こはるの誕生日
『こはる、誕生日おめでとう。
これ、プレゼントね。』
「持つべきものは友やな。
ありがとう、嬉しいわ。
毎年ありがとうな。
18歳なんて成人になる記念すべき誕生日、祝ってもらえて嬉しいわ。
5月5日なんて日に生まれてしまったばっかりに、家では微妙な感じになんねん。
端午の節句は男の子を祝う日やろ?
そのせいでなぁ、おにいを祝いながら私の誕生日祝いせなあかんやん?
そのせいで親の経済戦闘力が半分になってしまってんねん。」
『でも3月3日のお雛様は、こはるの一人舞台じゃん。
…あ、違うか。』
「そう、みのりはあげてたよな、プレゼント。
喜んでたわ、3月3日、おにいの誕生日に。
わざわざありがとうな、その節は。
はあ、運命は残酷やわ。
逆であれば節句と誕生日がフュージョンして強くなってたかもしれんのに、お互いちぐはぐなせいで誕生日が弱まってんねん。」
『本来1の節句と1の誕生日があるはずなのに、0.75と0.75のイベントにしかならない感じ?』
「大阪のオカンを舐めんなや。
MAXが1や。
誕生日と節句は半々にしかならん。
ケーキも一つ、プレゼントも誕生日の方だけや。
そう考えると、私とおにいの誕生日が逆でもあかんかったかも。
全然違う日に生まれな詰んでたんや。」
『僕は11月11日だからなぁ、その悩みはないね。
むしろ覚えてもらいやすくて、カバンがポッキーまみれになる。』
「ポッキーの日やもんな。」
『ふざけるなよ…!』
「急にめっちゃ怒り出すやん…。
そうな、ポッキーの日である前にみのりの誕生日やもんな。
ごめんな、順番間違えたわ。
私が悪いな。」
『プリッツの日でもあるだろうが!』
「あ、そこ?
みのりは自分の事だけでなく、プリッツの事も考えられる優しい人間や。
親も誇らしく思うと思うわ。」
『あ、今日公園にクレープワゴンが来てるね。
奢ってあげるよ、誕生日だし。』
「良いのん?
プレゼントに加えてクレープまで。
我が家のお祝いをもう超えてしもうてるわ。
わざわざ休みの日にプレゼント届けに来てくれただけでも嬉しいのに。
じゃあ…禁断の、デラックスいってまうかな。
いい?みのり。」
『いや、ダメでしょ。』
「えぇ!甘やかして!
最後までたっぷりと甘やかしてや!」
『もう夜ご飯の時間近いんだから、軽いのにしときなよ。
デラックスは名前の通りボリュームとんでもないんだからさ。
ご馳走作ってくれてるんでしょ?
悪いじゃん、オカンさんに。』
「…めっちゃ正論。
じゃあ今日はクレープ無しにして、後日のクレープ祭りを開催する日までキープしといてくれ!
その時、私はデラックスを解禁するぅ…!」
『ん、いいよ。
季節のフルーツ乗せまでなら認めよう。』
「神が、神がみのりの姿をしておわす…!
季節のフルーツ乗せは、1200円超えの天上人しか食べない奴やん。
多分石油王とかしか頼めん。
…めっちゃ楽しみにしとくわ。
今から腹を空かせてな!」
『いや、だから今日は今日で誕生日のご馳走があるんでしょ。』
「そうやった。
明日からにしとくわ。
誘惑で目が眩んでたわ、ありがとうみのり、私を救ってくれて。」
『うん。
じゃあ座ってて、コーヒーだけ買って来るから。
もう少し時間大丈夫?』
「全然大丈夫、ありがとな。
…今日はなんかお礼を沢山言ってる気がするわ。
みのりのおかげやな。
人生が豊かになるわ。
…あ、今日は5の付く日やん。
イチゴ半額デーや!
