60「キメラの進撃」
床らしき場が盛り上がり、頭上の空間に亀裂が入る。僕は外に吐き出され地面に激突した。
うわっ! くそー、強制排除された。
続いてムカデの背中からユルクマが外に弾き出された。二転三転ボヨンボヨンと跳ねながら、足から魔力噴射して体勢を立て直す。
悪役令嬢騎士も飛び出し空中に浮かんだ。剣を振り上げ怒りの雷撃を振り下ろす。しかし。
ダメージなしか……。
稲妻が断続的に散るが効果はないようだ。
無数の触手を動かしながら、巨大ムカデが移動を開始する。
まずい……。
周囲の騎士、冒険者の数が少ない。お父さんとお母さんの姿も見えない。
『吐き出された魔獣が散り始めたである』
人数が減ってる。敵が分散し、こちらの戦力も分散したのか。
騎士と冒険者たちは必死の攻撃を繰り出すが、無数の触手が障壁を作り出し簡単に防ぐ。
悪役令嬢騎士が背中に飛び乗り、剣を突き立てるが弾かれる。攻撃を意に介さずキメラはゆっくりと動き、進み続けた。
こいつ、どこに向かってるんだ? どう倒す?
触手の動きが活発になる。速度が上がり、向きを変える。ムカデ野郎が目標を定め、進撃を開始した。
あっちは――。
『中央教会の方へ向かっているである』
まずいよ。
『確かにまずいである』
あそこは僕にとっても健康診断でお馴染みの場所だ。あそこをブッ壊されたら、赤ん坊たちと、お母さんたちが困っちゃうよ。
ユルクマが背に乗り猛獣の爪を突き立てる。こちらもと、背に乗って攻撃するが、剣が全く通らない。体が硬質化していた。完全引きこもりモードに入っている。
『怪我人は中央教会に移送しているである』
野戦病院扱いだったか。
『私もそこで寝ているである』
本当にまずいなー。何よりあそこの地下には――、何かがあるらしい。知らんけど。
『移動して防衛に徹するである』
しゃーない。
僕は空を飛んで、中央教会に向かう。
門の前に、一人の男性が立ちはだかっていた。たった一人でこのキメラを止めるつもりなんだ。ついに教会の最終兵器がご登場である。
すごいね。彼こそが真の勇者なんじゃない?
『それはないであるな……』
誰なんだ? ん、知ってる人のような……。
えーっ! お爺ちゃん司教様! まだ避難してないのか……。
わざわざ白いずるずるすそが長い衣装から、教会戦闘ふうの衣装に着替えている。
僕とシャンタル子猫は門の前に着地した。
「この場所は私にとっての聖域。やらせはせん。やらせはせんぞ」
何もそこまで司教のポストに執着しなくたって……。
「さー。そろそろ家に帰りましょうか。もう満足したでしょう」
「命に替えてもここは通さん!通させはしないっ!」
ヤバいよ。それって完璧なる死亡フラグ……。
『司教様。引くでありまする』
「小童ども。なめるなよ――」
口の両端から白い液体が伝え落ちる。
よだれ?
「――聖人変身フランシスコ!」
それが螺旋になり手から伸びた。そして白銀の剣へと変化する。
お爺ちゃん。アバターを使える?
そして更にその剣から飛び散った光が。お爺ちゃんの体を包み、光輝いた。
すっ、ゲー!




