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十四話 罠㊂

 「いてっ! ……アレ? ぐわっ!」


 (しん)勝志(かつし)の氣弾対決は、溜めに時間の掛かる勝志が、一方的に氣弾をぶつけられている。真の氣弾は、まだまだ威力が実戦級ではない。勝志は、溜めのまま、掌底で氣弾を防御する手に出た。


 「(ワザ)を使うと凄く疲れるからー。二人とも無理しないでね!」


 勝志にせがまれ何度も氣弾を撃ち汗ばんだファーは、寺院の縁側に腰掛けた。任務に支障が出ないよう、りぼんも隣りで休憩する。

 真と勝志は、疲れ知らずの子供のように氣弾のぶつけ合いを続けた。漸く、勝志の氣弾が飛び始めたが、徐々に真の氣弾の威力が上がってきて、空中で撃ち落とされている。


 「凄いね、あの二人! 初めてとは思えないよ」


 「何かと飲み込みが早いんです。お陰でわたしの立場はありません。同じ新人だからって一緒にされることも多いし……。訓練だけならまだしも、お部屋とかお風呂の時間も一緒なんですよ!」


 感心しているファーと、唇を尖らせているりぼん。しかし、りぼんの表情は、次第に神妙なものに変わる。


 「……でも、あの二人は確かに凄いです。わたしの方が数ヶ月先輩なのに、正直、もう追い越されてます……」

 

 薄々気付いていた後輩との才能の差に、りぼんは気後れしていた。

 そんなりぼんをファーは励ました。


 「そうなの? りぼんちゃんも凄いと思うよ? 一回の訓練で氣弾を飛ばせるようになる人、そんなにいないんだから」


 「そうでしょうか? 確かにわたしも入隊した当初は凄い才能だって、持てはやされました。元々、空手を習っていたのが良かったのか、筋がいいって……。でも、お世辞でした。あの二人は本物。一緒にいるわたしが一番良く分かります」


 りぼんは打ち明けた。りぼんが幽玄者(ゆうげんしゃ)として今の実力になるまで半年、二人が二ヶ月なら、どちらに才能があるかは火を見るより明らかだ。


 「隊のみんなが密かに言ってます。二人はガイさん十兵衛さんに並ぶ天才。……いえ、鬼才だって」


 俯くりぼん。ファーは、そんなりぼんを見ながら、それでも優しく励ました。


 「大丈夫。わたしもフォンちゃんと姉妹みたいに育って、六道の訓練も一緒に始めたんだけど。わたしは全然、上達しなくって」

 

 「……そうなんですか?」


 「うん。今だって、実はわたし……まだ幻獣を一人で倒せた事がなくて、援護ばっかだけど……フォンちゃんは何度も任務を熟してて、今じゃ清林組(せいりんぐみ)の主戦力なんだから」


 ファーも打ち明けた。引け目を感じる事は誰にでもある。


 「他にもフォンちゃんは舞踊も得意でさー。こうやってヒラヒラーって、綺麗なんだよ。わたしも習ってみたけど、これも全然、だめ」


 ファーが扇子で扇ぐような仕草をし、ギクシャクと舞を再現した。りぼんが「あのフォンさんが? 見てみたいです!」と興味を持った。

 二人が和やかに話していると、丁度、ふてくされたような顔をしたフォンがやって来た。


 「何、勝手に人の話してるのよ」


 「あっ、フォンちゃん。今、氣弾のレッスンしてて。フォンちゃんもコツとか有れば教えてあげて」

 

 「やーよ。私は子供が大っ嫌いなの!」


 真と勝志を見たフォンが、嫌味たっぷりに言った。

 昨日の鬼ごっこの顛末の所為だろう。その為なのか、今日はフォンも清林組の衣装を来ていない。しかし、ファーとは姉妹のような関係だけあって、似た服装をしており、同じようにTシャツと短パンの間に、腰に掛かるハイレグパンツの布が見えている。


 「フォンちゃん! あの二人に鬼ごっこで負けちゃったんだってね」


 「はぁ? あんなの手加減してあげたに決まってるでしょ!」


 ファーの言葉にフォンは益々、不機嫌な表情になった。


 「あたしはこれから避難民の迎えに出るの! ファー、あんたはその間、砦の守備よ! 忘れたの?」


 「あぁ、そうだった!」


 任務を忘れていたファーが慌てた。


 「ごめんね、真君、勝志君、今日はここまで。りぼんちゃん、お互い頑張ろうね!」


 「はい。ありがとうございます」


 りぼんが、悩みを聞いてくれたファーにお礼を言った。一方、フォンに気付いた勝志は、昨日の出来事で、まるで仲良くなれたかのように近寄る。


 「あっ、フォンじゃねーか。また勝負しようぜ!」


 しかし、フォンは無言で氣弾を飛ばし、恨みを買った勝志を吹き飛ばした。


 「いってー」


 フォンは「ふんっ」とGカップを揺らして、去っていってしまう。

 見事な氣弾だが、発言通り手加減してくれている。それに気付かない、真と勝志ではなかった。

 三人は、何やかんや世話になった姉妹との訓練を終えた。

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