ようこそアルハザールの風へ!その3
「遅い!!ここに来るまでに何時までかかっておるつもりじゃい!」
扉を開けるとそこはおかんむりゴブリンでした…。 でもゴブリンって見たら一発でわかるんだなってちょっと感動した。耳と鼻は尖っているし肌は緑色で背はあまり高くない。
「すみませ〜ん、ゴスリックさん色々有りましてぇ…これで機嫌直してくださいよ〜」
スゥは茶色い紙袋をゴスリックと呼ばれたゴブリンに手渡した、そういえばさっきバザールでスゥがなにか買っていたのはこれだったのか準備がいいな。
「ドーナツか!よし許すぞ! コーヒー淹れちゃるから二人共くつろいどれ」
ドーナツで買収されるちょろゴブリンだった。
スゥに案内されて長机の周りにある椅子に腰掛ける、ここは普段はお客さんとの打ち合わせとかプランの説明に使うんだろうな。
「ごめんなさいね、ああ見えてゴスリックさんもあなた達二人の帰りが遅いから心配してたのよ。素直になれないだけだけだから許してあげてね転移者さん」
長机の奥にある事務スペースから声をかけてくれたのは綺麗なお姉さんだった。頭には大きな花の飾りがついていてブロンドのウェーブ髪、机二枚越しに見ても大きなお胸が視界に入る。
いたずらっぽい笑みが素敵だ。
「シラカミさん鼻の下が伸びてますよーだ。 彼女はドライアドのシノンさん、ここではリサーチや事務仕事を担当してもらってます」
スゥのジトーっとした目線がささる、やっぱり丘があったら見てしまうんだよ男だからさ。
ゴスリックさんがトレイを持って戻ってきた、やった空気が変わるぞ。
「これスゥ! そこはお客さん用の机じゃろ、使うなら奥の会議室のを使わんかい!」
このゴブリン、すごくまともな人(?)だ、俺の中の今までのゴブリン像に一石を投じてくる。
「いいじゃないですかぁー! こっちのが広いですし、今はお客さんもいませんし後で掃除しますしー!」
こっちの竜人は子供だった、バタバタするじゃありませんよ。
「まあまあ二人とも、後で掃除すればいいのは確かだし、私も奥の会議室よりもそこの長机のが移動がしやすいわ。ゴスリックさんもちょっとぐらい良いでしょう?」
「ふーむ、わかったシノンがそういうなら仕方ないわい。もし客さんが来た時に、みんな奥に引っ込んでいるのもなんじゃしな、ちゃんと掃除するんじゃぞ。」
ゴスリックさんはなんだかんだいいながらも、机に金属製のカップに入ったコーヒーを並べてくれている、香ばしいいい匂いだ。
「いい匂いがするんだけど、ゴスリックさん俺の分のコーヒーも有る? 二日酔いだから濃い目でお願い」
奥の通路から抑揚のある声親しみやすい声が届くと声の主がゆったりと通路から歩いてくる、短く刈り込まれた頭にまるで岩石のような屈強な上半身、それを丸太のような足が支えている。
「あらバルさん、随分遅い時間だけど『おはようございます』ね」
「シノンさんごめんよ、これも付き合いの飲みだからそんな怖い顔しないでよぉ」
「冗談よ、わかったから机までエスコートしてちょうだいね」
バルと呼ばれた人はシノンさんの車椅子を押しながら長机に向かって歩いてくる。
「おかえりスゥ、そしてようこそシラカミ君『アルハザールの風』へだね。俺はここで店長をやらせてもらってるバル・バルティアルだ、よろしくね」
バルさんは手を差し出してきた、こっちでも握手の文化は有るらしい。バルさんの優しい眼差しを見ながら笑顔でこちらも手を握り返えした。
「こちらこそよろしくお願いします。ってえっ!?」
そうすると握手をしたところが薄っすらと光り、なにか弱い電流のようなものが流れた。
「ほい、契約も完了と後で書類は渡すねー」
軽い感じでバルさんはもうドーナツを選んでいる、なんならもうみんなドーナツに夢中だ。
「シラカミさんは何味にします? オススメはヴラパーノです」
なんだその味は突然異世界感を出すんじゃないよ。
「おう、坊主さっきから聞いてると思うがワシはゴブリンのゴスリック。山歩きならちいと覚えがある困ったら聞けよ、これからよろしくな。ちなみに好きなドーナツはシュガーストロング」
「よろしくお願いします。」
なんだそのカロリーが凄そうなドーナツは。
「私はドライアドのシノンよ、さっきも聞いたと思うけどリサーチと事務仕事を担当してるわ、これからよろしくね。ちなみに好きなドーナツはチョコミントよ」
「よ、よろしくお願いします」
ドーナツのフレーバーであんまり聞かないよその味は。
「シラカミさん、スゥですよ、好きなドーナツはハニーベーコン、よろしくお願いします!」
「もはや君のは好きなドーナツの紹介が情報の主成分だね! あとそれどういう味なの?」
「シラカミ君ちなみに今俺が食べてるのがヴラパーノ味だけど食べる?」
「食べかけ! いやでも気になるんでちょっとください。」
バルさんからちょっと千切って貰った、味としては芋かな……?
「うん、シラカミ君はなかなか光る物を持ってるね、ここにもすぐ馴染めそうだ。とりあえず本格的な業務は明日以降で、異世界人としての知識を存分に使ってもらうとして。店を閉めたら歓迎会するからそれまではゆっくりしてね。二階に君の部屋と必要そうな物はだいたい揃えたってお父様が言ってたから着替えて色々見てみるといいと思うよ」
「ありがとうございます」
何から何まで親切な人達だ、最初はどうなるかと思ったけど転移先で出会えた人達がこの人達で良かった。




