第10話 初めての魔法
祐希の目がカッと見開く。目を閉じて長いこと集中していたからだろうか目を開いても、視界が確保できない。しかし、それも時間が経てば徐々に視界が戻り、祐希の焦点が定まった。
「見つけた…。あった、あったぞ!」
身体中に巡る魔力。その魔力と同じ雰囲気で同じ波を感じる部分が祐希の身体に確かにあった。額に流れる汗と脇に染みる汗は祐希がどれだけ集中して探していたのかがわかる。祐希はついに自分の中にある魂の存在、その魂から流れ出る魔力の熱や動きを感じ取ることができた。
「第一関門突破!!」
祐希は拳を握りガッツポーズをした。
よしよし!!まずは魔法を感じることができた。よし、この感覚を持ったまま火のイメージを掴んで…。熱くて、軽くて、フワフワでメラメラ、決まった形はなくて…。
再び火のイメージと共にまた熟考し始めた。
模索して数分後。ゆっくりと目を開いた祐希。その時の祐希の風格は、クラスメイトから見て別人かのように見えた。
祐希はスッと右手を人形に向け、自分でイメージした火を具現化させるため、ゆっくりと正確に身体中を巡る魔力を右手に伝達させ一気に放出した。
「火球」
祐希の右手から微かに熱を感じたと思うと小さな火種が現れた。すると途端に小さな火種は膨張し火の玉が現れた。賢者ほどの熱は感じない火球だが、確かに祐希の手から火の球体が現れた。
そして、祐希から放たれた火球は人形目掛け飛んでいった。が、狙っていた場所とはズレてしまった。突然魔法を発動した勇気にクラスメイトのみんなが目を丸くしている。
そんなクラスメイトの眼にも触れずに初めて使う魔法に興奮していた。
「うわぁ。ミスったぁ〜いやぁ狙った場所に目掛けて放つの難しいなぁ。でも…」
祐希が強く拳を握り締め、嬉しいという感情を顕にした。
「よっしゃぁぁぁぁ!!!」
結局、今日魔法を使えるようになったのは祐希ただ一人だけであった。
念願の魔法。祐希にとって今日は人生において最高な日になった。
祐希は今日という日にとても満足していた。祐希の寝顔は満面の笑みで溢れていた。
翌朝、いつもの朝会議が始まった。
ゴホンと賢者が咳き込んだ。
「はて、昨日はどうじゃった?魔法で気分が悪くなっておった者は大丈夫じゃったか?」
髭をもしゃもしゃ弄りながら、祐希たちの調子を気遣っているようだった。
「話は聞いておる。祐希、良かったのぉ。初めての魔法はどうじゃった?わしも魔法を極めた者。初めて魔法が使えたときは、それはもう大喜びじゃった。それにしても、わしの予想よりだいぶ早く魔法が使えたのぉ。異世界人恐るべしじゃ!」
そういって賢者は満足気に高笑いをした。祐希も照れ臭そうに笑みを溢した。




