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9話

「待たせて、ごめん」と、噴水前で待っていた絵美に向かって大輔は駆け寄る。


「うぅん、大丈夫ですよ」

「髪の毛、セミロングにするか、ショートボブにするか迷っていたけど、ショートボブにしたんだね」

「はい、どうせ変わるならと思って、思い切ってみました」


「いいね、似合ってるよ」と、大輔が微笑みながら言うと、絵美は黙って大輔を見つめる──大輔はそれを不思議に思ったのか、首を傾げると「ん? どうかした?」


「大輔君は、誰に対してもそんな感じ何ですか?」

「そんな感じ?」

「照れもせずに女の子を褒めたりして……よくそれでモテずに来られましたね」

「──いや……まぁ……俺は基本、無口だし誰に対してもじゃないよ」

「ふーん……そうなんですね。ところで大輔君もバッサリと切りましたね」

「うん、サッパリしたくてね」


 絵美は後ろで手を組むと「へぇー……」と言いながら、マジマジと大輔を見つめる。


「変かな?」

「うぅん、似合ってると思いますよ。ただ大輔君の目って鋭くてカッコいい目してたんだって思っただけです」

「あ……そっか……今まで隠れていて見え辛かったもんね」

「はい」

「ありがとう。さて……そろそろ服屋に行く?」

「はい、お願いします」


 こうして二人は出会って間もないのに一歩踏み込んだ話も含めて、楽しそうに会話をしながら歩き始める。その姿はまるで昔からの友達の様だった。


 ──二人はレディースの服屋に到着すると、さっき大輔がみていたマネキンの前で足を止めた。


「あ、可愛いカーディガン! 大輔君、これどう思う?」

「お、良いね」

「じゃあ買っちゃうかな。色は──」


 絵美がパステルカラーのピンクに手を伸ばすと、大輔はチラッと緑の方に視線を向ける──だけど自分の趣味になってしまうと思ったのか何も言わなかった。


 絵美は何気にそんな大輔を見ていた様で一旦手を引っ込めると、パステルカラーの緑の方へと手を伸ばした。


「やっぱりこっちにする」

「え、どうして?」

「こっちの方がいつまでも着られそうな色してるから」

「あぁ、なるほどね」

「じゃあ買ってきます」

「うん、店の外で待ってるね」

「分かりました」


 ──大輔が店の外で待っていると、絵美は直ぐに出て来た。


「これで今日はおしまい?」

「んー……ちょっと我儘を言って良いですか?」

「どうぞ」

「せっかくなので本屋に寄りたいです」

「あぁ、構わないよ」

「やったぁ」

 

 二人は並んで歩き始め、奥の方にある本屋に向かう──。


「大輔君はラノベ、良く読むんですか?」

「あ、図書室の時のあれ?」

「はい」

「あれはただ、友達に勧められたから気になっただけで、本当は漫画が好きかな。絵美さんは日頃、何を読んでるの?」


「私は恋愛ものが好きで──」と、絵美は会話を進める。大輔は真剣に会話を聞いていて、二人に気付き、足を止めていた香織に気付いてはいなかった。


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