ。
ダウンやな、いい名前や。
一応漢字も聞いとこか。」
「愛するにお姫様で愛姫。」
「アップやったわ。
名前はセーフやけど漢字はアップやったわ。
なんならふた文字とも指数が高いわ。
幾つやっけ、叔父さんとしては可愛い盛りやろ?」
「そうだねぇ。
でももう4歳だからちょっと生意気なってきたよ。
それも可愛いんだけど。」
「…姉ちゃんおいくつやっけ。」
「22歳。」
「10代での出産はアップやわ。
もう後がないよ、弟ならフォローせな。
そっちから指数が下がりそうな情報を出してや。」
「えぇ?そうだなぁ。
ふわふわしたものが好きだよ、ぬいぐるみとか。」
「おぉ、ええやん。集めてんの?
可愛らしい趣味やな、それなら下げてあげられそうや。」
「でしょ?そうなんだよ。
車のダッシュボードもファーでふわふわにしてるんだから。
そこにぬいぐるみを並べてんの。」
「残念ながら大幅にアップや。」
「うっそ!
他か…読書も好きだよ。
漫画だけどね、雑誌まで毎週買ってるから相当好きなんだと思う。」
「漫画か…。
まぁ、雑誌まで買うんやったら下げてやらん事も無いか。
何読んでるん?
私も漫画好きやから今度話してみたいわ。」
「ヤンマガ。」
「毎週購読で指数が上がる唯一の漫画雑誌をよくピンポイントで持って来たな。
ヤンジャンのヤンはヤングやけど、ヤンマガのヤンはヤンキーのヤンや。」
「旦那さんがタバコを吸う人で、ついでに買って来てくれるんだって。」
「愛妻家の方向性もヤンキー指数高いな。
一応タバコの銘柄も聞いとこか。」
「パーラメント。」
「あかん、また上がったわ。
セブンスター、赤マル、パーラメント。
よう覚えとき、これを吸うのはヤンキーしかおらんのや。
タバコの箱が白くなればなるほどヤンキー指数も上がっていくねん。」
「詳しっ。
なんでこはるはそんなにヤンキーの生態に詳しいの。
専門家には専門家になる由来があるんじゃないの。
こはるってばもしかして…。」
「私はちゃうわ!
垂れ目のボブカットはヤンキーになられへんねん。
村八分にされるわ。
あんま言いたくないけど…うちのオカンがな、元ヤンでな…。」
「あ、シビック見てきゃーきゃー言ってたのって、怖かったからじゃなくって、青春が蘇ったからか。」
「そういう事やな。
そういえば今は車何乗ってんの。
念の為や、一応な。
専門家として大切な事なんや。」
「アルファード。」
「そうか、アルファードか。」
「そう、アルファード。
もしかしてこはるん家の車も…。」
「アルファード。
家族が出来たら。」
「アルファード…。」




