十三話 罠㊁
勝志、りぼんが、ファーと一緒に子供達と遊んであげ、寺院の中に帰らせた後、真達三人は、いよいよ彼女から業の指南を受けた。
「わたしね、空蝉も神足もだめだめなんだけど、たまたま業ができるから、戦場で生き残れているの! 覚えればきっと役に立つよ!」
子供の面倒を見るのが好きはファーは、三人の指導もウキウキしながら始めた。
「業の基本は氣弾! 自分の魂のエネルギーを飛ばして、相手にぶつけるの!」
しかし、彼女の教え方は感覚的……というより、かなりアバウトだった。
「氣弾を撃つには、まず幽世に深く入って、身体の内側にある力を、はぁああ! って手の平に集めて、とりゃああ! って発射するんだよ!」
「はぁ?」
「……とりぁ?」
独特な表現に、真とりぼんが首を捻る中、感性が似ているのか、勝志だけは「なるほどな!」と言った。
ファーは、三人の前で体を横に向ける。
「じゃあ、わたしがお手本をやってみるから見てて!」
「百聞は一見にしかず」とばかりにファーが幽世に入り、掌底突きの構えを取る。
「まず、はぁああ、っと貯める!」
ファーの手の平に、目には見えないエネルギーのようなものが集まり、空間が歪む。
「そして……とりゃあああ!」
そのままファーが、勢いよく掌底突きを放つと、サッカーボール大のエネルギー球が手の平から離れ、勢いよく飛んで行った。氣弾は、寺院の入り口にある石像に命中し、粉々に粉砕した。
「おおぉー!」
「お見事です!」
勝志とりぼんが、歓声を上げた。一方、ファー本人は「いっけない、師範の像壊しちゃった!」と焦っていた。
幽世を飛ぶ氣弾は、森羅でなければ感知できない。幻獣に対抗できるとなると、威力も相当なものだろう。
「ど、どう? こんな感じだよ」
「なぁ、もう一回やって貰ってもいいか? ちょっと見逃しちまって……」
「うん、いいよ!」
おっちょこちょいのファーだったが、勝志の頼みを親切に聞き、再び氣弾を放つ。
真は、勝志が氣弾を見ていなかったのだろうと思った。氣弾を放つ瞬間、ファーのGカップがぶるんっと揺れるので、そちらに目がいっているに違いない。
「も、もう一回頼む」
「OK! OK! はぁああ!」
そんな視線には気付かず、破壊力バツグンの業を、ファーは何度も見せてくれた。りぼんも思わず「すごいですね……」と溢した。
実践に移った三人は、各々、氣弾を放つ練習をした。
真は、最初こそただ掌底突きを繰り出すだけだったが、幻獣と対峙している時の緊迫感を思い起こし、次第に氣弾と呼べるものを飛ばせるようになった。
業とは、ある意味魂を削る行為なのだと、真は解釈した。
勝志は、力強い溜めを見せたが、そこから先を見ていなかった弊害で、中々弾が飛んでいかない。りぼんは、構えと突きは完璧だったが、肝心の氣弾が、何かに比例しとても小さかった。
「氣弾はね、得意な人と苦手な人がいるの。わたしはこれをメインにして戦っているけど、三人は氣弾で感覚を養って自分用の業を作るといいよ!」
ファーが、練習の成果を出し始める教え子達を嬉しそうに見ながら、アドバイスした。
真は苦戦する勝志に提案する。
「勝志、戦場にいるつもりでやった方がいい。勝負しよう」
真は、本番に強い勝志のポテンシャルを引き出す為、向かい合わせてになって、氣弾対決を仕掛けた。互に氣弾を同時に放ち、ぶつけ合う。威力が劣ったり、発射し損なった方がダメージを受ける、即席のゲームだ。
「勝負? いいぜ、やってやる!」
相変わらず勝志は、何も考えず勝負を受けた。