50)情報収集?
さ、気合い入れて行くぞ!
ギーっと建て付けの悪い扉を開く……。
「いらっしゃい……」
如何にも、って感じの老婆が挨拶する。
会釈をして商品棚を眺める。
結構種類が有るな。
「何か目ぼしい物は無いかな?」
「これなんて如何です?」
レティシアはピンク色に光るランタンの様な物を俺に見せてきた。
「これ、どんな効果が?」
「夜にリラックス出来ますわ!」
何それ? 何か意味有るの?
「したたかな小娘じゃ」
「本当だよねー」
「くっ……」
レティシアは何故か悔しがる。
「ん? どう言う事?」
「鈍い男じゃの」
「そーだねー」
何のこっちゃ。
レティシアは別の商品を物色しながら、あーでもない、こーでもないと独り言が止まらない。
俺も何か探すか……こ、これは!?
「これは買いだな!」
「何じゃ? ……スキーリエックス?」
「そう! これを飲めば二日酔いも何のその!」
「……何でそんな物が魔具屋に有るのじゃ?」
「分からないけど必要でしょ?」
「ま、まぁ確かに有れば良いの」
俺がスキーリエックスを見ている間に、レティシアとヴァージュが商品に指を差して喜んでいる……何か怪しいな。
「二人とも、何か良い物が見つかった?」
「蓮斗様見てー!」
「い、いや、何でもありませんわ!」
レティシアは遮る様に隠してきた。
ま、ろくでもない物だろう。
去ろうとすると、レティシアがアイテムを一つ落とした。
ダ・レーデモホーレルアルファ……?
「これ……」
「……」
「ね? 蓮斗様、凄いでしょ!?」
ヴァージュの目が輝いてるわ。
「却下……」
「はい……」
レティシア、本気で買おうとしたのか……。
本当、ろくな物が無いな。
「ん? これ……」
「これは本当じゃと凄いのう……」
鎧の左腕の部分だけが売られていた。
手首から肘にかけて小型の盾が付いている。
実は以前、盾を装備しようとすると、ペナルティが課せられる事が分かった。
盾の様に使える防具が有ればと思っていたのだが、まさにその商品であった。
しかも、嘘か本当か分からないが、とんでもない特殊能力が付いている様だ。
「蓮斗様ー、何それ?」
「一度だけ欠損した身体を元に戻すって」
「凄いねー!」
ま、値段も凄い。白金貨十枚……悩むな。
「本当の事なら価値は有るのう」
「確かに……」
どうせ防具も無いし、買っちゃおうか……。
「どうされたのですか?」
「これ……」
「凄いですわね……」
でしょ?
ん? レティシアがポーションを……何のポーションだ?
ビーヤクゼット……媚薬!?
「レティ──」
「あ、あのお置物綺麗ですわ!」
に、逃げられた。まさか買わないよね?
「蓮斗様! これ見て!」
「ん……ホーレグースリーベータ……?」
ヴァージュよ、お前もか……。
魔具屋、一時間ほど居座ってしまった。
結局、俺は悩んだ末、先程の防具を購入した。
左腕に銀色に光る鎧……アームシールドアーマーと言うらしい。ちょっと格好いいかも。
魔具屋に行ったお陰で昼食が遅くなっちゃうな。
「もうこんな時間か……」
俺の魔刻の腕輪(腕時計)は二時半を指していた。
「時間も遅いし、そこの店で昼食にしよう」
「そうですわね」
パン、スープ、目玉焼き、ハムのセット……これで良いか。
凛か……考え事をしながら食事をする。
「蓮斗さん、聞いてます?」
「え、あ、ごめん。考え事してて……」
「どうされたのですか?」
「いや、昨日の転移者……凛なんだけど」
「薙刀のですか?」
「あぁ。殺されるよって忠告したけどさ、誰に殺されるのかな……てね」
「そうですわね、蓮斗さんのレベルでしたら、一般人より遥かに強いですもの……」
じゃあ誰に? 他の転移者とか?
「この町で情報を集めようかと思う。港町だし、それなりに情報が有ると思うんだ」
「そうですわね。私も聞き込みを致しますわ」
「あたいも行くよ! 今日は涼しいし!」
「頼むよ、ヴァージュ」
各自情報を集め、三時間後の六時にこの店で集合となった。
先ずは、この町の地図を探そう。
……意外と近くで発見。
ギルド会館からかな。
入口に辿り着くと、レティシアとヴァージュにバッタリ出会う。
ま、そうだよね。一番情報が有りそうだし。
ギルド会館は二人に任せ、俺は別の所に行く事にしたが……酒場は開いてないし、どうしたものか。
偶然、目の前に衛兵っぽい人が歩いていたので、ちょっと聞き込み。
「すみませーん!」
「何者だ?」
ギルドの身分証を見せ、話を聞いて貰う。
この衛兵さんは、ギルドで設立された守衛隊と呼ばれる隊の一員らしい。
「最近、気掛かりな事、不自然な事とか無いですか?」
一応、質問したが、そもそも何の情報を得ようとしているか、俺自身も分かって無いので曖昧になってしまう。
「そうだな……最近、海の孤島を転移者が占拠したって話なんだが」
「孤島?」
「あぁ。船で一日くらいの割りと近い場所だ」
船で一日って近い方なんだ。
「元々、魔物達の棲み家だったんだ。それ以来、魔物の襲撃が無くなったな」
それは良い事だな。
その転移者に会ってみたい気がする。
「もう一つ教えて欲しいのですが、ニカの港が封鎖されている理由って知ってます?」
「海上から魔物の襲撃が有るとかで封鎖している様だ。シシーからの船も、途中までしか行かない事になっているぞ」
「そうですか……あ、あともう一つ! 世界の歪みについて何か知りませんか?」
「すまないが、知らないな……」
「そうですよね……ありがとうございました……」
「あぁ」
どちらにしても海か。
この後、色々聞き込んだが、大した情報は得られなかった。
魔刻の腕輪を見ると、五時五十五分……げっ、早く店に戻ろう。
店に戻ると、レティシアだけ待機していた。
「ごめん。遅くなって……」
「え? あぁそうですか?」
ん? 何か反応が変だな。
「私は時間が分からないので……」
あ! そうか、時計は俺しか持ってないんだ。
「レティシアは、どうやって時間を?」
「三時間と仰ってましたので、何となくの感覚ですわ」
「それは……ごめん」
「いえ、お陰で蓮斗さんと二人きりに……」
「儂もおるが?」
「はっ…………ちっ……」
「小娘! 今、舌打ちしたの!?」
「何の事かしら!?」
放って置こう。ヴァージュは大丈夫かな?
お店でオレンジジュースの様な物を飲みながら待っていたが、七時になっても戻って来ない。
「ヴァージュは大丈夫かな?」
「ちょっと遅いですわね……」
俺達はヴァージュを待ち続けた。
今度からは時間に気を付けよう。
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