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第11話 模擬試験

とある朝。祐希、拓、圭吾は一緒にご飯を食べている。

今日の朝食は、崩した洞穴芋に少し水を浸し温めた物だ。味付は塩を振りかけただけだ。洞穴芋は賢者がこの洞窟で収穫した物で、薩摩芋程ではないが少し甘い芋だ。


拓が大きく溜息をついた。手が止まっている。


「流石にこの食事にもそろそろ飽きてきたよなぁ」


「そう?僕はそんなこと思わないけどなぁ普通においしいけど?祐希はどう思う?」


「俺も拓と同じで結構キツイ」


クラスメイトの皆と違い、圭吾はこのただ水に浸した芋のスープ?みたいなものをやけに気にいっていた。この食べ物を食べる時の圭吾はいつも新鮮な表情をする。この素朴な食べ物を気にいる要素が祐希たちには理解が不可能であった。


「圭吾は置いといて。あと一ヶ月も耐えるんだぜ?祐希」


「なんで僕を置いておくんだよ!逆に言うけどあと一ヶ月もしたらこの素晴らしい料理とおさらばなんだぞ?」


拓と祐希が「おさらばでいいじゃん」と苦笑いをした。


「拓が言ってくれて気づいたけど、もうあと一ヶ月でこの生活も終わるんだな…」


祐希が考え深く語った。


「そうだなぁ。もう二年近く立つのか。洞窟外の世界では一ヶ月近くらしいけどな?」


拓がにこやかに話す。


「僕たち大丈夫なのかな?試験合格できるのかな?まず、身分証明書とか発行できるのかな?」


「圭吾心配しすぎだぞ?拓とは違い、俺と圭吾はテイン語苦手だったけど、今では話せるようになったじゃん。身分証明書とかも賢者がなんとかしてくれるから大丈夫。そんな心配するなよ」


「た、確かにそうだよな。心配しすぎだった」


「そうだぜ圭吾。俺たちは賢者に色々教えてもらったんだからな!祐希は格が違うとしても、俺たちの中で圭吾は魔法結構得意の方じゃん?三番目か四番目ぐらいか?」


「ありがとう拓。そうだよな、俺勉強はこれしきだけど魔法は僕でも自身ある方だし!祐希には劣るけど…」


祐希が照れ臭そうに振る舞う。拓、圭吾が言ったように祐希はクラスの中で一番魔法を使うのが上手かった。火球を使えた以来、ブランドン学園の試験勉強よりも魔法を優先し、祐希は手当たり次第本棚にある魔導書を読み漁り自分なりの解釈に置き換え日々鍛錬に励んでいた。その努力も実り賢者もそのセンスを絶賛するほどだった。


「なんで祐希は僕と違ってそんなに魔法が凄いんだ?」


「強いて言えば、アニメとかラノベとか漫画を読んでいたおかげでイメージは掴みやすかったのかな?それと、まぁ〜なんだ、感覚かなぁ」


祐希は嫌らしい顔でニタニタと笑った。要するに自慢だ。


その他にも祐希が魔法に長けた理由がある。それは、常に行っている魔力の放出だ。

現に今も祐希は拓と圭吾と話しながら魔力を身体中に巡らせ、足先であったり指先であったり様々なところから魔力を放出している。

祐希はとにかく魔力を、魔法を使い続けることに意識している。その目的は魔力量の増加の試みと魔法を使う時のイメージの促進であった。

それにより祐希は常に神経を常に張り巡らせている状況であった。

その結果が今の祐希の実力につながったのだ。


朝食を食べ終わると三人はその場で先程の会話を掘り返しつつ待機し、賢者や皆が集まるのを待っていた。

皆が朝食を食べ終わり、賢者がいつものように祐希たちの前に立った。

賢者がゴホンと小さく咳き込む。


「え〜今日の予定はいつもとはちと違う。今日は1ヶ月後の試験に向け模擬試験を行う!!」


唐突な賢者の張る声は祐希たちの耳に残った。


「最初は、歴史学。その次、魔術論。最後は、基礎錬金術か薬学じゃ。早速始めたいと思うからいつも勉強しとる長机で模擬試験を始める。この模擬試験の結果次第で明日身分証明書と魔力調査書の発行をするために洞窟を出る。つまり、時の流れを変えるのは今日で最後になるかもしれんぞ?全力で挑め!!」


祐希たちはいつも勉強している長机は本棚に囲まれている場所にある長机だ。

賢者はカンニングできないように長机を魔法で変形し両隣、正面が全く見えないような個室の空間を作った。

そのままでは暗いので賢者が灯を各個室に魔法で灯してくれた。


そして賢者の模擬試験に関する説明が始まった。


「試験時間は六十分。わしが合図をしたらお主らの正面に六十分でなくなる砂時計が映し出される。時間を見つつ、しっかり文章を読み問題の意味を理解するように。それでは準備は良いか?」


