21)凛として
(くそ! どうすれば!?)
自分が不安ともに焦っているのが分かる。
「蓮斗! 残りのHPは幾つじゃ!」
(HP4130……)
「……恐らく、魔法属性のダメージしか与えてないの。このまま戦っておれば、いつかは倒せるじゃろうが……」
(憑依の時間切れ、か……)
「そうじゃ……」
しかし、クリスは本当に凄い。あれだけの攻撃を全て回避し、自分の攻撃は確実に当てている。物理ダメージが入っていたら、間違いなく倒せているだろう。
そんな時だった。妙な音が聞こえる。
パキパキパキ…………
(何の音だ?)
「グググッ! グギャー!」
ザヴァキランは苦しんでいる様だった。
「あれを見るのじゃ!」
クリスと同じ視界の中には、ザヴァキランの足が凍り付いている様子が見えた。
「行っけー!!」
何処からか声が聞こえた。
声の主を探していると、空に大きい氷柱が見えた。その氷柱は、動けないザヴァキランの額に向かって飛んで行った。
氷柱が額に届くと、まるでガラスの様に額に有った魔石は砕け散った。
クリスはそれを見逃さず、攻撃に転じた。
クリスの一撃一撃が、ザヴァキランを苦痛の顔に歪める。
(効いてる!)
「これで最後じゃ!」
クリスの渾身の一撃が、ザヴァキランの止めを刺す。
耳をつんざく程の悲鳴……ザヴァキランはその場に横倒れになった。
「解除する……」
「か、勝った……お疲れ様、クリス」
「うむ……」
レティシアの方を見ると、苦悶の表情の中にも微かに笑みを浮かべているのが分かる。
「剣の転移者も、まだまだだねー!」
誰だ? 声の聞こえる方を見ると、長い棒状の物を持った一人の女の子が立っていた。
「君が氷の魔法を?」
「そうだよー」
「礼を言うよ、どうもありがとう」
「いいよ、いいよー! 意外と律儀だねー」
随分とノリの軽い女の子だな。
「私からもお礼を。助けて頂き、有難う御座います」
レティシアも透かさず礼を言う。
「いいってばー! それにしても、お胸の大きいお姉ちゃんだね! 羨ましいよ!」
「きゃっ!」
ブレスに依って焼け落ちた服は、辛うじて胸の先、先…………ぶっ……。
「鼻血が出ておるぞ。変態蓮斗」
「あらクリス、殿方が女性の身体に興味が有るのは当然ですわ! 蓮斗さんなら私も構いませんわ!」
え? 今さらっと凄い事言った?
「あははー! 剣の転移者の連れは面白いね!」
「ところで君は?」
話が脱線していたので、戻してみました。
「僕は薙刀の転移者、凛だよー! そして薙刀の……」
「インテリジェンスパルチザンのロンドだ」
「転移者! え、しかも日本人?」
「そうだよー! 君もかい?」
「うん、俺は蓮斗。あとインテリジェンスソードのクリス。で、彼女がレティシア」
「ふーん、よろしくねー」
凛と名乗る転移者は、俺をまじまじと観察した。
「まだレベルが低いねー! 次に会う時までには上がってると良いねー。生きてたら、だけどねー」
「頑張るわ……」
「じゃあ蓮斗君、僕達はまだ修行中だからもう行くね!」
「あ……」
そう言い捨てると、早々に行ってしまった。
一応、看破していたので結果を見ておこう。
〔名前:凛 種族:人〕
〔称号:転移せし者〕
〔レベル:27〕
〔ギルドレベル:6〕
〔能力値:一部閲覧権限がありません〕
〔H P:757〕
……言うだけはある、レベルが高い。
あの転移者、将来は敵か味方か……味方になる事を祈るばかりだ。
それはさて置き、俺達はドロップアイテムを探したのだが…………無い。
「やられたのう」
「やっぱり?」
「薙刀の転移者ですわね」
流石にドロップ無しって事は……無いよね?
無い物はしょうがない。
一応、倒した証しとして、鱗を一枚切り離……固っ! 十分程掛けて何とか剥いだ。
「じゃあ帰るか」
「うむ」
「そうですわね」
でもレティシアの格好が……そういや……。
「レティシア! 未鑑定品だけど、これを使ってくれ」
俺は以前手に入れた、マント(?)をレティシアに渡した。
「ありがとう、蓮斗さん! 例え呪われていても大切に使いますわ!」
呪われてって……。
「さ、日が暮れる前に町まで戻ろう!」
「うむ!」
「はい!」
俺達は急いで町を目指す、特に俺が。また野営とか洒落にならない。
日が暮れたと同時に、シウオの町に戻って来れた。
つ、疲れた……。
「このまま、ギルド会館に向かいましょう」
「レティシア、着替えてからの方が?」
「蓮斗さん、私の事を気遣って頂けるなんて……そうですわね! 着替えてきますわ!」
着替え終わるまで、会館の前で待つ事になったのだが……。
「良かったの蓮斗。好いてくれる人が出来て」
「え……でも、俺は……」
「お待たせしましたわ!」
タイミング悪いな……つか、着替えるの早くない!? 家は近いのかな?
「じゃあ行こう」
俺達はギルド会館に入って行った。
僕っ子って本当にいるのか……。
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