十九話 ミッション㊃
「何で俺が注意しに行かなきゃならないんだ? 太郎が自分で言え!」
「だって、あのマッチョ野郎、見張りに一回も出てないんだぜ?」
「新入りなんだから、人一倍、働くくれーじゃねーと!」
「プロヴィデンスから来たからって、オレ達を下に見てやがるんだ!」
艦内の居住区で、ベンが三人の白兎隊士と揉めていた。
隊士の太郎達は、新入隊士の巨漢ノームが任務をサボるので、それを咎めようと、彼に割り当てられている部屋に乗り込もうとしていた。しかし彼らは、強面のノームを相手にするのに尻込みしている。
「だからって、何で俺が代わりに行くんだよ……! お前らが注意しに行けばいいだろ? あ? 太郎、幸彦、又三郎!」
「オレらじゃドスが効かねぇんだ。だからベン、お前がガツンと言ってやれ!」
ベンは、そんな感じで丸め込まれ、使いにされてしまった。
――こいつらと来たら……ビビりやがって……!
ベンは呆れていた。
太郎達を始め隊士の大半は、プロヴィデンス軍からの連中が気に入らず、悪口ばかり言っていた。しかし、女性であるシルフィーとイフリータへの悪口は言わず「どっち派」などという話をしている。
「やっぱシルフィーちゃんかな。金髪美人……イイぜ」
「オレは巨乳派だからな。勝志に確認させたが、Gは間違いなくあるってよ!」
「赤いの良いよなー。でも、迷彩柄も堪らねぇ……!」
ベンは、文句を言おう立ち止まったが「早く行けよベン!」と急かされ、止むを得ずノームの部屋のドアをノックをした。
正直ベンも、到底、言う事を聞きそうにない相手の説教など嫌だったが、サボりは事実なのでやむを得ない。
「あっ、ノーム……さん。悪いが見張りの時間だぜ。ちゃんと―」
ベンはノックをしても反応がなかったので、悪い癖だったがドアを開けた。
しかし、室内の光景を見たベンは、その場で固まった。
「んっ……うん……っ」
部屋には、別室が割り当てられている筈のイフリータもおり、ノームと唇を重ねている。二人とも上半身裸で抱き合い、舌を舐め合うかなり激しいキスだ。
「し、失礼しましたー……」
ベンは小声でそう言うと、そっとドアを閉めた。
「―どうだった?」
戻ってきたベンに、三人が訪ねた。
「あ、ああ。ちゃ、ちゃんと見張りに出るってよ。話せば案外……分かる奴だ。お前らとも趣味は合うかもしれねぇ……」
「おお! やるなー、流石、ベン!」
「まぁな。これくらい……訳ねぇよ」
ベンは被汗を拭いながら答えた。
その後の時間、彼は何が悲しいのか、ノームに代わって見張り台に立った。
「……俺には彼女もいねぇのに……」