賢者が作成した模擬試験の紙はひらひら宙を待って各々に配られた。


「スタートじゃ」


賢者が言った通り合図を出した瞬間正面に砂時計が映し出された。

それと同時に皆一斉に手を動かし始めた。閑静とした場所で鉛筆と机が当たる音だけが聞こえる。


歴史学の問題は大問八あり、そのうちの大問三が必須で大問二つが選択であった。

歴史学は序盤暗記問題ばかりで後半になるにつれて記述式に移り変わる。

歴史学が終わり十分の休憩。その次に魔術論の試験が始まった。


魔術論は全部で二十問。十問は魔法術式の構成を図や記述で表し、残りの十問は魔法の理論に対する感想や考察である。ブランドン学園に合格・不合格する人の差は魔術論による点差が原因だと言われている。魔術論で良点が出ればかなり気持ちは楽になるだろう。

そして魔術論が終わり十分の休憩ののち、最後の基礎錬金術&薬学が始まった。


基礎錬金術は学校で行う化学のテストに近いものであった。大きな違いといえば、地球にはない鉱石や魔法との関連性などが挙げられる。得意な人間には得意の科目といったところであった。また、薬学もそのようなものであった。薬草の写真を見てどのような効力があるのか、どのような場で育つのか、またどのような使い道があるのかといったものだ。

基礎錬金術と同じく得意な人には得意な科目である。


ーーーー


模擬試験終了。

解いた問題用紙は六十分という時間と共に宙を飛び賢者の手元に戻った。

祐希たちの模擬試験はこうして終わった。


晩飯後、祐希たちは賢者に呼ばれ模擬試験を受けた場所に集まった。

賢者は朝同様皆の前に立って、今日の試験のことについて話した。


「え〜今日はご苦労じゃった。今朝言ったように、この模擬試験の結果次第でこの生活の終了が決まる。ちなみにもう結果は出た」


祐希たちは緊張に包まれつつも賢者の方を見て、祈った。


「結果は〜〜〜…」


賢者が焦らす。祐希たちの瞳孔が開き、額に汗が滴る。


「…。合格じゃ!!!」


賢者が丸のジェスチャーをしながら笑顔で言ったと同時に祐希たちは大喜びした。

立ち上がり勝利を誇る者もいれば、座ったまま手を合わせ涙を流す者、マイムマイムを踊る物もいた。

賢者がその光景を微笑ましく見つつ明日の予定を報告した。祐希たちも一回落ち着き賢者の話を聞いた。


「今朝言ったように明日は身分証明書、魔力調査書を発行するためブランドン王国に入国する。そして、ブランドン銀行に行き身分証明書と魔力調査書を発行する。その後は、軽く探索とすると良い。では、また明日朝飯を食べた後で」


そう言って賢者は自分の部屋に戻った。

祐希たちはしばらくの間、嬉しさに浸っていた。




「それにしてもここまで来るの長かったな〜」


祐希の部屋で拓が両腕を後ろにつき天井を見上げ座っている。


「いや、まだだから。試験はえーと、外では二日後、三日後の話なんだから」


拓は地べたに座っているのに対し、ベッドに腰を掛ける祐希。


「そうだな祐希。後もう少しだなぁ…。てか、話めっちゃ変わるけどさ、俺たちがここにきた時なんで賢者は日本語を話せたんだろう?」


「確かにめっちゃ急だな。それなら俺わかるよ。」


「え、まじで?!流石魔法の天才君」


拓が体を起こし手を叩き拍手した。


「そりゃどうも。あれはな?賢者が俺たちの魂に干渉したから言葉を交わすことができたんだよ。魂自体に言語は刻まれてもいないし、記憶もされていない。だから、賢者レベルになると動物とでも会話をすることができるんだよ。その証拠に俺たちが書いた日本語は賢者には理解できなかっただろう?」


「動物と話せるっていいな。でも確かにそうだったなぁ俺たちの名前賢者に日本語で書いて見せたけど理解できていなかったなぁ」


「そゆこと」っと祐希が拓を指差す。


「祐希はできるのか?相手の魂に干渉すること」


祐希は苦笑いで手を横に振った。


「いや、むりむり。あんな芸当は俺にはできない理解が難しすぎる。俺ができるのは単純な攻撃魔法とかだよ。複雑な魔法は、複雑だよ」


「そっか」と拓が祐希のベッドに腰を下ろしたと同時にボソッと呟いた。


「賢者って何者なんだろう…」


祐希が聞き取れず聞き返すが拓は「いいや」と笑った。


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