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おっさんの徒然エッセイ

画材の思い出

奴隷の通った画材店の話です。

画材店すべてがこういうお店や店員では勿論ありませんから、あしからず。




 画材店の店員さんが書かれたというエッセイを拝読して、そのエッセイ自体はモンスタークレーマーや厄介なお客様のことを書かれていて、奴隷も農業資材関連の販売業に勤めている関係で「あるある」と思いながら読ませて貰ったのですが。


 画材店で思い出した話をつらつらと書いてみようかなーと思います。





 奴隷が油絵を描き始めたのは高校生くらいのころなんですね。

 で、地元の小学校(母校)の真向かいに店舗スペースが八畳くらいのとっても狭い画材屋があったんですよ。


 四方の壁一面に画材が所狭しと詰め込まれ、隅にイーゼルとかが無造作に立て掛けてあって、入った目の前にテーブルと椅子がある。そんなごった煮みたいなお店なんですが、店主自身が有名な画家でしてね。半分は趣味でやってるようなお店なんですよ。


 ただ、このお店には入手が困難になったような顔料を使った絵の具とか、結構に高級な油絵用の油や溶剤が、適当な値付けで並べられてて、そりゃ、普通の画材屋に並べられてるものと比べたら高いと思うかも知れないけれど、価値を知ってたら「バカ安っ!」ってなる穴場だったんですね。


 なんで、それなりに通ったんですけど、ここの店主は基本的にいないんですよ(笑)

 初めて店に入った時は、あまりの狭さと、そのくせにとんでもなく多い絵の具やら油やらの種類の豊富さと、その乱雑さに驚いて。

 それから、まずは普通のお店ではお目にかかることのないような原料を使った絵の具たちに興奮して、どんな色になるんだろうと、妄想しながら、いくつかの商品を選んで、いざ会計と思ったら、本当に誰も居なくて焦りました(笑)

 

 呆然とどうしようと困っていると、常連らしいお爺ちゃん二人が来て。

 「あやっ、客がいるっ、それも随時と若くてかわいい子だね(この当時、奴隷は女の子に間違われることが多かった(泣))」

 「◯◯さんいないのかい。いつものことだから、コーヒーでも飲んで待ってな」

 そういって、手慣れた様子でテーブルの上の電気ポットと、置かれたままのカップ、そしてインスタントコーヒーや角砂糖を使ってコーヒーを淹れてくれたんですよ。

 入店した時から気にはなってたんですが、まさかセルフサービス用の「店主待ちのため」のものとは思いませんでした(笑)


 それから、「お嬢さんはどんな絵を描くんだい」という質問にそれとなく答えて、声で男とわかったようで。

 「あちゃー、お嬢さんじゃなく、お坊っちゃんだったか、こりゃ失礼」

 と、当時は高校生、もうお坊っちゃんという歳でもないんですが、見た目が高校生に見えないんだろーなーと、諦めて会話を楽しんでいると、店主が帰ってきましてね。


 「◯◯さんっ、お客さんだよ」

 「あれっ! ホントだ、珍しい。中学生かい」

 と訊かれて、やや泣きそうになりながら、

 「高校生です」

 と答えたのはいい思い出(笑)


 それから、常連さんたちも交えて、あれこれと教えて貰いまして、その節は本当にありがとうございました。


 因みに高校生だったころ、奴隷の通学用に使っていたバッグの中身は9割が画材でした(笑)

 教科書とかは全部置きっぱなしにしてまして、バッグには小説と画材と、あとはトレーディングカードが入ってましたね(笑)

 バッグの中には常に数万以上する画材たちがごろごろ入ってたんで、常に持ち歩いていましたよ(笑)



 高校のあった市に、マンションの一階二階がテナントになっていて、雑貨屋や、喫茶店、スナックなんかが入っているビルのテナントの一つが画材店という場所があって、通りから見たら、ただのマンションなんですけど、一階と二階だけはエントランスの反対に入り口があって、住人じゃなくても入れるんですね。

 で、画材店が入ってる二階のテナントは広めでしてね。古い指南書とか、水墨画の道具とか、銅板版画の道具とか、かと思うと、コミックようの指南書にコピックが全色揃ってて、スクリーントーンがすんごい種類揃ってるような、これまたカオスなお店でした。


 高校を卒業して20年以上、数年前に何と無く近くに行ったので、寄ってみたら、ご夫婦でまだお店をやってらして、びっくりしました。


 高校生のころに通いつめたラーメン屋や食堂、ゲームセンターなど、無くなってしまったところがいっぱいなので、本当に嬉しかったですね。

 思わず、大量に買い込んでしまいました。




 画材店や古書店など、なんというか一癖ある人たちがやっているお店と、そこのやっぱり一癖ある常連さんたちとの交流は、今でも大切な思い出です。


 量販店の綺麗で整理されたお店で、接客に可も不可もない店員さん。それも、ストレスなく買い物を楽しんで、必要なものをすぐに見つけられていいと思います。

 でも、たまには、ちょっと癖強店主の専門店で、灰汁の強い会話を楽しみつつ見聞を広めるのもいいものですよ。



感想お待ちしていますm(_ _)m

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― 新着の感想 ―
[良い点] ノスタルジックを感じさせますね~。 お店の雰囲気、そこにいないのに、なぜか分かるような気がします。
[一言] カバンの中に画材を詰め込むのって、まるで夢をいっぱいに詰め込んだポケットみたいでワクワクしますね。 絵を描くのって、白い空間に好きなだけ夢を詰め込める素敵な趣味だなぁって思います。 想い出…
[良い点] 個人店いいなぁ(@ ̄ρ ̄@)という気分になりながら読んでました。 私はローカルチェーンの画材屋さんに通っていたので、接客してもらったこともなく、ひたすら自分で選び無機質に会計。 そして、い…
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