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 アラームが鳴る、時計を見る、この時間では遅刻だ、急いで会社に行かないと、焦って飛び起きる。


しかし目に映るのは馴染みの薄い土作りの壁、窓からは優しい風が吹き込んでいた。


「そうだ、異世界に転移したんだった、夢じゃなかったんだな……」


 ベッドの上で、昨夜の歓迎会のことを思い出す。歓迎会は楽しく終わったし、料理も旨かった。この異世界の食べ物は美味しいけど、こんなに旨くなったのはわりと最近らしい。

 第三次魔王戦争が終ってここ二十年ぐらいのことで、ある程度平和になったから、みんな飯や娯楽を求めだしたんだとか。

 余裕があるのはいいことだけど、それだと俺たちみたいな転移者はなんのために呼ばれているんだろうか? 


 ベッドから起き上がり身支度を済ませ部屋から出る、建物の作りからか廊下は薄暗く感じる。


 階段を降りて事務所への扉に手をかける、ドアノブはひんやりとしていた。扉の先は朝日が差し込んで部屋全体を照らしている、窓が多い作りだからだろうか部屋はほんのりと暖かい。


「おはようございます、バルさん」


「おはよう、シラカミ君いい朝だね。良く眠れたかい?」

バルさんは新聞に目を通しながらコーヒーを啜っている。


「はい、おかげさまで」


「シラカミ君の席はそこを使ってね、お父様との契約書が置いてあるのが君の席だ。他の書類も目を通しておいて」


「わかりました、ありがとうございます」


 自分の席に座り書類に目を通す、よくある労働契約書数枚とは別に、獣の皮に文字と竜の意匠と紋章が刻み込まれた物が有る、これがきっとそうなのだろう。


「なかなか無くす方が難しいだろうけど、その契約書は無くさないでね」


「わかりました気を付けまっ…!!」

 言い終わるまえに、契約書に書かれた文字が這い回り腕によじ登って来る。全ての文字は瞬く間に腕から体に広がり体内に消えていった、気持ち悪い! 朝からホラー展開は聞いていない。


「なんなんですか、これ!?」

 上着を脱いで体を確かめてみる、まだなんだか背筋がゾワゾワする……。


「うーん、わかんないけど、まあ体の中に文字と契約を格納した感じかな。こう手とかどこでもいいんだけど、意識したら文字呼び出したりできない? 風よ吹けみたいな」


「とりあえず、やってみます」

 意識してみたら手の甲に文字が浮かび上がり、風がバルさんの上着を吹き飛ばした。


「おーやっぱりそうなるんだ、ただ危ないからあんまり人に向けては撃たないでね」

 バルさんはなんともなさそうな顔をして半裸で腕組みして立っている、良く鍛え上げられた大胸筋と腕の筋肉が朝日を浴びて眩しい。


「おはようございまー………。 カシャ ガチャ」

入口のドアが開き、シャッターの音、そして閉まった。


残されたのは半裸の男が二人。



「違う、違うんだスゥ!」



「いやー、朝から胸焼けするかと思いましたよ。ちなみに映像はシノンさんに送っておきました」


「シノン君そういうの好きだもんねー、必要ならポーズ取るよ?」

 喜ぶように筋肉が躍動する、いい加減服を着ろこの店長は。


「いえもうバル店長のは結構です、朝から暑苦しいんで服着てください」

 スゥは買ってきた雑誌に目を通しながら答えた、スゥの机には他にも付箋が貼ってある雑誌が複数置いてある。


「みなさん、おはようございます!」

 勢い良く扉が開く、シノンさんが少し興奮気味に入ってきた。


「あら、もう祭りは終わったのね……せっかく急いで来たのに残念。シラカミ君、若い男の裸体はいつでも歓迎よ。イケメンなら最高なんだけどね、もうこれはドライアドとして仕方無いの」


シノンさんは笑いながら席についた、あのイケメン卓上カレンダーやっぱり趣味だったんだな。遠回しにイケメンじゃないみたいなこと言われた気がする、まぁ否定できる根拠は持ち合わせてはいないんだけどさ。


