78)水溜まり
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町での手伝いが終わり、王都へ出発する事にする。
町長からは、今回の報告書とコインを預かった。
「このコインは?」
「そいつは、間違い無く町長の遣いである事を証明する物だ。失くさないでくれよ?」
「分かりました。それでは!」
「あぁ、頼んだぞ!」
さ、王都へ……。
「蓮斗、質問が有るのじゃが?」
「なに?」
珍しいな、クリスが質問なんて。
「お主、随分と人によって話し方が違うのじゃな」
「え……」
「権力者に対して丁寧じゃが、テッドに対してはどうじゃった? お主の倍は生きておるのに」
「う……気を付けるよ」
「ついでに言うと、儂も年上じゃが?」
「な……以後、気を付けます……」
「儂の事は冗談じゃ。じゃが気を付けた方が良いのじゃ」
「そうだね……ごめん」
でも……クリス、いつの間にか機嫌が直ったみたい。良かった良かった。
暫く歩き続けるが……。
「蓮斗さん、休憩致しましょう」
「そうだね」
今日も日射しが強く、とっても暑い……温度計が欲しいかも。
「最近、雨が降らないね」
「そうですわね」
レティシアがお水をくれる。休憩になると、必ず水を持ってきてくれるんだよな。何でだろ?
「あたいも飲む!」
「はいはい……」
レティシア、お母さんみたいだ。
「クリスも水掛けようか?」
「濡れるのは嫌いじゃと言ったと思うがの?」
「あ、そうだった……ごめんね」
「気持ちだけ貰うのじゃ」
お、怒ってない……良かったぁ……。
「ごっちそーさまー!」
ヴァージュは飲み終わると影に戻っていく。
「ヴァージュ、影の中って暑いの?」
「暑くないよー! 適温かな?」
え……良いなぁ。
「はぁ……」
ジリジリと容赦なく照り付ける太陽……あっついっ! 流石に防具を外したいわ。
レティシア……こんな暑いのに、俺のあげたマントに包まっている。
「レティシアは暑くないの?」
「ま、まぁ……そこそこ暑いですわね」
「マント暑くない? 取った方が良いんじゃ?」
「あ、いや、その……」
「レティシア、汗が酷いよ! 早くマントを取らないと!」
「いえ、いや、蓮斗さん! 後生ですから!」
一瞬、マントが捲れて中がチラリと見えたのだが……こ、これは……ぶっ……。
「蓮斗、どうしたのじゃ? 鼻血が出ておるぞ?」
「は、はんへほはい」
「何じゃ……?」
俺は鼻を塞ぎながら答えた。
まさか、胸と下がサラシだけで……。
「ご、ごめん……でも何か……着ようね?」
「蓮斗さん……はぅ……」
「何なのじゃ……」
ま、気持ちは分かる。
本当に暑いから、俺も危険が無ければ脱ぎたい。
ん……目の前に水溜まり……これが蜃気楼ってやつか?
「蓮斗様ー! 水溜まりだー!」
ヴァージュが影から飛び出してきた。
暑いのに元気だなー。
「水溜まりをバシャッとするの楽しーよねー! レーちゃんもやらない?」
「私は遠慮しておきますわ」
捲れたら困るしね、目のやり場に。
「行っくよー!」
「ま、待つのじゃ、影の小娘!」
「えー?」
クリスが叫んだ時には、ヴァージュはジャンプ中だった。
むにゃ……。
「水飛沫が出ない?」
「あっれー? 何かへーん!」
「やりおったのう……」
ん? 意味が分からないけど?
「うわー!」
一瞬だった。ヴァージュの首から下の全てが、水の様な物に包み込まれた。
「スライムじゃ……」
「え! あの有名な……イメージと違うけど」
「雨も降ってぬのに、水溜まりが有る訳無かろうに……しかも、この天気じゃぞ?」
だよね……スコールが有ったとしても、この暑さなら水溜まりなんて直ぐ蒸発するよね。
「くすぐったーい! あ、ヒリヒリするー!」
……あれ、どうすれば?
「スライムは、基本的に通常攻撃が効きませんわ。魔法か火炎系が有利ですが……」
「え! そうなの? スライムって弱いイメージが……」
「お主の世界ではそうかも知れぬが、駆け出しの冒険者では勝てぬのじゃ」
マジか!
ま、俺の世界って言うかゲームだけどね。
「ヴァージュ……? あれ? え……えぇ!?」
「れ、蓮斗さん! 後ろを向いてくださいまし!」
俺は鼻血を出しながら、後ろを向いて待機。
まさか服を溶かすなんて……ぶはっ……。
「剣技、廻陣炎舞!」
「え、大丈夫なの? そんなの使って!?」
見えないから、なにがなんだか……。
「大丈夫じゃ。小娘はギリギリで当たる様に、技を出しておるのじゃ」
「大丈夫ですの?」
「だいじょーぶい!」
「まったく、この子は……あ!」
「蓮斗様ー!」
終わったのか、良かった良かった。
振り向くと駆け寄る…………ヴァージュ、一糸纏わぬ……ぶはっ!
「あっれー? 蓮斗様ー?」
「影の小娘、さっさと影に戻るのじゃ!」
「あーい……」
俺は貧血で気を失ってしまった。
水溜まりには気を付けよう。
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