6.獣
パーティーが行われている会場から出る。
月が出ていて明るい夜だ。探索するにはもってこいだった。
人気のない回廊を進む。
パーティー会場やその周辺以外には人はほぼいない。寂しい城だ。
回廊から庭園に出ると、鉄さびのような臭いが鼻を突いた。
その臭いの方向へ何となく歩を進めると、そこには串刺しにされた10人ほどの全裸遺体が放置されていた。月明かりに照らされた姿――尻から口へと串刺しにされ、絶叫の苦悶の表情を浮かべたままの遺体たち。
そう言えば、昨日側妃の誰かに不貞の噂が流れ、王の粛清を受けたと聞いた。
これがそうなのかもしれない。
――壮観だ。
美しい月夜の庭園に、まるでオブジェのように並べられた串刺し死体。
あの王の顔が思い浮かぶ――あの一見普通の男が、これをやったのかと思うと、やはり人というものは、人という皮を被っただけの獣なのだと思う。
かく言う私だって、この面の下にはドロドロとした感情が渦巻いている。
この光景を見て私が思ったのは、”参考になる”ということくらいだった。
王を殺すときに串刺しも追加しよう、そんな事しか思わなかった。
色々殺害方法を考えているのだけれど、最後に首を切り落とすという以外はまだ考え途中だ。
そう簡単に死なせたくない。色々体験してもらいたい方法が沢山ある。
見たい――その苦悶の表情が、恐怖にむせび泣く表情が!
獣の子はしょせんは獣――私は正しくあの獣の子なのだ。
こんな凄惨な死体を眺めても憐みの情1つ湧いてこないのだから……。
「うふふふふっ……」
ニィと上がった口角、小さく漏れ出す笑い。
――もし私が本当に父上の子だったら、きっと違う思いを抱いたのかもしれない。
私もちゃんと父上の子に生まれたかった。
獣の子ではなく、人の子として生まれることができたのなら……。
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