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十四話 魔女の島㊃

 天気予報は当たり、時間には雨雲が空を覆い始めた。

 (しん)勝志(かつし)、ラーラは、()()()()()()()、岸へと戻った。


 「それじゃあ二人共、元気でね……!」


 ラーラが戦地へと向かう、真と勝志に言った。二人を心配しているようだったが、魚が海に帰るようなものである二人は、至ってお気楽な様子だ。


 「次はいつ逢えるのかな?」


 「うーん。あー、いつになるんだ? 真」


 「さぁ……」


 ラーラの問いに勝志が首を傾げ、真を見た。真にも、それは分からない。

 「ずっと先になるに違いない」と伝えようとしたが、人気が真の口を噤ませた。


 「誰だ……?」


 通りすがりの人物に言うには鋭い真の声に、勝志とラーラも警戒した。

 森の枯木の陰に、気配を感じる。これも、唯の人間のものではない。

 やがて、真の読み通り、そこにいた幽玄者(ゆうげんしゃ)が姿を見せた。


 「あんたは……」


 木陰から現れたのは、真と勝志とそう変わらない年齢の、水色の髪をした男だった。

 ラーラの母クローリスが、写真の中で着ていた、騎士を思わせる衣装によく似た、白地の制服を纏っている。


 「……グレイス大臣の娘と白兎(びゃくと)隊士が仲が良いとは意外ですね……。ラーラ嬢、遊び相手はもう少し選んだ方が宜しいかと」

 

 ――エインヘリャル……!

 

 真は、男の格好が、エウロパの対幻獣戦闘組織、エインヘリャル聖騎士団のものであると知っていた。


 「ルーガルー……! どうしてここに……!?」


 ラーラは男と面識があった。

 エインヘリャルの代表団が父に会いに屋敷に来た際、ラーラも同席し、何度か言葉も交わした。若いが、真面目そうな人物だった。


 「ラーラ嬢こそ、どうしてこのような所に? 僕は今、幻獣化の疑いがある生物を追っています。どうやら……あの島に潜んでいるようですね……!」


 真と勝志に緊張が走った。ラーラが衝撃を受けたような表情になる。

 ルーガルーは、まるで木々を見透かし、うろに戻ったレムリンを捉えているかのように島を見ていた。卓越した森羅(シンラ)だ。


 「危険が及ばない内に、あの生き物は僕らで保護します。これはエインヘリャルの権限であり、ガリア政府の決定でもあります」

 

 ルーガルーが黄色い瞳を向けて、感情なく言った。

 同時に、真達がいる岸とは、どうやら反対側の岸からやってきたであろう、軍用のゴムボードが数台、エンジン音を鳴らしながら魔女の島に向かっているのが見えた。


 「待ってっ!」


 ラーラが叫んだ。真は咄嗟に神足(シンソク)を使おうとした彼女を抑えた。


 「ラーラ嬢。我々は共には生きられない。彼方と此方……。決められた世界でしか生きてはいけないのです」


 「……」

 

 ルーガルーは、まるで、ラーラがしていた事を知っているような物言いをした。

 蒼白な顔のラーラを押さえながら、真は学校で広まっていたという噂がどの程度のものだったのか、もう少し確認を取って置くべきだったと悔やんだ。

 しかし、それを別にしても、男と軍の現れたタイミングが余りにも良すぎる。


 ――尾けられた……!?


 真はルーガルーを疑ったが、相手の表情から真相を読み取る事はできなかった。

 ラーラが真の手を離れ、向こう岸に行く為に岸辺を走り出した。


 「ラーラ!」


 勝志が直ぐに後を追った。

 一人残った真に、懐中時計の形をした通信機を取り出したルーガルーが言った。


 「ところで……白兎隊はもう、遠征に向かう為、出発する時間では?」


 真は相手の言葉を無視し、自分もラーラの後を追った。

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