第19のミッションへ
18回のミッションにチャレンジ。
そのうちクリアは4回。
はっきり言って成績は悪いと思う。
ただ、回を重ねるごとにミッションのクリア率は上がっている。
もちろん、与えられたミッションの難易度もクリア率に大きく影響しているだろうけど、それだけじゃない。
俺自身が異世界での立ち振る舞いに慣れたこと、スキルの使い方に慣れたことが大きな要因じゃないかと思う。
毎回与えられるスキルは今のところ別物だ。
だけど、最初はやはりスキルを使うということ自体に躊躇があった。
でも、今は必要だと思った時には躊躇なく使える。
スキルという存在に慣れたということだ。
「次のミッションは、たぶん簡単だよ。探しものだね。そのものが依頼主の手元に渡った時点でミッションクリアってわけ。こんなこと言うのもなんだけど、ちょっと拍子抜けだよね。こんなの短編小説にもならないんじゃないかな?」
あからさまに残念そうだ。
相も変わらずコイツの姿は形容し難く、ぼやけた磨りガラスの塊だ。
それでも、幾度となく会って、会話していくうちに不思議と表情や仕草がイメージできるようになっている。
「簡単に言うなよ。知らない世界で知らない何かに成って、知らないスキルを使って知らない誰かの知らない探し物を手伝うんだから、考えようによってはそれだけで途方もなく難しい話だろ。」
「そりゃーね、今からよーいドンで探し物をするなら難しいよ。何を探すのかもわかってないわけだからね。でも、今までの経験で分かってると思うけど、今から君は異世界に転生される。それも人族として存在している。それで、出会うべくして出会った何者かの探し物を手伝うんだ。もう、その辺の法則と言うかルールは察しているだろう?」
そう、今まで転生された世界ではもちろん動物も居たし、昆虫も居た。魔物も居たし、なんなら魔王だって居た。
それでも俺は人間として、その世界に存在していた。
こんな経験することないからいっそのこと魔物になってみたい気もするけど。
『法則』なんて言葉が出てきたくらいだから、きっと『人』であることは一つのルールなんだろうな。
まぁ、身分や年齢はその都度変わっているけど。
そう言えば、性別もずっと男のままだな。
いや、例え容姿も変わるとはいえ、なんとなく女性にはなりたくないな。
別に性差別するとかそういうわけじゃないんだが、基本的にソフト(中身)が俺のままでハード(外見)だけ女に成っても、まともな女としては生きていけない気がする。
俺が男であり続けることも、この『法則』とやらで決まっていて欲しいものだが。
「それでは、永らくお待たせいたしました。どうぞ、次の任務へ出発です!スキルはあちらに行ってから確認して下さいね。」
「ちょっと待て!もう少し、じょ・・・!!」
『情報をくれ!』と言おうとしたが、間に合わなかったらしい。
いや、待ってくれる気も、情報をくれる気もなかったのかも知れない。
俺は眩い光に視界を奪われ、その光の中をただただ、流されているような感覚に包まれた。
「目が痛い・・・。’
そう呟いたのは俺だ。
いや、それは間違いないのだが、声が高い。
まさか、とうとう恐れていた、女性にでもなってしまったのだろうか。
少し目が慣れてきたが、まだ視界がはっきりしない。
ぼやけている視覚より先に嗅覚が反応した。
「緑?草?青々とした匂いがする。」
次に頬を撫でる風を感じた。
草原の香りをのせた、優しい風がとても心地いい。
いっそ、しばらく目を閉じたまま、この感覚を楽しみたい気さえしてくる。
そう思った矢先に、植物の匂いに混じって、動物の匂いを感じた。
犬でも近くにいるのだろうか。
そう思って目を開けようとした瞬間、聴覚が反応した。
「ハッ、ハッ、ハッ、ハッ」
それは犬が舌を垂らして呼吸している音に聞こえた。
ただ、俺の想像していた犬のそれとは全然違う。
血の気が引くのを感じながら、俺はゆっくりと慣れてきているであろう目を、ゆっくりと開いた。
「あ、これ、ダメなやつ。」
誤字脱字ありましたらお願いいたします。
物語はようやく、ようやく次なる異世界へ!
一回に投稿している文字数が少ないこともあり、なかなか宇宙空間から出てきませんでした(笑)
ずっと、ふわふわ・・・
さて、ここからやっと、冒険が進展。
どうなっていくのかな?