27)小麦粉と塩と水
んー! 天気良いし、気持ちの良い朝だ!
昨日の惨劇が無ければね……。
さて、気を取り直して、本日のログインボーナスは?
〔日課特典:収納魔袋(大)〕
〔収納魔袋(大)を獲得しました〕
目の前に、バックパックの様な物が現れた。
やった! これで調理器具の分、軽くなる!
あとは、日課のステータス確認っと……。
〔レベル:21〕
〔ギルドレベル:5〕
〔能力値:一部閲覧権限がありません〕
〔H P:797〕
〔M P: 41〕
〔攻撃力:186〕
〔防御力:156(+10)〕
〔魔 法:なし〕
〔法 力:なし〕
〔スキル:知識剣との絆〕
〔スキル:罪悪感緩和〕
〔スキル:パリイ=LV6〕
〔スキル:看破術=LV2〕
〔スキル:鑑定術=LV1〕
〔スキル:縮地術=LV3〕
〔熟練度:剣技=LV6〕
えぇ! 何でこんなにレベルアップしてんの!?
良い事なんだけど、意味が分からんわ。
あ、でもスキルは……縮地術だけか。
一応、レティシアを見ても、レベルは変わって無かった。
やはり、転移者の特権なのかな?
「う……うぅ……お、おは……よう……ございます……蓮斗さん……」
「大丈夫?」
「少し、頭が痛いです……」
「だらしない小娘じゃの」
「あなたは、剣だからですわ! 痛たた……」
二日酔いって、大変そうだな。
「今、朝食を作るから、少し待っててね?」
「はい……有り難うござい……痛っ……」
…………さあ、作るか。
先ず、魚の乾物……本当は鰹節が良かったけど仕方がない。あとは……。
「あら……いい香りですわ……」
「出来たよ」
「これは何ですの? 薄いスープの中に、白い……紐?」
「紐みたいのは、小麦粉を塩水で練って作るんだ」
「粉が紐に……何と言うお料理ですの?」
「これは、うどんって言うんだ。ま、食べてみてよ」
そう言って、俺は木製のスプーンとフォークを渡した。
「美味しい! しかも優しい味……二日酔いには最適ですわ!」
そうなんだ……。
「我慢できぬわ!」
あら、朝から天使ちゃん降臨! 急いでクリスの分も作って渡す。
「これは旨いの! やるのう蓮斗!」
そう? えへへ。
クリスは食べ終わると満足して剣に戻り、レティシアも随分と回復した様だ。
俺の料理には、回復効果が! そんな訳無いか。
何はともあれ、良かった良かった。
「蓮斗さん、よくこれだけの物を作れましたね」
「親の不在が多かったから、よく自炊してたんだよね」
「流石ですわ!」
「ありがと!」
さ、片付けて出発だ!
「蓮斗さん、荷物が減ってません?」
「あぁ、実は…………」
自分が背負っているのが、魔袋だと説明する。ログインボーナスの話に関しては、ピンときてない様だったけどね。
「儂からも質問なんじゃが」
「なに?」
「拳法とは何じゃ?」
あー……忘れてた。上手く説明出来たか分からないけど、何となくで話してみた。
「空手の一種かの?」
あ、その言葉は有るんだ。
「そんな感じ。動きが違うね」
「ふむ……」
この世界の空手と、俺の世界の空手が一緒か分からんけどね。
こんな、他愛もない会話をしながら、ターゴフの街に向かい歩いていく。
その後、数日何も起こらず進む事が出来た。
魔物にも遭わず、順調過ぎる感じだ。
何か起きたと言えば、毎晩、クリスとレティシアとの小競り合いくらいか。
その間のログインボーナスも、パッとした物も無く、主に消耗品ばかり……調味料の日もあったくらいだ。
街まであと少し、今日は生憎の雨だ。
俺達は木の下で、絶賛雨宿り中だ。
「止みませんわね……」
「そうじゃの……」
雨の日は、気が滅入る……傘が欲しいな。
特にする事も無く、景色を眺めるだけ……暇だな……ん?
緑しか見えないこの森の中に、一軒の小屋を見つけた。
「あれ……小屋だよね?」
「小屋ですわね……」
「小屋じゃの……」
おいおい皆さん、気が抜け過ぎてませんか?
「行ってみない?」
「そうですわね……」
「そうじゃの……」
おいっ! ちょっとイラついたので、早歩きで小屋に向かう。
「扉か……」
「扉ですわね……」
「扉じゃな……」
もういいよ……。
扉をノックしてみたが……返事は無い。
ノブに手を掛け、回してみると……開いた!
「開いちゃった……」
「入ってみます?」
「良いのかな?」
「少しだけ覗くなら問題無いじゃろ?」
ゆっくり扉を開け、中に入ってみる……前の世界では、絶対出来ないな。
小屋の中は家具の一つも無く、異様な雰囲気だった。一つを除いて。
「蓮斗さん、あれ……」
「うん……」
部屋の床の四つ角には、何やら人形の様な物が置かれていた。
「あの置物、何か嫌な気配がしますわ……」
何だろう……一つは虎だ。
「レティシア、そっちは何の置物?」
「ドラゴンと、バドランっぽい物ですわ」
バドラン? あ、この前の……鶏鍋の肉か。
……ドラゴン、鶏肉……じゃなくて鳥、虎……ん? これって、まさか!
「やっぱり、亀だ」
「亀って、なんですの?」
「元にいた世界に、四方の聖獣みたいのがあって、それと同じだなぁと」
「そうなんですね! 流石、蓮斗さん、博識ですわ!」
「え? そうかなー?」
「蓮斗、鼻の下が伸びておるぞ」
おっと、いけない。クリスちゃんチェックに気を付けよう。
その時だった。四方の置物が光り輝く。
「え!?」
小屋の中は激しい光りに包まれ、俺達は気を失ってしまった。
イメージは無かったけど、冒険には傘が必要だね。
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