やっぱクレープも行っとくべきやったかなぁ。
いやいや、フルーツ乗せがまっとるからそっちを楽しみにしよ。
…なんか女子の列に並んでるみのりは新鮮やな。
ようあんな澄まして居れるわ。
姉ちゃんいるからか、あんまり女子の中入っても物怖じせんもんなぁ。」
『お待たせ。
はい、ホットのいちごオレとコーヒー、どっちが良い?』
「なんて出来る男や。
イチゴの日に気づいた私がイチゴの口になるのを想定しているとはな!」
『いや、うん、そうね。』
「店員のお姉さんに押し負けた結果だとしても、私が嬉しいからええんや。」
『見てたんだね。』
「おぉよ。
あまぁ、やっぱり甘い飲み物はいいなぁ。」
『そうだね。』
「なぁ。
せっかく座ったし、プレゼント開けてみてええかな。」
『もちろんいいよ。』
「なんやろか。
箱は…チョコレートくらいの大きさかな。
厚みはもうちょいあるけど。
高いチョコやろ!」
『なんでしょう。』
「どうせこの後見んねんからさぁ。
…んー、包装が丈夫やわ。
包装紙からも金額の高さと祝いの気持ちが伝わって来るな。
……かひゅっ。」
『大丈夫?』
「ちょっとこのいちごオレ持ってて。
こぼしたら終わりやから。」
『うん、そんな大したもんじゃ無いよ。』
「かひゅ、かひゅ、かひゅ。
おま、箱で分かるわ、庶民とは言えな、ブランドくらい。
青緑のブランドなんか一個しか知らんし…。
おま、手袋とか持ってない?
庶民が素手で触ると皮膚が溶けるらしいねん。」
『無いし、大丈夫だよ。
俺も触っちゃったもん、見せてもらう時。』
「お前んちは金持ちやろがい!
あ、今更になってアンタのお姉さんのヤンキー指数が下がってきたわ。
お嬢やん。
全てを覆す力があるわ。」
『アルファード乗ってるよ。』
「どうせエグゼクティブなんとかやろ!
最上級グレードの!
なぁ、これ公園で開けて良いもんちゃうって。
後で開けるから許して欲しい。」
『日常で使うものだから大丈夫だって。』
「えぇ…なら見るな?
あ、財布、財布やんな。
薄ピンクの財布や。
かわいいな、春っぽいしええやん。
もしかして私のこはると合わせてくれたん?やるなぁ。
ありがとな、みのり。」
『えへへ。』
「いや!使えんわ!
こっっっわ!Tiffanyに長財布なんて存在するんや!
いや、まぁ、アクセサリーとかじゃなくて逆に良かったけれども!
ダイヤとか入ってたら胃に穴が空いてたけれども!」
『…んん?……ん。』
「何やねん指差して。
…これ?端っこのキラキラしたやつ?」
『それダイヤだって言ってたよ。』
「かひゅっ!
あぁ…あかん。
ダイヤを生身で見ると、庶民は目が潰れんねん。
見えてる?
私、目、見えてる?」
『見えてるよ。』
「これ…いくらすんねんこれ…。」
『これ?あんまりプレゼントの値段言うのはアレだけど、ひゃ…』
「言うな!口を閉じんかい!
…あっぶなぁ、聞いたら気絶するわ。
今、ひゃって言うた?
ひゃ、の次なんや、百円か?
百円以外でひゃの付く金額ないもんな。」
『…そうだよ。』
「馬鹿にしとんのか。
この箱も買われへんわ!
アンタ何をしてくれてん!」
『恥ずかしいんだけどさ、母さんにも選ぶの手伝ってもらったんだよね。
あんまり分からないからさ、女性物の財布って。
これともう一つ候補があったけどこれが良いかなって。
外商の人が家に来た時に相談したんだ。
あ、買いに行ったのは1人だよ?』
「…外商…?
サザエさんのサブちゃんしか知らん…。」
『あぁ、そんな感じそんな感じ。」
「…返す。」
『……気に入らなかった?
そっか、ごめんね。
こはるに似合うと思ったんだけど。』
「落ち込むなやぁ…。
いや、嬉しいよ?
嬉しいけど、多分この財布の値段の100分の1以下のお金しか入れる日がないねん。
マックスで!
マックスでな!」
『じゃあ貰ってよ。』
「ひぃいいいい!
ありがとな!早よ帰ろ!
家まで送ってくれ!
出来ればSPとか呼んで欲しいくらいや!」
『呼ぶ?』
「呼べんのかい!
いらんいらん、お前が守れ!
…ありがとな、みのり、選んでくれたやつなら嬉しいわ。
普段使いはちょっと、アレやけど、大切に使うわ。」
『うん。
誕生日おめでとう、こはる。』
「ありがとう。
はぁ、帰ったらすぐにバイト探すわ。」
『こはるがバイト?なんか欲しいの?』
「11月までに、稼がんと…。」




