16)決着
「げほっ、げほっ……」
「しっかりしろ、蓮斗!」
何とか生きていた。HPは残り一割程。最近もあったな、ギリギリの戦い。
「もう無理をしなくて良い、死んでもお主を恨む事はないぞ……」
あれ……クリス、ちょっと泣きそう……。
「クリス、ちょっと良いかな?」
「何じゃ……?」
「実は…………」
「なんじゃと!」
「本当にごめんね」
「まぁ良いじゃろう」
ルームルはニヤニヤし、こちらを眺めながら言った。
「最後のお別れは済んだかい? そろそろ終わりにするよー」
ルームルは笑いながら、ゆっくりと近づいてくる。
「こいっ! クリス!」
「憑依!」
(頼んだよ、クリス)
クリスはルームルの怒涛の攻撃を、全て剣で受け流して見せた。
「お前、急に動きが変わった。面白くない」
「そうじゃろうな」
「口調も変わった! お前、誰だ!?」
「儂は……儂じゃ!」
クリスの剣がルームルの胸部を斬り付ける寸前、腕を使い凌がれてしまった。
「ぐっ……お前!」
(クリス優勢だ!)
しかし、その後は一進一退、どちらもダメージを微妙にしか与えず、体力だけが削られていく感じだ。
(ん? この状況でスキルは使えるのか? 試しに看破だ)
〔看破に成功しました〕
〔名前:ルームル 種族:魔族〕
〔称号:谷の主〕
〔レベル:28〕
〔H P:370〕
〔その他:閲覧権限がありません〕
(見れた! HPがあと少しになってる! でもクリスの状態が分からない……)
「儂も憑依の力が弱まっておる」
(あ、聞こえてたのね……じゃあ…………)
「良かろう! 最後の攻撃じゃ!」
クリスはルームルに向かい、一直線に走り出した。
そして、真正面で両手を振り被り、頭上から振り下ろすように攻撃する。
「お前、血迷ったか! はははっ!」
ルームルに腕を掴まれ、攻撃を阻まれてしまったのだが……。
「お、お前! 何だこれは!?」
「これは、刃こぼれした短剣だ!」
「なっ……あのインテリジェンスソードは……?」
ルームルの頭上から声が聞こえる。
「儂ならここじゃー!」
美少女になったクリスが、ルームルの頭上に渾身の蹴りをお見舞いした。
「がはっ…………誰だよ、お前…………」
そう言うとルームルはその場に倒れ、灰の様に風化して消え去ってしまった。
「か、勝った!!」
「勝ったのう!」
二人で抱き合い、めっちゃ喜んだ! 別な意味で俺は喜んだ! えへへ……。
「今回のは流石に……儂も駄目じゃと……」
そこにはいつもと違う、弱気なクリスがいた……不謹慎かも知れないけど……可愛い!
「勝てて良かったね……」
「じゃの…………じゃが……」
ん? あれ? クリスの顔が……怒ってる?
「そもそも、スキルが使える事を儂に言っておれば!」
「ご、ごめん」
「それに看破とは何じゃ! 聞いておらんぞ!」
えー……隠し事に怒っているのか?
あれ? クリス、泣いてる?
「クリス、涙が……」
「目に塵が入っただけじゃ!」
凄いテンプレ……そう言う女の子っぽい一面、悪くないぜ! っと心の中で叫んでおこう。
さて、ルームルが消滅した場所には、手袋と黒い石、そして、マントの様な物が落ちていた。
〔手袋(?)を獲得しました〕
〔黒い石(?)を獲得しました〕
〔マント(?)を獲得しました〕
うん、そのまんまだ。鑑定は後にして先ず帰ろう。
出口……扉がちゃんと有る。
「よし、帰ろう!」
クリスは剣に戻った。どうやら時間内であれば、自由に変身出来るらしい。今日の残り時間を夕食に充てたい、との事だ。実に酒の好きなクリスらしい。
滝まで戻って来たのだが……。
「これ、どうやって降りれば……」
「むう……濡れたくは無いが、滝壺に落ちるしか無かろう……不本意じゃが」
やっぱり? まぁ馬鹿みたいに高くは無いんですけどね。意を決して滝壺に向かい飛び込んだ。
「げほっ……意外と深かったね……」
「蓮斗! 早う乾かすのじゃ!」
軽く日向ぼっこ……夕日になってきたけどね。
ある程度乾いたところで、シウオの町まで戻る事にする。
ギルド会館へ向かい、報告書を殴り書きで作成して事務員に渡す。
事務員は報告書を読むと、何回も頭を下げ謝罪してきた。まぁ……生きて帰れたから良いんだけどね。
「では、こちらの報酬をお受け取り下さい」
おぉ! 初報酬! 銅貨五枚……色は付けてくれないのね。
色々あって大変だっけど、初仕事完遂だ!
「初仕事、お疲れ様でした。明日、検査がございますので、会館までご足労くださると。当日、色々と説明させて頂きます」
検査? 何の? まぁいいか。
「わかりました」
「では、宜しくお願い致します」
ギルドの受付を後にした。
向かうはレストラン! いや、酒場か? 食べれれば何でも良いや。
「さぁ、祝杯じゃ!」
あらクリスちゃん、やる気満々だね!
その日はクリスが剣に戻るまで、ひたすら付き合った。
クリスの本気の蹴りって、HP数百削るんだな……。
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