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09:風VS泥

―ドゴオオオン!

「なっ!何今の!」

「まさかトキ君⁉︎」

 志穂と美穂が大山と対峙(たいじ)している時のこと、突然の大きな音に反応する。

 大山もそれにつられて反応して動きを止める。

「まさかやられたんじゃないないだろうな…」

 明らかに大山が動揺するに対し、志穂と美穂は苦い顔して見合わせる。

「怯ませるどころか思いっきりやっつけちゃったとか」

「まさかねぇ…」

 泥の壁が立ち(ふさ)がって時光と恵の安否が確認出来ない今、それしか言えなかった。

「とにかく今はあの男をやっつけるしかないね」

「もちろんだよ志穂、ササッと片付けよう」

「やれるものならな、直針泥(ちょくしんでい)!」

「「(せい)風輪(ふうりん)!」」

 泥の針をみじん切りするように細かく刻む。

飛泥弾(ひでいだん)!」

「「昇風拳(しょうふうけん)!」」

 互いの技が相殺する。

「「ならば、風展輪(ふうてんりん)(そう)!」」

「無駄だ、剛泥壁(ごうでいへき)!」

 (かす)るだけでもスパンと切れそうな風を泥の壁で防ぐ。

 攻撃は防ぎ切れたものの泥の壁は綺麗に切り落とされ崩壊する。

「やはり駄目か」

 大山は自分の攻撃や防御が好ましくないように思った。

「このままじゃ私たちもマズイわね」

「ええ」

 志穂の言葉に美穂は短く返事する。

 2人とも少しずつ余裕がなくなってきている様子である。

「これも使いたくなかったんだがな、濁泥波(だくでいは)!」

 ゴゴゴゴッと押し寄せる泥の波が志穂と美穂に襲い掛かる。

 2人は足元に風を(まと)わせ回避して宙に浮く。

「これはもう下に降りたら吞み込まれるわね」

「こうなれば出し惜しんでいる場合でもないね」

 お互い頷き詠唱する。

「「新緑(しんりょく)()りたる至宝(しほう)()二手二目(にしゅにもく)が重ねたる天衣無縫(てんいむほう)(きょう)(おろし)を放ち悪人(あくじん)を切る!蓮奏(れんそう)集栄風鋒(しゅうえいふうほう)!」」

 魔法陣が展開され、そこから如意棒(にょいぼう)をスッと抜き頭上でくるくる回し勢いつけ、背中合わせて構えを取る。

「「さあ行くよ!」」

「来い!」

 大山は腰を低くして構えを取る。

「「双風迅(そうふうじん)(せん)!」」

剛泥壁(ごうでいへき)!」

 風の軌道が内側に入り込む軌道で大山に向かい、大山は先ほどよりも力を込めて泥の壁を展開させる。

 2人が放った風はスパンとはいかなかったがゴシャと泥の壁にめり込み、壁が崩壊した。

「っ!ここまでとは…」

 防ぎ切ったが大山はヒヤリとする。

「力が足りていなかったみたいだね」

「ダメージもなかったみたいだし」

 ある程度、力を加えてみた2人は攻撃が通らなかったことを確認する。

「それなら、散泥砲(さんでいほう)!」

「「双風迅(そうふうじん)(くう)!」」

 ラグビーボールくらいの大きさの泥の砲丸が数十発飛んで来るのに対して、今度は横一線の軌道の風が泥の砲丸を向かい切る。

「ええい、爆線泥(ばくせんでい)!」

「美穂そろそろ行くよ!」

「うん!」

 2人は手元でクルッと如意棒を回し背中を合わせて構え直し、

「「直風走突(ちょくふうそうとつ)(めつ)!」」

 ドリル回転した泥の線と威力を凝縮したムラのない真っ直ぐな風が激突。譲らない技の押し合いとなる。

「うおおおお!」

「「いっけええええ!」」

 やがて大山の力が押される形になり、

「うああああ!」

 堪え切れず後方に地面に引きずられ仰向けになって倒れる。

 宙に浮いている志穂と美穂は息を切らしながらも顔を合わせ、ハイタッチする。

「やったわね美穂」

「何とかね」

 大山の」意識はハッキリしているが、抵抗する力が残されていなかった。

 そして今まで塞がっていた大きな泥の壁が一気に崩れ落ちる。

 そこで志穂と美穂に待ち受けていたものは、意識を失って横たわる恵を抱きかかえる時光と、うつ伏せになって倒れていた意識不明の野口の姿であった。

「先に本部に戻る。申し訳ないけど後はお願い…」

 志穂と美穂に背中を向けたまま一言だけそう告げて重い足取りでその場を後にする。

「「気をつけてね」」

 心配そうにそれだけしか言えなかった。

 ここでオペレート室にいる真奈からの「精神念話(せいしんねんわ)」で2人の頭の中で語りかける。

『今はそっとしておきましょう。今は3人の運ばれる医療機関に向かって状況の確認と整理をするわよ』

 時光のことを気にかけながらも2人に促す。

 この時、医療班が現場に到着し、倒れている野口と大山、先ほどまで時光に抱きかかえられていた恵を医療機関に運んだ。


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