「みなおはよう、朝から元気じゃのう」


「ゴスリックさん遅いですよー!」


「なにを言うかスゥよ、時間には間に合っとるし、なにより朝から働くゴブリンなんてワシくらいのもんじゃぞ」


新聞を片手に丸めたゴスリックさんは少し眠そうだ、ゴブリンって洞窟とかに住んでるイメージがあるし、明るいのは苦手なのかもしれないな。


「みんな揃ったね、今日はシラカミ君の初日だしそんなに忙しくもないから軽く朝礼だけでもしとこうか。 まずはみんな知ってると思うけど、今日からここで働いてもらうシラカミ君ですよろしくお願いします」


「よろしくお願いします」


「今日からしばらくはスゥと一緒に新規ツアープランの下見に出てもらいます。資料はシノンさんから貰ってください、スゥは先輩として指導するように」


「はい。」「はい!」

スゥの尻尾が『先輩として』の辺りで嬉しそうにしてたのが見えたな。


「ゴスリックさんは明日の山岳ガイドの準備をよろしくお願いします」


「任せておけ」


「シノンさんは各種事務処理と資料の作成をお願いします」


「わかりました」


「では、みなさん今日も一日頑張りましょう!」


「頑張りましょう!」


 初仕事だ!よし、気合い入れて頑張るぞ! ってもまぁなにをすればいいのかは全くわからないんだけども。


 シノンさんから渡された資料を基にスゥから打ち合わせというなの説明を受けることになった、目的地は『ヤディフ・イフ・ワディ』別名『風竜の大渓谷』といわれるアルハザールさんの本拠地で、スゥやバルさんみたいな竜人種の故郷にあたるらしい、スゥ達の竜人種の始祖たるアルハザールさんは尊敬と畏怖を込めてそこの竜人種からはお父様と呼ばれているとか。

 ドラゴンの街か、それはすごいファンタジーだ! ワクワクしてきた、でもドラゴンの街ってこうゲームとかだともっと後半に行くものだと思っていたんだけどな。


「ちょっとー、シラカミさん聞いてますか?」


 スゥがぷりぷりして尻尾がフリフリしている、いかんいかんワクワクしすぎて妄想の世界に入ってしまっていた。


「うんうん、聞いてるよー。 西大陸で最大のバザールが有るんだろ?」


「おっ、ちゃんと聞いているんですね、それなら花丸です」


 学生の頃から磨き上げた、聞いてるようで聞いてないちょっと要件だけ聞いているこのスキルは伊達ではないのだよ。


「ということで、私達のホームで勝手が利きやすい『風竜の大渓谷』で他の旅行会社と差をつけたプランを練りつつ集客して、バザールでお金を使ってもらおうっていうのがお父様の魂胆ですのでそれを目的に下見をしていきたいと思います」


「なんか複合的だな」


「シラカミさんには異世界人目線で色々見ていただいて、なにか目玉や、ネタになりそうなものを探してもらいます」


「わかったけど、素人目線の俺が見たようなやつでも大丈夫なのか?」


「それなら大丈夫だよ、観たまんまで答えてくれたらいい。こっちの世界だと冒険者を連れて目的を持って旅をするようなのは一般的だけど、まだ観光業っていうのはあんまり根付いていないんだ。だから旅行会社は今はそんなに多くはないし、転移者を抱えた旅行会社なんてもっと少ない。だから異世界流の観光というものを僕達に教えてくれたらいいさ、その辺もふまえてお父様はチャンスを感じたから、シラカミくんに声をかけたんだと思うよ」


 スゥがそれは私が言いたかったやつ、というような顔をしているがバルさんが手渡したお弁当で機嫌がすぐ直っている。

チョロい、でもこれは参考にしよう暫くはスゥと行動を共にするわけだし、サンキュー店長バル。


「あっ、ちなみになんだけど『風竜の大渓谷』なら僕らの移動は転移の魔法使うから余裕で日帰りできるよ」


案外近かった、ホームの利点バッチリ活かしていらっしゃる。


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