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幸せのいと  作者: 一ノ宮いちご
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すべての始まりと過去の思い出

主人公はヴァイオレットですが、お話は4人それぞれの視点で語られていきます。苦手な方はご注意ください


♠ヴァイオレット

♦ロラン

♣マティアス

♥チェルシー


の順番で進みます。




side♠公爵令嬢ヴァイオレット





分かっていた。


婚約者が別の娘に夢中になっていることなど。




けれど、悲しくなる。


幼い頃から、政略結婚でも仲良くなれると信じて、うまくやっていこうと努力してきたから。他に恋人がいても公の場では私を正しく婚約者として一番に扱ってくれると信じていたから。





そしてなにより、真実彼に恋していたから。





好きだった。初恋だった。8歳の時に決まった婚約。優しくて素敵なこの人のお嫁さんになれると思ったら嬉しくて、彼に見合う人にならなければと努力した日々。




彼に捧げた10年間。私は、確かに恋をしていた。




私より少し大人な彼は、夢中な私を見てもいつもの如く穏やかに微笑むだけだったけれど。




そしてアカデミーの卒業パーティが開かれている今日、彼は卒業する私でなく、まだ1年生の「彼女」のエスコートをしている。



今までも、彼が彼女とパーティや舞踏会に出席したことはあった。しかし、それらは全て非公式のもので、今日みたいなことは初めてだった。





なかなか迎えに来ない彼を心配していた数十分前の私。いや、本当は心のどこかで分かっていた。





いつかこういう日がくるということを。







side♦王太子ロラン



「殿下のおそばにいても恥ずかしくないようにがんばりますわ。」



そう言ってはにかむ5歳年下の婚約者が可愛かった。



「応援しているよ。お互い頑張ろうね」と微笑みかければ、必ず染まる頬。好かれているという自覚はあった。



彼女ヴァイオレットと婚約関係を続けて10年。彼女はかなり優秀な王太子妃、ひいては王妃となると思われる様子を見せているし、学業成績も非の打ち所がない。



しかし、彼女が最高学年になった今年は、あまり学園での良いうわさを聞かなかった。



なんでも、新入生の少女をいじめているとか。最初は信じられなかったが、様子を見に久しぶりに学園へ向かうと、見覚えのある少女が泣いているのをみつけた。彼女とは先日の舞踏会で出会った。ワインをこぼされたとかで、泣いていた彼女を控え室まで案内した記憶がある。




「やぁ、チェルシー嬢だったね?また何かあったのかい?」


「え、殿下…?」




こうして彼女との親交が始まった。




完璧なヴァイオレットとは違ってお茶目で少し抜けていて可愛らしい彼女との時間は楽しく、会う度に惹かれていった。




婚約者のいる身で他の女性と親しく関わるのは褒められることではないが、ヴァイオレットはいつまでたっても何も言わない。きっと、彼女も自分がチェルシーにした仕打ちを後ろめたく思っているのだ、そう思った。




それとともに、自分がチェルシーに優しくしたから、それに嫉妬して優しくされた彼女をいじめてしまうヴァイオレットにも、なかなかに可愛いところがあると思った。やはり彼女は今も変わらず私のことを好きなんだ。




では、卒業パーティでチェルシーのエスコートをしたら、今度はどうなるだろう?そう思って、私は心を震わせた。









side♣王太子補佐官マティアス



初恋の子は、出会った時には既に好きなってはいけない人になっていた。



代々国の宰相を務める家系に生まれ、幼い頃から様々なことを詰め込まれてきた。




主となる王太子ロランに、婚約者を紹介したいと言われた日、私は、彼女に恋をした。




菫色の艶やかな髪の毛に、紺色の瞳が美しい少女だった。話してみると、控えめながらしっかりとした意思、意見を持っていることを感じさせられ、この人なら未来の妃に相応しい人物になるだろうと思った。その半面、絶対に自分のことを瞳に映して貰える日はこないと告げられているようで、苦しい思いがした。




そして、彼女のことを見守り、時にはこっそりと助けるという日々を長らく送った。そんな中で、彼女がロランに向けている想いに気づかざるを得なかった。




始まる前に終わった恋。




きちんと仕舞って、誰にも見せないと誓ったはずだった。




ロランが、正式な卒業パーティで、彼女のエスコートを拒否するまでは。








side♥男爵令嬢チェルシー




自分の面立ちが人と比べて随分可愛い部類に入ると、気づいたのはいつだったか。




小さな頃から、男の人も、女の人も、上目遣いでおねだりすれば何だって言うことを聞いてくれた。男の子は会えばいつでもプレゼントをくれたし、女の子は嫉視しながらもわたしを褒めそやした。





おうちは貧乏で、毎日畑を耕さなきゃいけないような日々だったけど、そんなのは全部パパとママにやってもらった。だって、畑仕事なんかしたら可愛いわたしの綺麗な手が汚れちゃうでしょ??



だから、わたしは一人、おねだりして買ってもらった豪華なお裁縫セットを使って、家で刺繍をして過ごした。



溜まったら売り歩いて、それも結構お金になる。わたしの言った値段よりも高値で買ってくれる人がほとんどだし、新しい人に出会って、またプレゼントをくれる人が増える!いいことばかりよね!



世界はきっと、いつだってわたしを幸せにするようにできているんだわ。



そう思いはじめてからは、ちょっとのわがままも言ってみたりした。偶然を装って出会った貴族のおじさまに頼んで、本当に高そうな馬車に乗せてもらえて時はすっごくびっくりしたけど!





そんなこんなで自分の可愛さがこういった方面でも「使える」のだと分かり、わたしはもっと上手くやるようになった。



おじさまに、養子として向かえたいと言われるように仕向けて、とうとうわたしは貴族になった!




男爵家に迎えられて、教えられるままお作法もお勉強も頑張った。これくらいのことを頑張るだけで貴族でいられるなら、いくらでもやってやる。





そうして頑張り続けて1年。




わたしは、とうとう貴族の子が通う学校に入学した。入ってみると、貴族といってもあまり平民と変わらない。少し言葉に気をつけるだけであっという間に気に入られて、みんなプレゼントをくれるようになった。



それは王太子も同じだった。ヴァイオレットとかいう地味な公爵令嬢の婚約者がいるみたいだけど、いじめられてるって言ったら味方してくれるようになって、最近ではデートもする仲。彼、人を所有するのが好きみたいで、そこはちょっと歪んでると思うんだけど、それを差し引いてもお釣りがくるステータスの高さ。このまま所有物のフリをしておけば最悪でも側妃は狙える位置にいる自信がある。お父様に良い報告ができそうな予感♪









初投稿です。お気づきの点、感想等ございましたらリアクション頂けると泣いて喜びます。よろしくお願い申し上げます。

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