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五十八話 十兵衛VSムシャ㊁

 (しん)は、ペガサスとユニコーンのコンビネーション攻撃を、再び回避する。


 「くっ、コイツ!」


 数的優位にも関わらず、仕留められない事にユニコーンが苛立つ。


 「なら、これはどう!?」


 同じく苛立つペガサスが、口から眩い氣弾を放ったが、これもギリギリで躱され、氣弾が森の地面を深々と抉る。真は、反撃に鎖の分銅を飛ばしたが、不意を突かれたペガサスの前に割って入ったユニコーンが、角で分銅を弾いた。

 焦燥が隙を生む事を反省した二体は、陣形を整え、再び真の周りを旋回し始める。


 「くそっ、一体なら勝ってる……!」


 苛立ちを感じたのは、真も同じであった。

 幻獣とて徒党を組むが、これ程、巧な連携をして戦闘を行う相手も珍しい。

 二体は、メリーゴーランドフォーメーションで必ず真を挟み撃ちにする。片方が視界から外れても、動きは森羅(シンラ)で追えるが、目に見える物、全てに意識を向けられないのと同じように、警戒しても反応が遅れる場合がある。余り精度の良い連携攻撃を繰り出され続ければ、何れは対処を誤る可能性があった。

 どうにかして、相手の連携を崩さなければならない。


 ――こんなの、真っ向から捻じ伏せてやる……!


 味方に依存した戦いなど、孤高とは程遠い。

 真は冷徹に、勝つ事だけを考えた。


 十兵衛とムシャが刀を振るう度に、高々と水繁吹きが上がり、水底や岩が斬り裂かれる。両者は、森に流れる川の中で斬り合いながら、徐々に下流へと下っていく。

 実力は拮抗していた。

 ムシャが刀を身体の前でくるりと回すと、鬼火を思わせる青い火の玉が四つ燃え上がる。


 「落武者狩り……!」


 鬼火が、十兵衛を狩ろうと飛んで来た。


 「篠突く!!」


 十兵衛は、素早く三段突きを繰り出す。突きから放たれた涓滴が鬼火を掻き消し、最後の一つは水中に逃れて回避する。鬼火が水面に当たると、川が激しく燃え上がり、辺りが青色で染まった。

 遡上する魚より速く移動し、十兵衛はムシャの背後で浮上する。振り下ろされた面打ちを、ムシャが振り返って防いだ。


 「名残り!!」

  

 「!?」


 ムシャの刀が太刀魚(たちうお)と離れても、清水(しみず)(やいば)と鍔迫り合いを続ける。斬撃を一定の間、その場に()()(ワザ)だ。

 その間に、十兵衛は返す刀で斬り付ける。


 「驟雨!!」


 水流を纏う太刀が、ムシャの胴を一刀両断しようとする。目にも止まらぬ、十兵衛の必殺(ワザ)だ。


 「打首獄門!!」


 しかしこの太刀筋に、あろう事かムシャは、自らの頭部を割り込ませてきた。頭部にある長い角が、エネルギーの(やいば)を纏って振り下ろされ、驟雨を弾く。


 ――何!!?

 

 太刀魚が纏っていた水流が、露となり爆ぜる。

 十兵衛の連続(ワザ)を、ムシャは無傷で凌いでみせた。特に最後は、例え驟雨に対抗できる威力の(ワザ)があっても、神速の太刀に合わせたのは天晴れとしか言いようがない。

 奥義と呼べる(ワザ)を出し合っても、戦いは膠着した。

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