26.リィラ・ヴィクトリー2
激しい轟音の爆発に巻き込まれたリィラだが、球状の防御魔法によって無傷であった。
「しまった!この距離だと私の活躍が見せられん!!!…かと言ってまた戻るのも危ないしなぁ…。爆発の規模も思ったよりでかいし…」
先程の2人と1匹がいた方を見ると、その少し左側の方の斜面が結構えぐれていた。
あれが先刻感じた妖精の魔力爆発かと心の中で呟く。
「んでこっちは…」
爆風が収まると、そこに怪獣の姿は見えなかった。
「…これもしかして沈んでるのか?場所悪いなぁ…、本当に活躍が見せられんぞ…」
そう言ってしばらく海を眺めていたが、一向に先程の化け物が襲ってくる気配はなかった。
「…おい嘘だろ。活躍どころかこれ逃げられたか!?」
そう思って目に魔力を集中させ、先程の怪獣サイズの化け物を探したが、潮の流れもあってか痕跡すら分からなくなっていた。
「…………マジか。海だしこれ逃げられた時点で詰みか…。あー、やらかしたかぁ…。てかあれ私らが倒した方がいいのか…?特殊組織みたいなのいるのかな…?海外の漫画みたいな奴らとか…」
最悪レドに倒してもらうかなぁと考え、ため息をつきながら鎧と剣を消失させた。
そしてよし戻るかといったところで、水中から光る何かが迫ってきた。
「お?これさっきのビームか!?なんだいるじゃん!そうかめっちゃ深い所に潜って見えなかったのか!!紛らわしい奴め!!」
リィラは先程消した巨大大剣を再び召喚し構える。
そして飛んできたビームに向かって思い切り振りった。
「おおおおっ!!!!重いッ!!懐かしぃなぁ!!!こりゃあドラゴンのブレスぶった斬った時ぐらい楽しいぞっ!!!」
そして怪獣が出し切ったであろうビームを全て斬ったリィラは、水中に向かってダイブした。
創剣技魔法【イェネオス・オルケストラ】!!!
リィラは心の中でそう叫び、リィラの周りで片手に握っている巨大大剣を左手にも生み出し、さらには背後の水中にも無数に生み出し、それを周りに飛ばしながら水中の奥深くまで飛ぶように向かう。
さらに巨大大剣をぐるぐるとミキサーのように水中で回転させ、それは巨大な大渦となって水中を駆け巡る。
それはまるで巨大な竜巻の龍のようであった。
「フハハハハハハハハハハハ!!!見るがいい!!我が究極奥義!!!………えーと……、【ドラゴンテンペスト】おおおおおおおおおお!!!」
リィラは空中に浮かぶ魔法の応用で、身体の周りに空気の層を作っているので、身体は濡れないし喋れる仕様になっている。
なので気持ちよく高らかに笑いながら、思いっきり適当に考えた技を叫んで、更には自分すらもぐるぐると回転して、奥へ奥へと突き進んで行く。
だが暗すぎて周りが見えない。
何となくビームが出てきた方向へ向かったが、なかなか姿が見えないし、そもそも暗い。
もはやどこに向かっているかも分からなくなっている。
一旦テンションのあがった行進を止める。
「暗すぎる!!!明かりカモン!!!!」
パチンと無駄に指を鳴らして、周りに数百メートル単位で大量の光球を発生させる。
ちなみに本当は指鳴らしは出来ないので、音魔法でパチンと鳴らしているだけなのはリィラだけの秘密である。
そうして灯した明かりだが、周りには何もいる気配がない。
だが足を止めてやったからか、もしくはこの明かりに釣られてか、向こうから顔を見せてきた。
だがその大きさはやはり大きく、周りに大量の光球を出したとはいえ水中で見るこの怪獣は、甚だホラーにしか見えないビジュアルですごく怖い。
手の指だったように見えたところも伸びて触手のようになっており、先程よりも面積が増して、さらに大きく見える。
「うぉぉぉおおおおおおおおおおおおキモイ!!!!!だが私はホラー映画見た時に思った!!!こういう化け物は、倒すのが1番手っ取り早いんだよこのやろおおおおおおおおおおおおおお!!!くたばれやあああああああああああああああああぁぁぁああああああああああ!!!!!」
リィラはそう叫びながら、無数の大剣と一緒に怪獣へと向かい飛んで行った。
創剣技魔法【イェネオス・ホロス】!!!
