104)試練の行方
PV20000感謝!
今後とも宜しくお願い致します。
俺の左腕が……痛い、痛い、痛い!
「ぐぁぁぁ!」
「気をしっかり保つのじゃ!」
あっという間の出来事だった。
侍が空間を斬る素振りを見せたかと思うと、刀から閃光が走り俺の右腕を切り落としてしまった。
「次が来るのじゃ! 構えるのじゃ!」
微かに聞こえるクリスの声、んな事言ったって痛くて堪らない。
侍は一気に間を詰めて俺の前に現れ、刀を上段に構えて振り下ろす。
「ひぃっ……」
殺られた────
「蓮斗様! 良く見て!」
ヴァージュの叫び声が聞こえ、侍を見る……何だろ、振り下ろす刀が遅く見える?
我に返り、俺は横に移動して回避する。
「なんじゃ!?」
「凄いですわ!」
何が起きた? 侍の動きは異常なまでのスピードだった筈?
「蓮斗様……早く倒して……」
ヴァージュの力の無い声……俺は片腕で有りったけの力を振り絞って攻撃を繰り出す。
不思議と侍の動きは速くは感じない。
行けるのか? いや、行くしかない!
全ての攻撃を躱して攻撃を当てる。
繰り返しているうちに、侍の頭上の数字は『零』になった。
何かが起きる……と思ったのだが、予想に反して侍は消滅してしまった。
「おめでとう御座います」
突然、代行者が現れて拍手をしている。
「今回の相手は、不動侍と加速侍でした」
そのまんまじゃん……つか腕が痛いし気を失いそうだ。
「今回の試練は完遂となります。報酬として粗品を贈呈致します。今回の粗品もランダムになりますので、後程ご確認下さい。では、またのご利用をお待ちしております」
言いたい事を言って代行者は消え、城内の庭園に戻ってきた。
「蓮斗さんの腕が……うっうっうっ……」
「蓮斗くん、早くコレ飲んで!」
ひたすら回復ポーションを飲む。
腕が切り落とされたせいか、常にHPが徐々に減っていく。まるで毒の沼地を歩いている気分だ。
切り落とされた腕を拾い、切断部に当てて回復術を発動させるが元には戻らない。
自分の体調が万全なら出来たかも知れない。
はぁ……これから片腕で人生を送るのか……。
元の世界でも同じ様な境遇の人を見る事は有った。可哀想だなと思っても、何処か自分には関係が無いと思っていた。
人はいつ何が起こるか分からない。
自分に降り掛かって始めて知る事が出来る。
もし、元の世界に戻れたら、色々と考え方を改めなきゃいけないな……。
「私が一生お世話致しますわ!」
「え、いや……」
「あたいも!」
「ウ、ウチも仕方ないから助けてあげる!」
皆、優しいね……。
「待つのじゃ!」
「え?」
「それを試してみるのじゃ」
「それ?」
「その腕の盾の様な物じゃ」
「あ……アームシールドアーマーか!」
こいつの特殊能力は、一度だけ欠損した身体を元に戻す……だったな。
「でもどうやって使うんだコレ……」
「蓮斗殿、元に戻った状態を想像して念じるんだ」
「うん……」
一瞬、閃光を放ったかと思うと、アームシールドアーマーは砕け散ってしまった。
「う、腕が!」
「戻ったのう!」
「蓮斗さん! 良かったですわ……うぅ……」
見事に腕は元の状態に戻った。
魔具店、侮れないな! 本当に良かった……。
「ところで蓮斗、急に速度が上がったのは何故じゃ?」
「え……?」
「ウチもビックリした!」
「あの一振りを躱した時は感動しましたわ!」
「ちょっ、ちょっと待って! だって相手のスピードが遅くなってたじゃん?」
「何を言っとるのじゃ、蓮斗の速度が異常に早くなっておったぞ?」
え? 何で?
「蓮斗様、コレだよー」
ヴァージュは左手の薬指を見せる。
「薬指?」
「ここに有った婚約指輪だよー! 蓮斗様のも無くなったけど……」
「婚約……あ、双走力の指輪か!」
能力は装備者同士の敏捷力を振り分ける、ヴァージュの敏捷力を俺に振ったって事か。
「俺のスピードが上がって、侍が遅く見えたのは指輪のお陰か」
「新しい婚約指輪買ってねー!」
「え、あ、うん……指輪ね?」
「私にも不測の事態に備えて、指輪を買って頂けませんか?」
「え……じゃ、じゃあウチも!」
「指輪が指定なのは置いといて……今回はアイテムに助けられたからね、魔具店で皆の分を調達しよっか」
生きて帰って来れた、それだけで十分……いや、五体満足で帰って来れたのは嬉しい。
今度から試練の間に行く時は、準備を怠らない様にしないと危ないな。
一回死んでるんだから、もっと早く気付けって話だけど。
「まだお昼には時間が有るね」
リアーナがお昼を心配しだしてる……お腹が空いてるのかな?
「リアーナ、ひょっとしてお腹が空い──」
ボカッと言う音と共に頭に激痛が走る。
「空いてないよ!」
痛っ、本当かよ……。
「あたい、お腹空いたー!」
ヴァージュは正直だな。試練の間で経過した時間は、この世界に反映されない。
小屋自体が見えなかった兵士からすると、俺達が一瞬で消えて直ぐ現れたって感じに見えたと思う。
この世界の時間は経過していないが、俺達は時間を費やしているのだから空腹でも仕方がないって事だ。
「軽く何か食べようか?」
「うん、ウチもお腹空いてきた!」
……嘘だ、元々空いてたな。
「レティシアは?」
「昼食も御座いますし、軽くでしたら……」
「んじゃ……軽く、お菓子でも」
「はい!」
城内でお菓子を提供してくれる所を探し彷徨う事になる。
アイテムは重要だね。
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