四十四話 勝志VSミーゴ㊁
「俺の弱点だと……!? 馬鹿も休み休み言え」
戦闘の打開策を見い出した勝志に、ミーゴは言った。
「悪いが幻獣に急所はない。確かに頭を潰されれば、思考は不可能になる。四肢を捥がれれば武器を失うが……。魂そのものが破壊されない限り、俺達は動き続ける事が可能だ……!」
ミーゴは恐れる事なく距離を詰める。そもそも、どのような弱点を見付けたとしても、勝志の拳はミーゴには届かない。
「そう、魂だ! 己を形創る魂の強さこそ、俺とお前の力の差を生む、最大の要因だ!!」
心技体。そして、幽世の力で勝るミーゴの拳が、勝志を襲う―
「!?」
勝志は、ミーゴとほぼ同時に拳を放った。その拳が、初めてミーゴを捉える。
ミーゴの拳が勝志の拳に当たり、弾かれた。
「何!? 狙いは俺の腕!?」
ミーゴは即座に、もう片方の腕でアッパーを放ったが、勝志はその拳にも自分の拳を合わせた。
互いの拳が激突し、両者は反動で、足下の地面を削りながら後退した。
「どうだ! 上手くいったぜ!」
「……っ」
ミーゴは、またしても勝志に意表を突かれ、眉間に皺を寄せた。
勝志のやった手段は、確かに有効打となった。超拳法の払いの動作に近かったが、点に点を合わせるこの手段の方が、難易度が上なのは別としてもだ。
「サル知恵でどこでやり合えるかな?」
ミーゴは、今度は回し蹴りで勝志を牽制し、見切るのは不可能に近い、連撃パンチを繰り出した。
勝志も回避と連撃パンチで応戦した。流石に撃ち漏らした拳を数発貰ったが、森羅で感知し、神足のパンチでパンチを打ち返す。
それは、ミーゴの予想を上回る、恐るべき反応速度と対応力だった。
「おらああああああああああああああ!!」
「ぬうううううううううう! 小癪な!!」
ミーゴはダブルフックを繰り出し、雪男の拳で勝志の両腕を封じた。拳を拳で防ぐ勝志は、為す術なく業を受け、腕がパンチを繰り出した格好のまま固まる。
「うわっ!」
「さらばだ!」
地上では自由落下の回避も使えない。ミーゴが、今度こそ引導を渡すストレートパンチを放った。
「まだまだだ!」
勝志は強引に身体を捻り、ラリアットを繰り出してミーゴのパンチを弾いた。
「おれだってワザくらいあるぜ! 腕パンチだ!」
ミーゴは、腕ごと吹き飛ばそうと、強烈な蹴りを繰り出す。
「脚パンチ!」
それに対し、勝志も蹴りを繰り出し相殺する。
「そいつはキックだろ!」
「頭パンチ!」
ツッコミと共に顔面に繰り出されたパンチを、勝志はヘッドバットで叩き落とした。
「なっ」
思わぬ対処法の連続で、遂にミーゴに隙ができた。
「身体パンチだぜ!」
懐に入った勝志が、渾身のタックルでミーゴを吹き飛ばす。ミーゴは地面に仰向けに倒された。
「おのれ……っ!」
大したタックルではない。怒りの募ったミーゴが、直ぐに起き上がる。しかし、勝志は固まった腕を再び振り解いて、次の攻撃の構えに入っていた。
「見せてやるぜ。おれの必殺業!」
ミーゴは「叩き返してやる!」と息巻いたが、直ぐに腕の違和感に気付く。散々、拳に拳を入れられた所為で、腕にダメージが蓄積し、動きが鈍っていた。
一方の勝志は、各部を殴られボロボロだったが、拳だけは、超くれた防具、超・破壊で保護されていた。
「くらえ! 超・破壊巨拳!!」