52)孤島に向けて
「おはよう!」
「おはようじゃ」
「おっはよー!」
「お……はよ……ござ……うっ……」
レティシアは備え付けのトイレに走って行った……完全に二日酔いだな。
魔具屋でスキーリエックスを買ってこよ。
「クリス」
「何じゃ?」
「睡眠の魔法なんて使えたんだね」
「思い出したのじゃ。昔、とら…………何でも無いのじゃ」
え? なに? 気になるけど……聞けません。
「あー! クーちゃんのせいで初夜がー!」
「五月蝿いのう」
何か、この二人の関係って不思議だな……初夜!? 初夜ってアレの事か!? お、落ち着け、俺。
「失礼しましたわ……」
お、レティシアが戻ってきた……会話を聞かれなくって良かった。
「皆、孤島に行こうと思うんだけど?」
レティシアが戻ったところで、提案を投げ掛けてみた。
「突然だねー!」
「唐突じゃな」
「急ですわね」
ちょ、ちょっと待ってよ。
俺が悪い感じになってるけど、昨日直ぐにお酒を飲んで話が頓挫したせいじゃないか?
……と言いたいが言えない、俺、弱いなぁ。
「転移者が占拠したらしいから、居るかなぁと思ってさ……」
「転移者が占拠、と言うのが気になるのう」
「元々、魔物達の棲み家だったらしいし」
「そうじゃったのか。儂は別に構わんが……」
……全然、昨日の話を聞いてないな。
「私は孤島で良いかと思いますわ」
「あたい、お腹空いたー」
「……えっと、孤島で良いのかな?」
「いいよー! あたいは必ず蓮斗様に賛成だから、聞かなくても大丈夫!」
「なっ……わ、私もですわっ!」
だから、何で張り合ってんの?
ま、孤島に行くって事で良い様だ。
「準備が終わったら、下で朝食を摂って出発ね」
全員頷き準備を始め出す。
その間にログインボーナスを見るか……最近も大した物が出ないんだよね。
〔日課特典:無双の水晶〕
〔無双の水晶を獲得しました〕
何これ! チートアイテムか!?
〔鑑定に失敗しました〕
俺って肝心な時に……。
「準備出来ましたわ。皆さんは?」
「俺も大丈夫」
「あたいも良いよー! お腹空いたー!」
ヴァージュに急かされ、早歩きで移動した。
「クリス、今日の朝食は食べないの?」
食事の時、いつもなら直ぐ変身するのに。
「ちと考え事をしてての、今日は要らないのじゃ」
「そっか……」
天使クリスちゃんが見れない……。
食事を終えて、直ぐに船へと向かう。
「ヴァージュ、どの辺かな?」
「もう少し真っ直ぐだよー」
海側に向かうと言うよりは、川に向かう感じだ。恐らく、ヴァージュが貰った船も、何処かの盗品かも知れないな。
「有りましたわ!」
川沿いに隠す様に置かれていた……やっぱり盗品か?
「思ったより大きいな」
「ですわね……どうやって動かすのかしら?」
「分かんなーい」
オールで漕ぐボートみたいのを想像してた。
「これは驚きじゃの。魔力で動かす方式じゃ」
「動力源が魔力って事?」
「そうじゃな」
「では、魔力が尽きると停止するのかしら?」
「そうなるのう」
「そんな膨大な魔力の持ち主なんて居るのかしら?」
「小娘、勘違いじゃな。魔力自体はこの船の魔水晶に蓄積されておる。それが尽きると停止じゃ」
クリス曰くは、船の魔水晶は常に周りの精霊達から補充されるらしい。まるで太陽光パネルだな。
ただ、操舵するには、ある程度の魔力操作が必要らしく……。
「誰が操作を出来るかじゃが……」
そういや自分の能力値しか見れないから、三人の魔力やMPとかって幾つか分からないな。
「クリスは時間に限りが有るから、出来れば別の人が良いけど……」
「あたい!」
おぉ! ヴァージュ、実は魔法が!?
「あたい、無理ー!」
そっちかよ……じゃあ、俺かレティシアか。
「レティシア、魔法使えたよね?」
「申し訳ありません、ちょっと体調が悪くて……」
あぁ、二日酔いか……。
「何じゃ? いつもの発情力や妄想力を使えんのか?」
「は、は、発情力ですって!?」
妄想力は否定しないんだ。
「俺でも操作出来るのかな?」
「うむ。多少なりとも魔力が有れば操舵可能じゃの」
「クリス、教えて貰えるかな?」
「良いじゃろう」
すると、クリスは天使ちゃんに変身。
いつ見ても惚れ惚れするわー。
「蓮斗、こちらに来るのじゃ」
はーい! もしかして、この展開は……。
「ここに水晶が有るじゃろ? 操舵を想像しながら、これを……」
クリスちゃん、良い匂いだなぁ……。
「蓮斗、聞いておるのか!?」
「き、聞いてるよ!」
あ、危ねぇ……あんまり頭に入ってないけど、やってみるか……。
えっと、操舵って操作の事か? 船が前に進むイメージ……。
「蓮斗様ー! 進まないよー!?」
ちょっと黙って欲しいな。んー……。
船の後ろの方で、コッコッと何かが動く音がする。行けるか?
「その調子ですわ!」
ゴゴゴ……。
「もう少しじゃ!」
俺、クリスの為に頑張るよ!
あれ? 少し弱まった?
「蓮斗、集中じゃ!」
キュルルル!!
「回っ……!!」
船は勢い良く発進。皆の悲鳴が聞こえる。
「は、速いですわ!!」
「楽しー! あはははっ!!」
「蓮斗、少し速度を落とす想像をするのじゃ!」
やがて、船は普通のスピードに。やっと慣れた……。
「あたいは速い方が面白かったよ?」
「いや、レティシアもあんなんだし……」
海に向かい上半身を乗り出していた。
「も、もう何も出ませんわ……」
うん、船酔いですね。
俺達は何とか出港する事が出来た。
船の操作は難しいな。
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