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41「貧民街の見回り偵察」

「街壁を見ましょうか」

「外を見るのでしたらご同行いたしますわ」

「ええ、お願いいたします」

「許可をもらいますので、ちょっとお待ち頂けますか?」

 お母さんの提案に、ノルーチェ嬢も賛同する。開け放たれた扉の外にピンク子猫の姿が見えた。


 四人で(僕含む)ボロっちい小さな門から外に出る。そこにはボロ小屋の群れが広がっていた。現実世界で言うところのハーレ……、じゃなくてスラムだ。

「私も最初にここに来て驚きましたわ。王都にこんな所があるのだなんて」

 なるほど。学校で教えない○○ってやつだね。貴族令嬢が知らない世界だ。僕は大体想像ついたけどさ。表があれば裏があるってやつ。

「昔は全て壁内に居住できていたのですがね。自然発生でここまで広がっています」

「ええ。街壁拡張の計画はあるのですがなかなか進みません」

「せめてと、自主的に柵を作るぐらいはしているようですが」

 フェリクス叔父さんが説明しつつ歩く。お母さんも事情は把握しているようだ。

 ノルーチェ嬢は住人に話しかけつつ、様子などを聞きながら進んだ。僕たちもそちらのペースに会わせる。すっかり現地に馴染んでいた。偉いなあ~。

 シャンタル子猫はキョロキョロと周囲を見回しながら付いて来る。


 王都での戦いは小康状態となっていた。魔獣は森の奥に引き、騎士団と冒険者ギルドは共同で防衛線を構築している。

 勇者仮面こと、暗黒騎士もしばらく休業中。僕にも魔力休息が必要なので助かるよ。

 見習い聖女も、本来の仕事があり、ピンク子猫も毎日は屋敷に来られないし。


 ハイキックガールのクリューガー・スミッツ姉さんがここの住民たちと何やら話をしていた。格好は騎士装束のままである。王政もそれなりにアピールする必要があるのだろう。

 気がついてこちらにやって来た。

「フランカ様。来て下さったのですね」

「ええ。ご苦労様です」

「それに皆様も――」

「ばーふ」チース。

「砦の補修はキリがないわ。小物が多くて……」

「大学院生の有志が手伝ってくれるそうだよ。資材も詳しい人も手配したそうだ」

「まあっ。助かるわ」

 フェリクス叔父さんと戦士スミッツはお馴染みさんのように話している。同じ大学院だしね。

「報酬は冒険者ギルドから適宜支払うんだけれどね。午後に来る」

「護衛役を手配するわ」

 離れていたノルーチェ嬢が駆けながら戻って来た。

「怪我人を何人か運ばねばなりません。わたくしはここで失礼いたしますわ」

「私もここの教会の責任者に挨拶しますので、戻ります」

「じゃあアルデルトは僕が連れていきますよ。街壁の上からの景色を見せてやりたい」

 僕たちは分かれ、お母さんたちは壁内に戻った。叔父さんは僕のベビーカーを押し、スミッツ嬢が付き合ってくれた。

 お母さんは二人に気を利かせたみたいだね。


「よー。おそろいだね」

「二人仲良く見回りかあ?」

「まるで家族旅行じゃないかい」

 貧困街の自警団の皆様がいた。野盗――、いや。野武士――、いや。戦士たちよ。チース。

 周囲で遊んでいた子供たちも寄って来る。

「姉の息子さん、僕の甥っ子なんですよ。社会勉強ってやつですね」

「あー。貴族のちびっ子たちも来ているしな。魔獣がどんだけ怖いかよく勉強させてくれ」

「ところで何の話をしていたんですか?」

「ああっ。ちょっと嫌な噂話を聞いてな」

「情報共有しようって話してたんだよ」

 野盗、いや、改め戦士たちは顔を見合わせ頷き合う。

「僕も聞きたいですね。どのような噂話ですか?」

 むむっ。最新情報ですな。

 フェリクス叔父さんはいつもどおりだけど、戦士スミッツは表情を硬くする。すぐ顔にでるんだな。


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