表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/8

4.未来予想図

 チャンスは唐突に訪れた。


「3日後、王城で国王主催のパーティーが開かれる」


 突然私の暮らす離れを訪れた父が、そう切り出した。


「陛下は、未だにお前を見たことがないから必ず連れてくるよう仰せだ」


 苦虫を噛みつぶしたような顔をして言う。


 父上も兄上と同じようなことを懸念しているのだろう。私が王の目に留まったらどうしようかと。


 父上は私をできる限り屋敷の外に出さないようにして育ててきた。この広い屋敷、庭園、閉塞感のようなものは感じなかったけれど、父上は私の外出を厳しく制限してきた。


 他の兄弟たちは王に会ったことがある。暴虐無道の愚王だが、彼らにとっては伯父だ。

 伯父が未だに会ったことのない姪に会いたい……ただそれだけのことであるのなら、問題はないのだが。


「あの好色な陛下のことだ、何をしでかすか分かったものではない」


 そう。かつて父上が目を離したすきに王は母を暴行したのだ。

 懸念は当然のことだろう。


 父上は私が自身の出生の秘密を知っていることを知らない。

 純粋に私の身を心配すると同時に、実の親子がそうと知らず近親相姦の罪を犯すことも危惧している。

 王も私が自分の娘だということを知らないし。


「何とかお前を連れて行かずに済む方法はないものか……」

「父上、陛下の命令には逆らえません。些細なことでも不興を買えば、一族郎党皆殺しの危険もありますから」


 ちょっとの不興で一族郎党皆殺しの憂き目を見た家門は数知れず。断ることなどあり得ない。


 出来れば王を見てみたい。この目で。

 そしてチャンスがあるのなら殺してしまおうと思う。私がやったとばれないように、その首を掻き切ろう。

 チャンスが訪れたことに、思わず笑みがこぼれる。


 王の首は私のモノ。

 その首は庭に置いて眺めようか。鳥が食い荒らして、骨だけになったら金箔でも貼って飾ってやろう。漆を塗って杯にするのもいいかもしれない。


 王が死ねば、父上はお喜びになられるだろう。

 王が死ねば王弟である父上は王になれるし、あんな愚王が死んだところで喜ぶものはあっても悲しむものなんぞいはしない。

 あー……、王の取り巻きたちは悲しむかもしれない。既得権益が失われることを嘆いて。でもただそれだけだ。


「アデル、陛下は常軌を逸した方だ。神が消えたこの世界、人間が何をしようとも咎められることはないと――そう言って今まで人道に反することを多くおこなってきた」

「わかりました、気を付けます」


 今まで王がやってきた極悪非道のおこないを思い出し、身震いがした。恐怖からではない――同じことを王にしてやりたいと、新たな欲が芽生えたからだ。


 女を犯し殺す、男を拷問し殺す、子どもにはお互いに殺し合いをさせた。老人は生きたまま解剖された。夫は妻の手で肉を削ぎ落されて死んで、妻はその肉を食べさせられた後、オークに犯され殺された。

 その対象は自国他国に関わらず、己に反した者全て。


 どうすれば王にも同じことをしてやれるだろうか?


 全て王にお返しして差し上げたい。

 憎悪の怨嗟を全てぶつけて差し上げたい。

 私を父上の子として生まれさせてくれなかった罪を、王の子でありながらそれを名乗ることも出来ない矛盾を。


 ああ……王は死の瞬間どんな顔をするのだろうか?


 つくづく惜しむらくは、私に魔力がない事。

 魔法が使えれば、きっと楽に王を殺せるのに。いつか王を殺したくて、剣術とか武術を身に着けてきたけれど……。

 魔力が欲しい。

ブックマークや評価、本当に励みになります! レビューもとても欲しいので、よろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