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2.紺碧の瞳

 母が父と共に外出した。今、屋敷には確実に母がいない。


「アデル、母様がおらんから鍛錬をしようではないか!」


 長兄が木刀片手に誘いに来た。


「いいですね! ローラン兄上、ちょっと待ってください。動きやすい服に着替えてきます」


 兄上は言うなれば脳筋で、筋肉こそ力なりを信条にするマッスルボディの持ち主だ。

 17歳なのに身長は190cmもあり、体重も100kg近い巨漢。まるで熊。それでいて賢そうなイケメンであり、人当たりも良い。

 公爵家の跡取りだが、騎士団からのオファーが絶えない。そして女性からモテル。


 私も身体を動かすのは好きで、武芸も得意だ。もっとも時間ばかりはいくらでもあるから、武芸も勉学も芸術なんかもなんでも興味のあることはやっている。


 母が確実にいないというタイミングでないと、おちおち庭園にも出られない。うっかり母上の目にでも入ったら大変なことになる。


「お待たせしました、兄上」


 そう言って庭園の一角に行くと、知らない青年が一緒にいた。


「兄上、この方は……」

「西方将軍の子息でな!」

「アズール・シュミットと申します」

「……アデライド・ベルンです」


 アズールと名乗った青年は、兄と同じくらいの年の頃だろうか。兄が規格外なのであまり参考にはならないが……。

 紺碧色の瞳をした綺麗な人だと思った。


 彼は私を見るなり、少し顔を赤くした。

 ……たいていの男は皆そういう反応をする。何せ私は美しい。自分で言うのもおこがましいのは分かっているが、事実私は美男美女揃いのベルン家の中でも飛びぬけて美しい。


「アズールは俺を騎士団に勧誘しようと、うっさくてな。まぁ腕の立つ男だから、鍛錬の相手にはちょうど良いと思って招いたのだ」

「買い被りです、公子」

「いいや、アズールは強いぞ! 魔力持ちだしな!」

「そうなのですか、それはさぞかしお強いのでしょう。私は魔力がないので相手にならないかもしれませんが、是非ともお手合わせをお願いしたいです」


 そう私が言うと、アズールは一瞬意外そうな顔をした。


 それもそうだ。何せ我が家は“私以外”皆魔力持ち。

 この家で一人だけ――やはり私は根っからの仲間はずれ体質のようだ。



 神無き世界が50年続いて、世界は荒れた。人々の心も荒れた。

 多くのことが変化した。その一つが魔力について。

 昔はみんな魔力を持っていて、魔法が使えたのに、今では半分以上の人が魔力を持たずに生まれてくるようになってしまった。それは一般市民に顕著な傾向。

 貴族や王族階級の血筋に連なる人では、まだ大半が魔力持ちではあるけれど、今後はどんどん減っていくのは間違いがない。



「それでは今日は純粋に剣術のみでの手合わせといたしましょう」

「おう! それが良い」


 アズールが仲間外れの私をどう思ったのか――少なくとも憐みの眼差しではなかったことには好感が持てた。

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