十六話 幕開け
シャンバラは、一人船尾のデッキにいた。昨夜、祖父に言われていたことを考えていたのだ。しかし、答えは見当もついていなかった。その内段々と空が白けてきたそして日が昇ってきた。遠くの空には、帝国宇軍の主力艦の第八世代のガラガが飛んでいた。おそらく皇帝陛下直属の特殊作戦隊の機体だろう。この地域をこの時間に主力艦で飛行できる艦隊は、特殊作戦群しかない。しかしそんなことは、シャンバラはしらない、当然であろう父である。インドラですら知らないがバルバロッサは、知っている当然であろう立ち上げを計画したの張本人であるのであるのから。しかし、シャンバラは、皇族近衛隊だと思っていたのであるから。
「朝か」
「朝です」
一人でいたはずシャンバラの後ろに船長が立っていた。シャンバラは、少し驚いてしまった。
「焦ったでは、ないか」
「失礼しました」
「よい、その代わりと言っては何だが愚痴を聞いてくれ」
「何なりと」
「貴族は何のためにいると思う」
「そうですね。貴族は、飾りだと思います」
「飾りだと」
「はい、貴族は正直いてもいなくてもさほど問題なく過ごすことが出来る。しかし、貴族がいることで、生活が適度に安定する。私も元貴族です。貴族では、無くなってから気が付きました。」
「そうか、お前は元貴族か」
「はい、貧乏準男爵の五男ですが」
「貴族は、飾りか面白い」
「そうでしょうか。シャンバラは、そのことに気が付いていると思っていたのですが」
「いや、そうは思ってはいなかった。」
「そうなのですか。これは、失礼しました」
「良い、私が聞いたことだ。しかし、生活はどうだ」
「貴族であったころより、良い生活を送っています」
「そうなのか、準男爵でのいくつか惑星を所有していると思うが」
「はい、実際に我が家では、10個ほど所有していました。しかし管理するのにも金がかかりますそうしているとあまり自由に使える金などほとんど残らないのです。ましてや五男にもなると」
「そうなのか」
「しかし、継承権を放棄したことで第一級市民となり今の仕事をしております。」
「そうか、それは良いことを聞いた」
「しかし、同時に貴族は、盾だと思います」
「盾か」
「盾です。優秀貴族の当主は、常に戦場の先頭にいます。戦という厄介ごとから帝国民を守っているのもまた事実です」
「そうだな。しかし、戦場で死ぬ多くは、市民だ」
「当然です。真っ先に亡くなられた。こちらが困ってしまいます。もとより戦争で死なないと思っている者は、いないでしょう。いずれ人は、死ぬものです。死は、皆平等にやってきます。それが少し早くなるだけです。」
「そうだな。心に留めておく」
「そんなことを言っていた、兵士がいたと思っていて下さい。その上安全な場所でそんなことをほざいている老兵がいたと」
「そうだな、船長、先代邸に向う」
「了解しました」
二時間ほどで先代邸に到着した。
「どうした、シャンバラ」
「いえ、答えが見つかったので」
「どんな答えだ」
「はい、答えはないです」
「答えはないか。不正解でも正解でもないだろう、ぎりぎり合格といったところか。付いてきなさい」
「はい」
そう言って。祖父は、屋敷の奥に向って歩き出した。歩いた先には、祖父の自室があった。この部屋は、祖父しか入ったことがない、父ですら入ったことがないと言っていたのだ。
「入って。良いぞ」
「失礼します」
「そこで待っておきなさい」
そう言って、ソファーを指した。祖父は、部屋の奥に向って歩き出ししばらくして、永細い箱を抱えて戻ってきた。その箱を机に置いた祖父は、反対側の一人掛けのソファーに腰を下ろし口を開いた。
「本来の予定では、小等学校に入学してからしばらくして渡そうと考えていたが良いだろう。箱を開けてみよ」
「良いのですか」
「良い」
なぜ、シャンバラが聞いたのかというと箱の上面には、皇族の証である紋章と帝国の国旗が描かれていたのであった。その箱を恐る恐る開けたそこには、1丁の火薬式のライフルと同じく火薬式の拳銃、サーベルが入っていたのである。
「これは」
「これは、初代さまが、皇帝陛下より頂いたものだ。そしてこれを受け取った者は、当家では当主候補とされる」
「では、父も」
「そうだ、そしてどちらも球が一発のみ入っている。これは、当主候補をやめるときに自害するときに使われる」
「自害ですか」
「それだけ、覚悟を持ってやらなければならないからだ。」
珍しく、バルバロッサは厳しく口調でいった。実際にこの銃で自決した者もいる。それほど重大な決断なのだ。そしてその判断を若干5歳の孫にこれからの人生を決断させようとしているのである。そして、シャンバラ決断した。箱を受け取ったのである。
「おじいさま、いえ先代第1級伯爵さま。私、シャンバラ・フォン・ブリュンヒルトは次代当主候補になります。」
「そうか、しっかりと役目を果たせ。」
こうして、シャンバラ・フォン・ブリュンヒルトは、次代当主候補となった。




