101)不動なる侍
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余計な事をして相手を二刀流にしてしまった。
「失敗したかなぁ……」
「突き攻撃でしたら当たりそうですわね」
「突きか……」
確かにそうだけど突き武器じゃないし。
「ウチが加わって四人で行く?」
「それも有りだな……他にも良い手は無いかな?」
「この状態で儂が魔法を叩き込むのはどうじゃろ? 光を削ぐ事くらいは出来るかも知れんのじゃ」
「反撃も無さそうだし……先にそれをやってみようか?」
全員、賛成って事になった。
「うむ。我と契約せし炎の精よ。今再び我の元にて、その姿を現し我の力となれ……我が剣に宿りて、その業火で敵を討ち滅ぼせ! 業火の輪!」
火炎の輪が侍を包み込む。激しい炎の隙間から、侍が耐え様とする素振りがチラチラと見えるが……叫び声は全く聞こえない。
「これは、声を殺しているのか? それとも声を出せないのか?」
「口は開いてますわね」
やがて炎は収まり、侍は何も無かったかの様に刀を構えていたのだが……。
「光が少し消えた!」
「短い武器を納めましたわ!」
ラッキー! でも直ぐに抜刀するから気を付けよう。
「蓮斗、あれは何じゃ?」
「ん……?」
侍の頭上には『拾』と言う赤い文字が浮かんでいた。
「え……何を?」
「何じゃろな?」
「サッパリ分かりませんわ……」
「何にも落ちて無いよー!」
「ウチ、分かったかも知れない!」
「マジで? リアーナ?」
腕を組みながら鼻息を荒くさせ、ゆっくりと説明を始める。
「あれは片方の武器が無くなったからだね!」
「ん? 意味が分からないんだけど?」
「短い剣を落としたからだよ!」
あれ……もしかして。
「リアーナ……一応聞くけど、あの文字はなんて読む?」
「捨てる!」
全員、口をポカンと開けて黙ってしまった。
「リアーナ、あれは『捨てる』じゃなくて『拾う』だよ……」
「え……真逆……ウ、ウチ……恥ずかしい……」
どんなに時が経っても漢字ってのは難しいって事か。何故日本語で漢字なのかは気にしない事にする。
「ま、まぁ良く有る事だし、気にしないで」
「うぅ……」
それよりも意味が分からないな、せめてHPが見えれば……。
「魔法が効くみたいだし、クリスの重力魔法で動きを封じて攻撃とか?」
「良いかも知れませんわ!」
「あたいも賛成ー!」
リアーナは……暫く駄目だな。
「クリス、良いかな?」
「そうじゃの、次の敵に魔法が効くとは限らぬし、出し惜しみする必要は無いのじゃ」
「じゃあ頼むよ。レティシア、ヴァージュ、準備は良い?」
「はい!」
「あいあいさー!」
「行くのじゃ! 大地と大気に彷徨う精霊達よ、我が敵になる者に無慈悲な枷を与えん! 重圧の気!」
クリスの魔法に依って侍は片膝をつく。
「喰らえ!」
三人の攻撃は俺の剣を除いて命中。俺の剣だけは刀に阻まれてしまった。
「連続攻撃じゃ!」
まだ膝をついたままの侍に対し、俺達は容赦なく剣擊を浴びせる。
「離脱じゃ!」
離れると同時に侍は立ち上がって構える。
「ん……参?」
これは……もしかして。
「ふふーん、ウチ分かったよ!」
俺も見当はついているのだけど……一応、聞こうか。
「アレはカウントダウンだね!」
「やっぱりか……」
「え、蓮斗くん分かってたの? ま、まさか天才……」
「いやいや、そうかなぁって思っただけ。俺達が攻撃している間、ずっと見てたのかな?」
「うん。そしたら、玖、捌、漆、陸、伍、肆って昔の漢字の数字で」
「大字って奴か」
「蓮斗くんって、意外と物知りね」
「意外ってのは余計だよ……」
しかし、カウントダウンは分かったけど、これが最後まで……つまり壱か零になると何が起きるのかが問題だな。
「アレが終わると倒れるか、とんでもないスキルを発動させるとか……」
「困りましたわね」
「ウ、ウチが防御魔法を一杯重ね掛けするとか?」
「リアーナ……」
「ご、ごめん……単純過ぎたね」
「いや、良いアイデアだね!」
「え……そ、そうでしょ!?」
どや顔で復活したリアーナが指図し始める。
「蓮斗くん、ヴァージュさん、レティシアちゃん、ここに固まってねー」
「うん……でも何で?」
「ウチの防御魔法は分散出来るの」
分散? どう言う事だ?
「例えばウチに防御魔法を掛けて、ラーズが人化してウチから離れても恩恵はそのまま」
「二人とも防御魔法が掛かったままって事?」
「正解!」
「て事は、俺達三人に掛けて離れ離れになっても……」
「効果はそのまま、お得でしょ?」
「お得だね! 一粒で二度美味しい的な?」
「「「……」」」
あ、あれ……。
「さ、頼むよリアーナ!」
「う、うん! 我が名はリアーナ、土の精霊達よ、我が力と共に彼の者を悪しき刃より守り給え!」
淡い青白い光が俺達の周りを囲った。
これがリアーナの対物理障壁らしい……壁と言うより衣の様だけど。
「あと三種類有るからそのままね!」
そ、そんなに有るの? 流石は杖の転移者。
防御魔法を四つ重ね掛け、再び侍に挑む事になる。
一粒で二度美味しいんだけどな……。
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