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四十七話 護衛㊄

 護衛任務に就いたフォンは、結局、ラーラの部屋にあるガラス張りのお風呂が、一番気に入ったようだった。

 夕食の後、ゆっくりと湯船に浸かるこの時間が、一日の中で、最も機嫌が良い。


 「まぁ、このあたしを雇っているんだから、これくらいのサービスがあって当然ね! あぁ、今日も肩凝ったわ!」


 万が一の事を考えると、護衛がのんびりお風呂には入ってる訳にはいかない為、フォンは、ラーラが入る時間に、一緒にお風呂に入った。

 ラーラは、その事については差し支えなかったが、いかんせん裸になると、実力差を思い知らされた。


 「はぁ……。学校では大きい方なのに……っ」


 お湯にぷかぷか浮かぶフォンのGカップを一瞥し、ラーラが小声で言った。

 Dカップのラーラは、中学校では十分巨乳扱いだ。体型には自信があったラーラだが、フォンの前では面目丸潰れだった。


 「ふふっ、残念ね。あたしが中学の時は、Eはあったかしら。後四年で追い付ける? ムリでしょうねー」


 ラーラの嫉妬に気付き、フォンが勝ち誇って言った。


 「フォンがナイスバディ過ぎるのっ!」


 所有者のラーラに遠慮せず、湯船を占領するフォンのカラダを前に、ラーラの胸は何時もより小さくなってしまったかのようだった。

 

 「―それより、あんた……どっちが好きなのよ?」


 頭の後ろで手を組むフォンが、唐突にラーラに聞いた。


 「なんのこと?」


 「好きな男よ……! (しん)? まさか勝志(かつし)?」


 「!!? ……っな、なに!? 真? 勝志? 好き!? な、なんでー!?」


 フォンの出し抜けの質問に、ラーラは慌てふためいた。


 「だっておかしいでしょ。家の人しか知らない幽玄者のヒミツ知ってるし、ボディガード頼まれたのもあの二人でしょ? 食事に呼んだ事もあるらしいじゃない」


 フォンは疑いの目を、ラーラに近付けた。


 「ふ、二人とは友達だよーっ」


 「うそ。あんた学校でも友達いないじゃない」


 「い、いるよー。……男の子は……いないけど……」


 フォンの鋭さに、ラーラは焦った。

 確かにラーラは、学校でも友達は少ない。これは、余り作らないとようにしていた所為もあったが……。


 「そ、その……勝志の方は……。ほらっ、お兄ちゃんみたいな感じだよ……!」


 ラーラは正直に答えたが、これは皆まで言ったようなものだった。


 「ふーん。あのバトルマニアのどこがいいのかしら」


 「……」


 「あぁ、不良っぽいと格好良く見えちゃうとかそういうの?」


 ラーラは、のぼせてきてしまったので、湯船を出ようとした。


 「わ、わたしもう出るっ。フォンはまだ入ってていいからねー」


 「こらっ、どこ行くのよ! 詳しく聞かせなさい! 何時から好きなのよ! どこまでの行ってるの!」


 逃げ出そうとするラーラを、フォンが押さえ付ける。フォンの爆乳が、ラーラの巨乳を圧倒し、むにゅりと押し潰した。


 「きゃああああ! ちがうー、そんなんじゃないっ」


 ラーラは必死に誤魔化そうとしたが、真の事を「好きじゃない」とは、決して言えなかった。

 

 夜風に晒される建物の屋上で、真は目を閉じて瞑想をしていた。

 目の前には、突き立てられた叢雲(ムラクモ)が月明かりを煌々と反射している。一から己を鍛え直す事に決めた真にとって、この謎の神剣は、やはり役に立つシロモノだと感じていた。

 真がラーラの護衛を断ったのは、柵を断ち、より修行と戦いに慢心したいからだった。

 暗殺事件の捜査は、多くの隊士同様、真にも興味が薄かった。エインヘリャルとの協力体制も、捜査に当たる人数が白兎(びゃくと)隊の方が多く、彼らとバディを組めなかった者は、隊士同士で組む事となり、真は何時も通り、勝志と一緒で味気ない。


 ――これだけ幽玄者が網を張っている中で、新しい殺人が起こるとは思えないけど……。


 訓練を兼ね、街全体に森羅(シンラ)を張り巡らせながら、真はそう思った。

 捜査状況の報告の為、出ていた勝志が、非常階段を駆け上がってくるのが分かる。屋上に戻った勝志は、重大な事を発見したらしく、かなり興奮していた。


 「てーへんだ! てーへんだ! 今、別のバディの奴らも来てて、エインヘリャルの女がいたんだけど……だけど―」


 真は片目を開けて、勝志に視線を向けた。


 「だけど?」


 「いい風が吹いて……スカートがめくれて……!」


 勝志は衝撃を受けている。


 「あいつら…………Tバックなんだ!!」

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