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4.休日



「おはよ〜。今日の朝ごはんは何かな?」


リビングのドアを開け、寝ぼけ目を擦りながらそう呟く。


山田春の朝は早い。


というのも仕事で早起きしているので、休日だとしてもハルは朝早くに目が覚めてしまうのである。


「おはようさん!今日の朝飯はオムライスだぜ!」


「おお〜、朝から豪華だね」


リビングのテーブルの上には、赤みがかった炒飯に、丸々した卵焼きのようなものが乗っかったものがお皿に盛り付けられている。


おそらくあの卵焼きの中央を割くと、中からとろっとした感じのものが出てくるのだろう。


だいぶ前にそんな感じの料理を番組で見た気がする。


たぶんそれを作ったんだろう。


想像するだけで美味そうでヨダレが出てくる。


お皿の横にはカレールーをかける時の道具(名前は知らない)が置いてある。


(あれはなんだろう、カレーじゃないよね…。あっ、デミグラスソースとかかな)


「ちょっと待ってろよ、今リィラ持ってくるから」


そう言ってレドは2階へと向かう。


ハルに対して、リィラはもっぱら朝に弱い。


原因は明白で、夜更かしでゲームしているからである。


ただ朝昼晩の飯は食べるので、朝は大体ふにゃふにゃのリィラを、レドがリビングまで持ってくるのが毎日の恒例である。


たまに朝目覚めた状態で、自分から降りてくる場合もあるが、大抵は寝てないだけである。


そうしてふにゃふにゃしたリィラを担いで降りてきたレド。


リィラは服装は、大体大きめのレドが着れそうなTシャツ1枚だけを着て生活しているので、たまに目のやり場に困る。


特にレドから降ろされた時に、ふわりと舞うTシャツから、綺麗な足とその先が見えそうで毎回不安になる。


というかたまに見えてしまう。


リィラは気にしない性格なので、こちらが一方的にちょっと恥ずかしくなる。


自分もいい歳だが、未だ童貞の為かあんまり慣れない。


「ほぅれ今日の朝飯はオムライスだぜ〜」


「おぉ〜、おむらいしゅ〜」


降ろされてなおふにゃふにゃしているが、ゆっくりと自分のいつも座る椅子に座るリィラ。


レドも自分の椅子に座り、いつものように手を合わせて挨拶をする。


「それじゃ、いただきます!」


「「いただきます!!」」


とは言ったものの、リィラはまだこのタイプのオムライスを見た事がなかったらしく、ナイフを持ってそれを眺めながら、首を傾げて悩んでいる。


ナイフを何に使うのかわかってないっぽい。


そこでレドが解説を始める。


「リィラ、このオムライスはまず、この卵を横に綺麗に割く事から始めるんだぜ」


そう言って実演で自分の卵をナイフで割きはじめるレド。


割いた卵の間からは、半熟のようなとろとろの卵が、オムライスを輝かしく彩る。


「おおぉぉ〜」


「そして横に置いてあるデミグラスソースをかけて食べるんだ」


とろとろの黄金色に輝いたオムライスに、いい香りのする濃厚なデミグラスソースをたっぷりとかける。


ソースは滑らかに流れ、卵の柔らかな曲線を艶やかに彩る。


「おおぉ〜、美味そぉ〜」


そう言ってリィラも、レドのように卵を割いてみる。


するとレド同様のキラキラと輝く黄金色の卵が姿を現す。


「おぉ〜」


目をキラキラとさせながら、先程のレドと同じように、濃厚なデミグラスソースをかけ、早速スプーンでオムライスを掬い、口に運ぶ。


「………うまぁ〜」


実に幸せそうな表情で食べるリィラに、思わず口が緩む。


自分も早速食べようとナイフで卵を中央で綺麗に割いて、現れたキラキラのオムライスに、デミグラスソースをかける。


そしてそれをスプーンで丁寧に掬い取り、口へと運ぶ。


「…美味い」


もう一度口へ運び、またしっかりと噛み締めて味を楽しむ。


(…美味い)


心の中でも言ってしまう程美味い。


美味さを噛み締めながら食べていると、レドが話しかけてきた。


「そういえばハル、最近なんか怪人とかいう化け物が街中に現れるようになったらしいが、大丈夫か?」


「…え?なにそれ知らない…」


普通に驚いた顔で反応する。


え?いま怪人って言った?


