109)国境
お越し頂き、有り難う御座います!
一話二千文字程度で短いです。
是非、立ち読みしていってください!
早朝、城門前に到着すると側近連中と馬車の姿があった。
「転移者殿、参られたか!」
「あぁ」
「この者が道中付き添う事になる、アレクサンドラだ」
「転移者様! アレクサンドラです! 宜しくお願いします! サーシャとお呼びくださいっ!」
サーシャ? アレクサンドラがなんでサーシャなんだ? ま、いいか。
「俺は蓮斗。宜しくな、サーシャ」
サーシャは真っ黒なローブを着こみ、元気一杯に挨拶してきた。
まさか女の子の御者とは……女性率高いなぁ。
それぞれの自己紹介を済ませ、座席位置で揉めながらも全員馬車に乗り込む。
取り敢えず俺は手綱の近くに陣取った。
「では、行ってくるよ」
「転移者殿達に御加護を!」
祈祷らしき事をしてくれる人達を眺めながら出発、ヴァージュとリアーナは律儀に手を振って見せていた。
「皆様! 帝国領に入る前に御召しになって欲しい物が有りまーす!」
出発早々、サーシャが声を上げる。召すって事は着るって事か?
「何を着るの?」
「そちらに箱に入っておりますので、皆様方で選んで貰えますかー?」
言われた通り箱を開けて中を覗く。サーシャが着ているローブと同じ物だ。
「このローブ?」
「正解でーす!」
「何の為に?」
「二つの意味が有りまして、一つは帝国の一般民は外出時にローブを着用する規則が有りますー」
サウジアラビアの女の人もそんな感じだった様な……?
「成る程。で、もう一つは?」
「魔術結社も同じ格好なのでー」
「ふーん……いや、待てよ? んじゃ家の外は皆ローブって事?」
「そうですー」
一般人か魔術結社の連中か、全然見分けが付かないって事か。
「それは厄介ですわね」
「流石に……発情小娘の言う通りじゃ」
「なっ……発情は止めてくださいまし!」
「うむ、そうじゃな。妄想小娘じゃったか?」
「くっ!」
うわ、始まったな……。
「リアーナはローブの上にローブだね」
「え? ウチも着るの?」
「主、当然だと思うが?」
「じゃ、ラーズもね」
「えぇ……」
「ラーズ、何かゴメン」
「いや、蓮斗殿のせいでは無い……」
「何? ウチのせいとかって言うの!?」
「いや、その、主のせいって訳では……」
こちらも争いに発展しそうになったので、フェードアウトする事にした。
「ヴァージュもローブを着てから影に潜ってね」
「あいあーい!」
ヴァージュだけは平和だな。
「転移者様とお連れの方々は面白いですねー」
「面白いってのは否定しないけど……転移者って呼び方、二人いるから変えない?」
「あ、そうですね! では、剣様と杖様でー」
「えぇ……ま、いいか」
普通に呼びたくないのかな? 様くらい止めれば良いのに。さん付けだと、剣さん、杖さんか……やっぱ様で良いか。
このまま数時間馬車に揺られて進むと、前方に何かが見えてくる。
「あの建物は何ですの?」
「あれは国境門ですー!」
「国境門? あそこから帝国領って事か?」
「いいえー。あの門を越えると中立地域になりますー」
中立地域? 何処にも属さない地域?
「つまり無法地帯ですー」
「サラッと恐ろしい事を言うんだな」
「襲撃の可能性が有るので気を付けてくださーい!」
マジかよ……と思っている内に中立地域に入った。
「蓮斗様!」
「何だ!? 何か居たか!?」
「お腹空いたー!」
「ウチもー!」
「へ……」
襲撃かと思ったわ。
「じゃ、この辺でお昼にしようか?」
「では馬車を停めますねー」
「頼むよ」
馬車から降り、簡易テーブルと椅子を設置。
「食べてる時に襲撃されないかな?」
「安心せい。儂とラーズが監視しておるのじゃ」
「助かるよ、クリス、ラーズ」
「問題無いのじゃ」
「任せるのだ」
魔袋の中から干し肉とパンを取り出す。
「サーシャは?」
「自分のは有りますのでー」
「分かったよ。困ったら言ってね」
「助かりますー」
サーシャは結構大きめ鞄を持参しており、その中身は殆ど食料らしい。
「蓮斗くーん! ウチにもパンちょうだーい」
「ほい」
「ありー」
是非、リアーナにも見習ってもらいたいな。
「何か美味しくないね」
「リアーナ……帝国に入ったら食べ物が普通に買えるか分からないし、節約しないで食べ物が尽きたら困るでしょ?」
「あ、そうだね。ウチはてっきりケチってるのかと思った」
「おい……」
俺を何だと思っているのやら。
「蓮斗、気を付けるのじゃ」
「敵か?」
「分からないが、四人……いや、五人か? 主!」
「今、食事中……」
「主……」
「じょ、冗談よ!」
敵か分からんが五人か……。
「レティシア、リアーナは警戒、ヴァージュは待機で」
「分かりましたわ!」
「あいあいー!」
「もぐもぐ……んぐ! オーケー!」
し、締まらないな。
「あー、ありゃ駄目だ」
「見るからに盗賊の類いですわね」
五人組のパーティは俺達を発見するなり、ニヤニヤと笑いながら走って近付いてきた。
「女だ! しかも上玉だぞ!」
「俺達ツイてるな!」
はぁ……敵確定。
こうして変な奴らに絡まれてしまった。
無法地帯か。
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