52「王都のダンジョン」
僕は【はいはい】と【歩行】で我が屋敷を探索。洞窟の侵入口を探した。
もし地下に行く扉があるとすれば、たぶん廊下にあるはずだ。我が屋敷の、ほとんど使っていない扉はどれだ? ホントこの家は無駄にデカイなあ。
さてさて。今までの生活を思い出しながら、廊下を見て回る。人が出入りしたのを見たことがない扉が確かにある。ここだ。
その扉にもたれかかりながら手を伸ばす。つま先立ちをしても、ドアノブには届かない。魔力で回すが鍵がかかっている。
「むうーっ……」無理か……。
解錠は赤ちゃんの体では、まだちょっとできないようだ。とりあえずは、諦めるか……。
トコトコと歩きながら自分の部屋に戻る。
人形を並べ、積み木で壁らしきものを作り、戦いをイメージする。
それと魔法だ。なんとか使いこなせれば、戦いは断然有利になる。ユルクマは使ってるんだよなあ。ちっ!
あのファイヤーアロー(勝手に命名)はすごかった。
夕方になりお父さんが久しぶりに帰ってきた。僕の部屋にいたお母さんは迎えに行って、しばらく戻ってこない。
おかしいなあ。本当に何日ぶりなんだから、まずは可愛い息子の顔を見に来るはずなんだけど。僕よりも重大な用事って何だ?
まったく、いったい二人はどこで何を――……。来た!
二人は僕の部屋に来るなりテーブルの上に大きな紙を広げた。
「まいったなあ。子供の頃は結構ながめたけど、最近はまったく見ていなかったから。中がどうなっていたかなんて、ほとんど忘れてしまったよ」
「私はこの屋敷に来た時に、入り口の所をちょっと案内してもらっただけだったわ」
「まあ、あまりおおっぴらにできる場所じゃないからね」
二人は熱心にその紙を覗き込む。
「この地図を作っておいて助かったよ。見るのは本当に久しぶりだ」
「どこに置いたか、忘れちゃったくらいだものね。私も初めて見るわ」
二人は僕を見もしない。シカトして、いないものとして扱っているようだ。ひどい育児放棄だよ。
「ウキーッ」こらーっ。
「あらあら。ごめんね、アル君。仲間はずれじゃないでちゅよー」
「ちょーぶーかー」そうでちゅかー。
お母さんは僕を抱っこして椅子に座る。
それは地図だった。この屋敷を起点とした旧ダンジョン。洞窟と地下通路が描かれている。
「ぶほー」ほえー。
結構でかいよ。
「このラインが貴族街の壁だ。問題の屋敷はここにある。そこから伸びている地下通路はこうだな」
お父さんは地図上に指を滑らせた。そして円を描く。
「おそらくこの辺りに問題の屋敷があるはずだ」
「この屋敷の地下通路とは、随分離れているのね」
「問題はないだろう。さすがにここまでは、つながってはいない」
「この地図正確なの?」
「ずいぶん前に父上が探索してるんだよ。その時俺は子供だったけど、何度か同行した。この地図は間違いない」
「そう。良かったわ」
「王政も調べているから、そのうち問題の屋敷も見つかるだろう。警備はこの周辺に分散させているけど、そこが見つかればいよいよ突入を考えねばならない」
「そう……」
お母さん、心配そうな顔だ。決死隊なんて、物騒な話も持ち上がっているしね。
お父さんは結構張り切っている感じだよ。子供の運動会で気合を入れるタイプみたい。やれやれだ。家族のこともちょっとは考えてね。
◆
てっわけさ――。
僕は訪ねてきたシャンタルに、我が家の事情を説明する。
『話のとおりであるな。警備をそのように配置しているである』
あいつは?
『動きはないである。こちらはこちらで困った問題がある』
ほー。相談に乗りましょうか……。
『どうも出口は中央教会に近そうなのである』
そりゃあ大変ダー(棒読み)。
お爺ちゃんの胃が痛くならないか心配だよ。
『聖堂の地下が厄介である』
? そりゃ厄介そうな話だね。まあ、色々あるでしょ。
ところで、あいつはどうなるのかな。
『アバターは処分されるである』
死ぬってこと? 本体はどうなるの?
『死ぬである』
ええっ!
相手はクズ野郎でも、元同級生だ。一応人間でもある。
『冗談である』
冗談なんて言うんだ……。意外なキャラ設定?
『本体は最悪、魔力を失うである』
それだけなら、安心だ。あのアバターは遠慮なくコロせるね。
いや。僕が逆に、そうなる可能性もあるのか。




