49「人気こそが正義」
丸味をおびた頭部。樽のような胴体。短い腕の先にまん丸の手。焦げ茶色の体でお腹が白い。つぶらな瞳に漫画みたいな口。つまり、まんまぬいぐるみなのだ。その正体はっ!?
ユッ、ユルクマ~っ!
正式名称、森のクマさん! が参上しました。
バッと飛び降りたクマは、大の字で回転しながら降下着地。手近な魔人を猛獣の爪で切り裂いた。
すごい!
爪は厄介な障壁も砕きバッタバッタと魔人を打ち倒す。なぜだっ?
『魔法の爪である』
なんでそんな便利グッズを持ってる? 汚いぞー。
僕が魔人をバッタバッタと倒した後にのこのこ現れて、今さら何しに来たんだ? フフッ、とするつもりだったのが逆の展開だ。
まずい。野次馬が集まってきた。このまま目撃者になってしまう。
負けるかっ!
僕も魔人に切り掛かるが、剣はあっさり障壁に止められてしまった。
ぐわっ!
ユルクマに体当たりされ、弾き飛ばされてしまう。そのままクマは爪で一撃。二撃目で敵を吹き飛ばす。腕が伸び、爪が魔人を打ち倒す。
僕って脇役の魔人同等扱いなのか?
魔人をすべて倒したユルクマは、そのままどこかに走って行ってしまった。今回は、追いかけるのは止める。まだこの瓦礫の山から何かが出てくるような気がしたからだ。
ちょうど、兵士たちと騎士団の皆さんが、今更ながらやって来た。付近の住民たちが出迎える。
「魔人が複数いたらしいが、あの黒い騎士が討伐したのか?」
「いや。森のクマさんが全てやったらしい」
せっかくいい感じで誤解してくれそうだったのに、野次馬ふぜいがバラしてしまった。
くそっ!
「なんだ。あの黒い騎士は、こけおどしか」
「強いと思ったが、役立たずなのかな?」
たいして活躍していない(僕基準)、騎士ごときも調子に乗る。
「違いない」
「「「あはははは」」」
くうっ!
何という屈辱だ。地道に活動して人気者になろうとしてるのに、結局あのクマが最後に良いとこばかりを持っていってしまう。
だいたい遅れて来て――。
『来たであるぞっ!』
ドドッ、バーンと音をたてて瓦礫の山が噴き上がる。
何だっ!
触手が束で現れウニウニと動く。本体が現れ、表面がいくつか破れて魔獣が発生した。
ボスキャラの登場だっ! 分かっていたユルクマは逃げたな!
『あれは魔力切れかと思われる』
僕は大丈夫なのに?
『アバターもさまざまであるし、特性が違うのである』
僕は細く長くタイプなのかー。
『森のくまさんは、逆にそれが不得意である。それだけ魔力量は多いであるが』
今更、僕は太く短い人生なんて選べないしなあ。アバター特性って、人生観に関わりがあるのかあ?
いや、その話は後回しだ。
魔獣の群が突進し、騎士も兵士たちも防戦する。けっこう苦戦。ざまあ。僕を小馬鹿にするからだ。
こっちはボスに向かって突撃するが、触手のムチが四方から襲う。じゃまだーっ?
剣を振るうが――。触手が引いていく。なんで?
『あちらも魔力切れであるな』
アバターなのか……。
『食料をたらふく喰らう前に、実体を暴いたのは成果である』
追いかけよう!
『無理である』
力がスーと抜け、僕はガクッと膝を付く。
あれっ?
『こちらも魔力切れである』
あの魔力注入は太いヤツなのか。なれないことをやるもんじゃないな。
『魔獣相手とは違い、魔人系相手は魔力を消耗するである』
まあ、注入してやっと倒せるくらいだからね……。
切るだけてはどうにもならないのが、今の僕の実力だ。もっと細く。鋭いくらいに魔力を絞ってやる。それが制御だ。
『そのとおりである。帰還する』
帰って寝よう……。
互いに消耗したし、再戦は後日だ。まだ残存している魔獣がいるけど、こっちは優勢。倒せるだろう。あとは任せたっ。諸君!
何とか飛んで屋敷を目指す。
魔法って――、何なの?
魔力を複合的に行使し、最適化を図る方法である。
難しそー……。
『花火とやらで使ったである』
あっ、なるほどっ。




