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11:今後の試練

「クッ!駄目だ…。こんなんじゃ」

 時光はメンバーと合流せず一人だけ本部に戻り地下トレーニングルームで素振りをする。

 トレーニングルームの広さはメンバー全員が入っても存分に自分たちの体を動かせるだけの広さに設計されてある。

 そんな中、思い通りの素振りの出来ていなさに情けない気持ちや反省の気持ちや後悔の念があり、何千回、何万回と素振りをしても気持ちの整理がついていなかった。

 素振りの手を止めると静かにドアが開き、水色コートの青年が入ってきた。

 時光はそれに気付き振り向くことなく話をかける。

「一体いつからドアの前にいたんだ?」

 落ち着いた口調で尋ねると水色コートの青年は静かに告げる。

「時ちゃんがここへ来て素振りを始めて数分経ったあたりからだよ。それからずっと様子を見ていたよ」

「ほぼ初めからか…。それだったら遠慮なく入ってくればいいのに」

「いや真意を確かめるために長めに素振りしているところを見ておきたかったんだよ」

 この時点で悟られていると思った時光はそれでも水色コートの青年に問いかける。

「それで結果としてどう見えた?」

 容赦のない、それでも柔らかい口調で答える。

「自分の望んでいない結果を出してしまい、その後悔が(にじ)み出ているだけではなく、力任せに問題を片付けてしまったことを引きずっているように見えたよ」

「そうか、やっぱりそう見えていたか…」

 ここで一息ついて話を続ける。

「どういう顔して話せばいいかわからないから、今から話すこともこのままで構わないかな?」

「話せるところまでで構わないよ」

 静かにそう告げると時光は今まで起きたことを全て話した。

 その際、水色コートの青年は一切口を挟むことなく、じっと話を聞いた。

 時光が途中で言葉に詰まった時「大丈夫かい?」と気にかけると「ああ大丈夫だ」と返答して話を続けた。

 話が終わり水色コートの青年は考え込むようにして時光に問う。

「時ちゃん、聞いてもいいかな?」

「何だ?」

「時ちゃんは一体何のため(・・・・)に戦っている?」

「…っ⁉︎」

 今も気持ちの整理がついていないため質問の意味を掴めずに混乱する。

 その様子を見て、自分の言い方が悪かったことを悟り訂正して改めて時光に問う。

「言い方が悪かったようで申し訳ない。何のためではなく、誰のため(・・・・)に戦っている?」

 訂正された方を聞いて落ち着きを取り戻し、考えること数分経ち、

「それは自分を含めメンバーや罪のない人を助けて犯罪者を捕らえること、俺はそれを心がけて戦っているよ」

 それを聞いた水色コートの青年は、

「確かに自分や周囲にいる友人や家族、その罪のない人を助けることは大切だよ。多くの犯罪が発生すればそれだけ被害も拡大してくる」

 ここで一旦言葉を止め、次に確信つく鋭い言葉を時光に放つ。

「それじゃあ今回の任務で周囲の人はとにかく、そこに「自分」は含まれていたかな?」

「っ!」

 改めて言われるとそこには確かに痛いものがあった。

 今回の任務は廃棄工場を壊しまわっている犯人の捕獲、想定外は「筋力増強薬」を使用され、それに対応し切れず、みすみす恵に相手の技をくらわせてしまったこと。

 罪のない一般の人が周囲にいなかったことが唯一の幸いだった。

 違法薬を使用された条件下において上手く立ち回れたかどうか、結果として恵が苦しめられたところを見せつけられて力任せに相手に重傷を負わせてしまった。

 それを踏まえてでも相手が誰であろうと自分の身を捨ててまで戦っていたかもしれなかったという結果に至った。

(結局俺は自分勝手でやっていたのか!…)

 グッと拳を握りしめ内心強くそう言い聞かせた。

 その様子を見て更に水色コートの青年が厳しく追求する。

「周囲の人を守るにあたってそこに「自分」が含まれておらず結果、それで周囲の人に悲しませるようなことがあっては、それはただの自己満足にしかすぎない。そのような戦い方を続ければ間違いなく命を落としかねないよ。周囲の人を守りそこに「自分」も含まれて生きることによって初めて「人を守る」と言えるのだと私は思うよ」

 そう言い切ったところで次は自嘲(じちょう)する。

「普段、本部にいる皆を任せて自分ばかり自由でいられる私が偉そうなことを言えた立場ではないけど、時ちゃんにはそうなってほしくないからね」

 散々な言われようだがクスッと笑い言い返す。

「総監からの別の任務をこなしている人が言う台詞か?」

「私はただ自分のしていることが正しいとありたいために証明し続けているだけさ」

 水色コートの青年も口元を(ほころ)ばせた。

「お前って本当に不思議だな」

「それはお互い様だよ」

 ここで時光は深呼吸してようやく水色コートの青年に振り向き告げる。

「今から差し支えなければ手合わせ願いたいが大丈夫か?」

「私は構わないよ。もちろん容赦はしないよ」

「それで頼む」

 置いてあった竹刀で競り合う2人だった。


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