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7話

 大輔は絵美と約束した通り、掃除が終わったら直ぐに校門へと向かった──先に校門前で立っていた絵美は、大輔に気付くとニッコリと微笑み、小さく手を振る。


「ごめん、お待たせ」

「うぅん、待ってないですよ」


 絵美はそう返事をして照れ臭そうに髪を撫でる。


「行こうか」

「はい」


 二人はゆっくり通学路の並木道を並んで歩き始める。


「私、二年B組の市村 絵美です」と、絵美が突然、自己紹介を始めると大輔は驚いた表情を見せるが、直ぐに笑顔をみせると「そっか、まだ自己紹介してなかったね」


「ふふふ。はい、そうですよ」

「俺は二年A組の原 大輔です」


「宜しくお願いします」と絵美が頭を下げると、大輔も頭を下げ「宜しくお願いします」と返事をする。


 二人が頭を上げると、大輔は「ところで相談したい事って何です?」


「その……恥ずかしい事なんですが私、今まで誰とも付き合ったことがなくて、具体的にどう変われば良いのか分からなくて……」

「あぁ、そういうこと……実は俺も誰とも付き合った事なくて、正直どうアドバイスすれば良いのか分からない……はは……」

 

 大輔が苦笑いを浮かべてそう言っても、絵美は不安な表情を浮かべない。それ所か優しい表情で「そうなんですね。じゃあ、あなたの好みで良いんで教えて欲しいです」と返事をした。


「俺の好み? そうだな……眼鏡も良いけど、やっぱり無い方が好きかな?」

「それは困ります。私、眼鏡がないとボヤけて何も見なくて……」

「コンタクトは?」

「コンタクト? あの目の中にレンズを入れるやつですか?」

「そう、それ」

「コンタクト……ちょっと怖いです」

「慣れればそうでもないよ?」

「大輔君はコンタクトをしているんですか?」

「うん」

「そうなんですね……」

 

 絵美はコンタクトにしようか迷っている様で俯き加減になり、黙り込む。


「──分かりました。親に相談してみます。そのほかに何かありますか?」

「その他ねぇ……あるはあるけど、言葉だけじゃ説明できないな」

「じゃあ一緒に出掛けましょう!」

「え?」

「その方が早いですよね?」

「まぁ……早いねぇ……」

「じゃあ決まりです。今週の日曜なんてどうですか?」

「あ、あぁ空いてる」


 絵美は通学鞄のチャックを開けると、携帯を取り出す。


「じゃあ連絡先を教えてください。コンタクトの事も聞きたいですし」

「う、うん。分かった」


 大輔がズボンのポケットから携帯を取り出すと、絵美は電話番号とメールアドレスを教える。


「送ってみてください」

「うん」

「──うん、無事に届きました。」

「それは良かった」


 絵美はバッグに携帯をしまうと立ち止まり、駅の方に向かって指を差す。大輔も合わせて足を止めた。


「じゃあ私、こっちなので!」

「そ、そう。バイバイ」

「また何かあったら連絡しますね!」

 

 絵美は元気よくそう言うと、駅に向かって走っていった。大輔は絵美の手際のよい言動にまだ頭が追い付いていない様で、ボケェーと絵美を見送っていた。


「──スイッチが入った時の母さんって……あんなに積極的だったんだな」


 大輔はそう呟き、ポリポリと頭を掻くと歩き始める。


「なんか朝から振り回されてるけど、こんなんで良いのかな……」


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