「私も知らないんだが…」


リィラも知らなかったらしい。


「まぁ最近だからな。ニュースとか見ないとあんまり知らねぇかも。なんか突然街中で、ヒーローショーに出てくるような怪人が出てきて、街を破壊したり、人を襲ったりしてるらしいぜ」


「え、こわ…。この前ニュースで見たクマより明らかにヤバいやつじゃん…」


「はぇ〜、この世界もそういう化け物とか出たりするんだな…。アニメとか漫画とかの奴にしかでないと思ってた」


「いや初めて聞いたけど…。本当に怪人なの?映画とかの宣伝とかじゃなく?」


「ニュース見る限り本物だな。なんか自衛隊を怪人が現れた都市に派遣してるとか言ってたぜ」


「本当の話なんだ…。怖いなぁ」


「もし危なくなったらラウィンで呼べよ?いつでもすっ飛んで助けてやるからな」


そう言ってサムズアップするレド。


「レドが忙しい時は私でもいいぞ!私がサクッと助けてやろう!」


ドンと胸を叩き、自信満々にリィラもこたえる。


「ありがとう2人とも。とても心強いよ」


「そういやレドは大丈夫なのか?」


「あ?なにがだ?」


レドは自分が心配されると思ってなかったのか、口に運ぼうとしたオムライスを目の前で止めて、口を開けて呆然とリィラを見る。


「いや、お前いっつも買い物行ってるけど、怪人と間違われて通報されるんじゃねぇの?」


「あ〜?あー…。あ…?いやだがご近所の婆さんにも、お話上手のレドさんと呼ばれ、近所でおもしろかっこいいコスプレイヤーとプチ有名人になった俺様が通報なんてされる訳…」


「でもまぁ知らない人から見たら怪人だよね、レドも」


ハルの何気なく言った一言でスプーンを落としてしまうレド。


そんなレドに、リィラは疑問を口にする。


「お前人間の姿になったりとかできないのか?お前なら余裕そうだが」


「嫌なの!俺様は今のこの素晴らしい完璧ボディのありのままの姿でいたいの!」


レドはイヤイヤと自分の身体を抱きしめてそう懇願する。


「でもそのままじゃ通報されそうだけど…」


「肌の色を黒じゃなくて、人間っぽく肌色にするとか?」


「裸の変態みたいじゃねぇか!!」


「まぁせめて、服着るとか…?」


「そういやいっつも全裸だもんなレド」


「なんか変態みたいに言うな!俺様はえっちな部分ないから良いの!!ったく…、まぁ服着るのはアリか。服着て暴れなければセーフか?」


「確かに、服を着てるだけでも、ちょっとフレンドリーな感じはするよね」


「なんかアニメで見た認識阻害みたいな魔法でもかけたらどうだ?それか普通の人間と変わらないという認識される魔法とかないのか?」


「なるほど、そういう魔法もいいな。俺様を知ってる奴以外にはそういう普通な感じに見える魔法もかけとくか」


「レドって色んな魔法使えるんだね」


「まぁ俺様ってば最強だからな」


「そういや聞くの忘れてたけど、お前って本当に悪魔なのか?悪魔っぽいとこ見た目しかないんだけど」


ふとリィラが、この世界に最初に来た時に聞こうとして忘れていた事を、改めて聞く。


「ん?ああ、そういや言ってなかったか。そうだな…、俺様は正確に言うと、悪魔じゃねぇ」


「え?悪魔じゃないの?」


ハルは驚いた表情をする。


「そうなのか?でも私の魔法で出てきたじゃん」


「んー、悪魔ってのは俺様より後に出てきた存在だからなぁ。どっちかって言うとアイツらが俺様の姿をパクってきやがったんだよ。俺様強えしかっこいいからな。でもややこしいから俺様と同じ顔してる奴は全員ボコボコにして変えてやったが」


「そういやしっぽは無いのか?悪魔って大体生えてるだろあれ」


「俺様実はしっぽあるぜ」


そう言ってレドは椅子から立ち上がり、自分達にも見えるように横向きに立つと、段々とお尻の上あたりから、根元はレドの太ももぐらいはある太めで、長さはレドの身長程もある大きなしっぽが生えてきた。


「じゃじゃーん」


段々と細くなる形で鱗のような光沢もあり・・・、まるでドラゴンのしっぽのように見える。


なんというか───。


「全然悪魔っぽくないな」


リィラが率直な感想をこぼす。


「俺様と被っちまうからな。俺様と似たようなしっぽの奴も、後ろ姿が被ってややこしいから、ボコボコにして、細いヤツしか居なくなった」


「羽はいいのか?」


「羽はまぁ妥協だな」


「妥協したんだ…」


「てかしっぽしまえるなら、羽もしまったらいいんじゃないか?邪魔じゃないのか?」


「俺様のチャームポイントをこれ以上減らしたらただのムキムキの黒人になっちまうだろ」


「ふふっ」


「おいっ!笑ったら差別だぞ!」


ハルは思わず笑ってしまったが、レドにそう指摘されて口を一文字に塞ぐ。


「差別とか言う方が問題になりそうじゃないか?」


「ごほん!まぁそれはそれとして、ハル。仕事行く時とかは気をつけるんだぞ。怪人に襲われてピンチになったら、すぐに俺様かリィラを呼んどけ」


「うん、わかったよ。ありがとね2人とも」


「おう」


「くるしゅうない!」






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