116)その席は誰の物?
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日が暮れそうになった時、サーシャが口を開いた。
「剣様、着きましたよ!」
「あ、あぁ……」
「ここですの?」
「これ廃墟じゃない? ウチ入りたくなーい」
確かに廃墟の様なボロボロの建物だが、壁や屋根は健在だ。
「じゃあ、リアーナは馬車で寝泊まりするの?」
「蓮斗くんの意地悪!」
何故か怒られた。自分で入りたくないって言ったじゃん。
「皆様、中へ入りましょう!」
サーシャがリズムを刻むように扉をノックすると、別なリズムでノックが帰ってきた。
「なにこれ?」
「しっ! 剣様、静かに……」
「わ、悪い……」
もう一度サーシャがノックすると、ギィと音を立てながら扉が開く。
「お待ちしておりました、ヤーイの方々」
中からは俺達と同じ黒いローブを身に纏った人が迎えに出てきた。
「どうぞ此方へ」
「はい! では剣様から中へ」
サーシャに言われるがまま、恐る恐る中に入ると……意外と綺麗! 寧ろ豪華じゃない?
「ウチ、気に入ったよ!」
「先程まで文句を言っとったのは、何処の誰じゃろうな?」
「うぅ……ごめんなさい」
クリスの一言がリアーナをへこませる。
「剣様、ムタイ帝国側は遅れてくるとの事です。来るまで適当に寛いでください」
一旦休憩、それにしても広い部屋だな。
豪華なソファーや椅子がバラバラに置かれている。
「わーい! ソファーだ! ここウチの陣地ね!」
「陣地って……そのソファー、四人掛け用じゃん」
「ウチは広い方が好きなの!」
「さ、さいですか……」
俺が呆れていると影からヴァージュが飛び出し、リアーナのいるソファーへと向かう。
「あたいもソコが良いなー! 一緒に座ろー!」
「えぇ……」
明らかに嫌そうなリアーナだが……。
「一緒に、す・わ・ろ!」
お願いと言うより、脅しに見えるけども。
「うぅ……」
「リーちゃん?」
「わ、分かったわよ! ヴァージュさんと座るわ!」
ヴァージュの脅しに屈し、ソファーは二人で占拠する事になった。
「蓮斗さん、私達も座りましょう。さぁ此方へ」
レティシアの横には少し大きめの椅子が置いてある。
「レティシア、それ一人用じゃ?」
「あ、いえ、蓮斗さんがお掛けになってください」
「あ、そう? 悪いね」
俺が椅子に座ると、何もなかったかの様に俺の膝の上にレティシアが座る。
「えっと、あの、レティシアさん?」
「はい?」
はい? じゃないよ! 何だよもう。
「レーちゃんズルーい! あたいもそっちがいいー!」
「先手必勝ですわ!」
レティシアは器用に身体を九十度回転させ、俺の首に手を掛ける。座りながらお姫様抱っこをしている感じだ。
「ちょっ、レティシア!」
「レーちゃん!」
「うわぁ、レティシアちゃん大胆だね……」
「この発情小娘が!」
突然、クリスが人化してレティシアを椅子から落としてしまった。
代わりにクリスが俺の膝の上へ。
「痛っ……何をするんですの!」
「ここは……」
「ここは何ですの!?」
「わ、儂の席じゃ!」
全員ポカンとして沈黙が続く。そして、俺の膝の上にはクリスが……えへへ……じゃなくってどう言う事だ?
「蓮斗様、顔がやらしいー!」
「本当だ、蓮斗くんも意外と……」
「意外と何だよ?」
「蓮斗さん、私じゃ駄目なんですか!?」
「いや、そう言う事じゃなくって……」
何だこのカオスな状況は!?
何か言い訳を……あれ? 俺が悪いのか?
兎に角、何か言わないと!
「ク、クリスは相棒だから!」
我ながら失敗だ……そんなんで納得する訳無いじゃん。
「し、仕方有りませんわね……」
「クーちゃんには敵わないなー」
「流石、クリスさんだね……」
え? 皆、納得してる?
「剣様も隅に置けませんねー」
サーシャだけは状況を把握したかの様にニヤニヤと笑っていたが……意味がわからん。
壮絶な椅子取りゲームが終わる頃、サーシャから通達が。
「剣様、帝国の方々が来ましたよ!」
緊張する、どんな堅物が来るのやら。
やっぱり敬語を使った方が良いのかな?
「クリス様は剣に戻られた方が良いのでは?」
「そうじゃな、手の内を明かす必要は無いのう」
サーシャの助言をクリスは受け入れ、剣の姿へと戻った。
どうでも良い事だけど、俺が剣様って言うより、クリスの方が剣様じゃないか? まぁ良いけど。
「お待たせ致しました」
黒いローブの男が礼をしながら部屋へと入ってくる。
さぁ、どんな奴等が来るのやら。
「おっまたせー! 遅くなってゴメンねー!」
はぁ? 全員ポカンと口が開いてしまった。
「およ? 君らがヤーイ国の使者?」
黒いローブを纏い、フードを外している小柄な女の子が凄いノリで話し掛けてきた。
「そうだけど?」
「意外と若いんだね!」
「お互い様だと思うけど?」
「俺はこう見えて二十歳だよ? 自己紹介をするね、俺はラージだよ! 宜しく!」
お、俺? ラージ? 男?
「不思議そうな顔をしているね? 良く言われるよ、名前負けしてるってね」
この女の子か男の子か分からん人と、今後の打ち合わせをする事になった。
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