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06「魔力の目覚め」

 どちらに似てるか問題は未だくすぶっていた。現在における我がブラウエル家の重大問題だ。

「だからアルは私に似ていると何度も言ってるだろう」

「いいえ私に似ています。間違いありません」

「強情な女だな」

「あなたこそ」

 何やら廊下が騒々しい。お父さんとお母さんがやって来るようだ。

 またまた、僕がどちらに似てるかで揉めているらしい。

 やれやれ夫婦だな……。

 扉が開かれ二人は僕の顔を覗き込む。ここは必死の笑顔で答えた。何とか赤ん坊パワーで取り繕ってみようか。

「どうだ。私にそっくりだろう」

「表情が私とおんなじです」

「違うだろう」

「いいえちがいませんわ」

 なんだ、なんだ。二人の言い争いはまだ続く。

 最初はお互い相手に似ていると褒めあっていたのに、今は自分が自分がとぶつかっているのだ。

 もー。こんなつまらないことで喧嘩しないでよ。もしかして二人はバカップル?

 ここはもう一度、僕が仲裁に入るべきだろう。

「ふんぎゃー。ギャーギャー」やーい。バカップル、バカップル。

「ほら。俺に似ていると言っているぞ」

「いいえ。お母さんにそっくりなのに、お父さんは何を言っているの、と言っています」

 僕は、つまらないことで喧嘩をやめてと言っているのに(嘘)、なんて空気の読めない夫婦なんだ。大体まだ生まれて間もないのに、どちらに似ているかなんて分かるわけないでしょうに。

 バカ親の親バカだよなあ。冷静になれよ。まったく……。

「うっきーっ!」僕は怒ったぞー!

 ガタガタと家具が揺れた。カーテンが風もないのに揺らめく。

 これは僕のチカラ? まるでポルターガイスト現象だ。

「あらあら。魔力を発散させているわ」

「うん。どうやら俺たちの態度が気に入らないようだな」

「戦いだって思われちゃったのかな?」

「そうだね。だけど自己防衛じゃない。私たちのために魔力を使ったんだよ。きっと」

「いい子ね」

「そうそう。君によく似て優しい魔法使いになるよ」

「いいえ。あなたによく似た剣士になると思うわ」

「いや、君だ」

「あなたよ」

 二人は笑い合った。

「すごい魔力よ。まだ小さいのに。やっぱりあなたに似たのね」

「いや。こうやって物を動かす繊細さは、君の魔力使いに似ている。将来が楽しみだなあ」

「ええ」

 やれやれだ。僕のためにも、どうぞ仲良くしてください。家庭崩壊なんてなったら将来が不安ですから。

 それにしても、これが魔力か。キッカケになった。コツをつかんだ感じだ。よっしゃ!


 僕の毎日と言えば、天井の絵を眺めながら外の世界に思いを馳せているだけだった。赤ちゃんだから仕方なし。だから毎日が誇大妄想大爆発なのだ。

 そして魔力とはなんぞや、と考えながら試行錯誤して使おうとする。

 意識してカーテンを揺らしたり、多少棚の置物をガタリと動かしてみたりするぐらいはできるようになっていた。

 いつかはカッコよく戦うぜ! などと考える。


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