褒め屋通いの雪だるま
ビッグホローパークの入り口の通りの前にはたくさんのカラフルな雪だるま達が並んでいる。
いちごのシロップやブルーハワイのシロップ、物によっては黒蜜やはちみつなどで色付けされていて同じ色の雪だるまはひとつもない。
雪だるま達の共通点は元々は真っ白だったことくらいで本人たちは様々な理由でそこにいる。
例えば、ここにいるたくさんの雪だるまの行きつけである夢のような場所がある。そこに行くとそこにいる人たちに自分のふわふわの雪や体温や色を褒められるのだ。
褒め屋と呼ばれる夢の場所は暖かくて居心地が良くて、時を忘れていつまでもそこで過ごしてしまう。
けれどもその場所は雪だるまには暖かすぎて、次第に褒めてもらえるところがなくなるまで溶けてしまう。
するとそこにいた人たちがこぞってこけしみたいに細くなった雪だるま改め雪こけしに言うのだ。
「僕たちが褒める雪が溶けきったら褒められなくなるからまた雪だるまになって戻っておいで」
雪こけしは少しずつ雪だるまに戻るためにせっせと雪を集めるのだけど、前のような雪だるまに戻るのには時間がかかる。一日に自分の元に降ってくる雪には残念ながら限りがあるのだ。
だからこそビッグホローパークの前に集まっては自分が集めきれなかった雪を探しにくるのだ。
「僕が雪をいっぱい集めてくるからその代わりにそのふわふわの雪にシロップをかけて食べさせておくれよ」
そしてそんな雪だるま達に近づいてくる人たちもいる。雪を食べるのが好きなグルメな人達で、特に雪だるまにシロップやらなんやらをかけて楽しみたい人たちだ。地面に落ちた誰に踏まれたか知らない雪よりも上質で舌触りのいい雪だるまの雪はとっても美味しいらしい。だからその人達は雪だるまが一人で集めきれなかった雪を代わりに集めてあげて美味しい雪だるまの雪にシロップやらなんやらをかけていただくのだ。
そしてシロップやらはちみつやらをかけられた雪だるまはカラフルになって雪こけしから雪だるまになってまた褒め屋に通えるくらいには雪が溜まっていく。雪が溜まったカラフル雪だるまがビッグホローパークを去っていくと、また新たな雪こけしや、オシャレで新しいニンジンの鼻やバケツの帽子を手軽に買いたい真っ白な雪だるまがその穴を埋めるようにやってくるのだ。こんな毎日が続いて続いて……。
そして今日もまた、夢見る真っ白な雪だるまがカラフルに染まっていく。