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十一話 魔女の島㊀

 リビュア遠征に向かう予定の白兎(びゃくと)隊は、ルテティア郊外の軍事施設に入り、そこから軍港へ向い、エウロパ各国の部隊と合流しつつ、戦艦でリビュアに入る手筈となった。

 (しん)勝志(かつし)は、夕方には大使館を後にする事が急遽決まった。ラーラとは、遠征前にもう一度会う約束をしていた為、二人は再び屋敷を訪ねたが、彼女は留守だった。


 「学校からは帰ってきたのですのよ。時々、行き先を言わず出掛ける癖がありましてね。子供の頃から、そこがお嬢様の悩み種ですのよ。後、スカートが本当にギリギリで、もうパンツが―」


 二人は、お嬢様の家には必ずいる、ふっくらしたお世話係の中年女性にそう言われた。

 

 「困った奴だなー、ラーラは」


 「行き先くらい言ってけばいいのにね」


 どの口が言うのか、勝志と真は言った。すると、話を聞いていた使用人の小男が、ラーラの居所について、耳寄りな情報をくれた。


 「実は先日……一人で歩いているお嬢様を見たのですよ。こんな所にいるのは変だと思いましたが……あのピンクの髪とおパンツは間違いないでしょう。……あれは確か、ルル湖の辺りです。あの魔女の島がある」


 「魔女の島……?」


 真と勝志は、出発までまだ時間があったので、非常に興味を惹かれる名称の、その場所へ向かう事にした。



 「魔女の島。エウロパでは、昔、幽玄者(ゆうげんしゃ)を恐れて、魔女狩りをやった事があるらしいよ。その時、幽玄者が隠れたって伝説がある場所だって」

 

 真は魔女の島について、得られた情報を勝志に話した。

 情報は、街の観光案内所の職員から簡単に聞けた。しかし、あくまで噂の類いからそう呼ばれるようになったらしく、真相は不明らしい。

 

 「でも、魔女狩りがあったのは本当らしいね。幽玄者を捕まえて拷問したとか何とか」


 「女しかいないのか? 幽玄者でも男はいるぜ? おれとか」


 「……確かにね。多分、本物が捕まった訳じゃないんだと思うよ、実際は。でっち上げで、無関係の奴が裁かれたのさ」


 二人は「可哀想になー」などと、他人事を言いながら、件の島があるルル湖までやってきた。

 ルル湖の周囲は、鬱蒼とした木々が生い茂り、水辺の側は不思議と枯木が多い。名前通りの雰囲気は確かにある魔女の島は、湖の中央にある小さな島で、やはり木々に覆われていた。泳ぐにはやや遠い上に、わざわざこの湖に舟を用意して向かう程、価値がありそうな島にも見えない。


 「隠れ家に使えない事もないかもね……!」


 立地を気に入って真が言った。本物の魔女(幽玄者)で有れば、神足(シンソク)で簡単に湖を渡れるので、理に適っている。

 

 「ラーラはなにしに来たんだろうな」


 勝志が言った。

 周辺に建物はなく、秘密基地でも作りたくならなければ用がない場所だ。しかし、ラーラがこの場所、しかも島に来ているのは間違いない。


 「ラーラだ。……いる」


 真が森羅(シンラ)を使い、周辺の様子を探ると、人の気配が一つ、魔女の島から感じ取れた。


 「他にも何か……」


 真はラーラの他にも、気配を島から感じ取った。しかし、周囲の森や湖にいる動物の気配に似ていて、いまいち詳細が分からない。


 「まぁ、行ってみるか。バイバイ言うだけの用事だし」


 二人は神足(シンソク)で、湖面の上を滑るように渡り、魔女の島へと向かった。

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