無数に飛び交う剣を凄まじい居合のような速度で動かす。
縦横無尽の剣閃が煌めき、次の瞬間にはリィラは怪獣を背に目を閉じていた。
「また、つまらぬものを斬ってしまった…フフッ」
前に動画で見た名言をそのまま口にしてにやつくリィラ。
だがその動きと実力は本物で、怪獣は次の瞬間にはバラバラに切り裂かれていた。
ーーーーー
リィラが空を飛びながら戻って来ると、道路には1台の大きいヘリコプターが停まっていた。
大きめのヘリコプターで、かなりギリギリである。
ちなみにゲートで戻らなかったのは、念の為魔力を温存する為である。
連発できるほどレドが抑え目な魔力量で作った魔法とはいえ、無限に魔法が使える訳では無いので、念の為である。
ヘリの横ではアキラがタバコっぽいものを加えて立っていた。
リィラに気づくと、アキラは咥えていたタバコっぽいものを口に全部入れて、もぐもぐとし始めた。
近くに飛び降りたリィラはとりあえずアキラへ呟く。
「タバコって食べるものだったんだな…」
「いやこれはお菓子だお菓子。食うか?」
そう言ってアキラはココアシガレットをリィラに向けて差し出す。
「お、いいのか?」
リィラは笑顔で1本貰うと、口に咥えて腰に手を当てる。
「フッ、これで少しは威厳が出たかな…!」
その胸に付いた【ニート】の文字で威厳が台無しだよと言いたかったが、アキラは我慢した。
「あの怪獣は倒したのか?」
「おう!バッチリみじん切りにしてやったぜ!」
無駄にキメ顔で言うリィラに、アキラは一応の安堵のため息をもらした。
「そういやまだ名乗ってなかったな。俺は藤原晶だ。よろしくな」
そう言って手を差し出すアキラに、リィラは快く手を握り返した。
「そうか!改めて、私はリィラ・ヴィクトリーだ!よろしく!」
にっこりと笑顔で返答するリィラ。
「あー、とりあえずなんだが…、ヘリ乗ってくか?」
「えっ!?乗っていいのか!?」
アキラは言いながら、あのゲートとかいう魔法で帰ってしまうかと思ったが、ワクワクといった表情で返事をするリィラにちょっと驚いた。
「あ、ああ。こっちだ」
そう言って2人はヘリの中へ入った。
中に入ると既にサクラとやんちーが中で座っており、奥にはバイクが縄で括り付けられていた。
「おお〜、これがあのヘリの中か〜!思ったより広いな!」
「お、お疲れ様です」
そう言ってサクラがリィラを労う。
「おう!怪獣は私がちゃんと倒しておいたからな!安心しろよな!」
えへんと腰に手を当てるリィラ。
「あっ、えっと、私は雛森桜と言います。よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げて挨拶するサクラ。
「ああ!よろしくな!」
「…俺は羽切王牙だ」
サクラの頭に乗ったやんちーがぶっきらぼうにそう呟く。
「こちらはやんちーです!」
サクラはお構い無しに愛称の方で呼ぶ。
「やんちーだな!よろしくな!」
なでなでとリィラは無遠慮に撫でだす。
「なでなですんな!」
ぺしぺしとリィラの手を叩くやんちーだが、その姿も愛らしいのか、ぺちぺちするやんちーと指で戯れだす。
「あの〜そろそろ飛ばしていいっすかね?」
するとヘリの運転手がこちらへ質問する。
「ああ、すまん。大丈夫だ。飛ばしてくれ」
「りょーかい」
そうしてヘリは動きだした。




