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8話

「あー……休みなのに早起きしちゃったから暇だ……」


 香織は自室のベッドで天井を見据えながら、そう呟いた。


「──あ!」と急に大声を出し、上半身を起こすと「あそこの服屋、セールやってるって言ってたな」


 香織はベッドから下りると、パジャマを脱ぎ捨て、灰色のダボッとしたパーカーに着替え、デニムのショートパンツを履いた──軽くメイクを済ませると、部屋を出る。すると隣の部屋にいた香織の弟が出て来た。


「姉ちゃん、どこ行くの?」

「服屋」

「じゃあ漫画本を買って来てよ」

「えー……」

「良いじゃん。服屋ってショッピングモール内にある服屋でしょ?」

「そうだよ。まぁ、買ってきても良いけど、後で私にも読ませてね」

「うん、良いよ。じゃあ──」


 香織は弟から欲しい本のタイトルを聞くと、一階に下りてダイニングにいる親に「出かけてくる」と声をかけ、家を出た。


 ※※※


 ──大輔と絵美は何度か電話やメールでやりとりして、朝の9時に隣町のショッピングモール内にある噴水前で待ち合わせすることを決めていた。


 大輔は当日、いつも出掛ける時に着るカジュアルな服に着替えると、電車に乗って目的地に向かう──10分前に待ち合わせ場所に到着すると、ジーンズから携帯を取り出した。


「10分前か……丁度良かったな」と、大輔が呟き、携帯をしまっていると、近くに居た絵美は大輔に気づいた様で近づいていく。


「お待たせしました」

「おー、コンタクトしてきたんだね」

「はい。今日のために用意しておきました」


 絵美は花柄の白いワンピースを着ていて、眼鏡はつけていなかった。日頃の寝ぐせ頭も、きちんと整えられていて、それだけで印象がガラッと変わったように見えた。


 大輔はそんな絵美の姿をみて、満足そうに微笑む。


「でも、日頃とそんなに変わっていないような……」

「そう思うのはきっと、自分の姿を見慣れているからですよ。俺から見たら、いつもと違うなって思うよ」

「そうなんですね!」

「さて、最初は美容院だっけ?」

「それですが、待たせてるのも悪いので、大輔君も髪を切ったらどうです? 前髪が大分、伸びてますよね?」

「俺?」


 大輔は自分の前髪を触ると「そうだな……そうするかな」


「はい、それが良いですよ。多分、大輔君の方が早いと思うので、私が終わったら連絡します」

「分かった。それまで適当に見て回ってるよ」

「すみません」

「いえいえ」


 二人は別れると絵美は入り口側にある美容院、大輔は店の奥にある床屋へと向かって歩き出した──大輔が床屋に入ると、店内は割と空いていて、直ぐにカットする席へと案内された。


「今日はどれぐらいの長さにします?」と店員が大輔に聞くと、大輔は迷うことなく「髪の毛が自然に立つぐらい短く」と答えた。


「かしこまりました」


 店員はバリカンを持って、大輔の髪の毛を刈っていく──大輔が入った床屋は客の回転率を重視している様で、15分程度でカットが終わった。


「ありがとうございました」


 店員に見送られ、大輔は店を出る。自分の髪の毛を触りながら満足げに「うんうん、これこれ」と微笑んだ。


 歩きながらジーパンから携帯を取り出すと、着信を確認しただけだった様で、画面をみて直ぐにしまう。


「まだ終わる訳ないよな……服でも見てみるかぁ」


 大輔はそう呟くと、エスカレーターに向かって歩き出した──大輔は二階にある服屋に到着すると、メンズの方をグルっと見て回る。


 時々止まっては……直ぐに歩き出しを繰り返し、あまり服には興味を持っていない様子だった。


「良いの無いなぁ……」と呟きながら、店を出ようとしたが、レディースの方に視線を向けると足を止める。


「──ちょっと向こうも覗いてみようかな」


 大輔はそう呟き、レディースの服屋へと歩き出した──大輔は店内に入ると、ゆっくり歩きながら見て回る。


「──ふーん……こういうのもガラッと印象が変わって良いな。今日の服装に似合いそう」


 大輔は白いワンピースにパステルカラーのピンク色をしたカーディガンを羽織ったマネキンの前で立ち止まった。


「こっちの色も良いな……」と、大輔はパステルカラーの緑をしたカーディガンを見つめる。その姿は自分の服を見ているより真剣な様にみえた。


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