第80話 脱獄
ラウラ達はキルシュブリューテに侵入した。
門番には偽の身分証明書を提示して町の中に入りいろいろと調査をすると、イエルクが生きている事を知った。
「ラウラさん、どうしましょうか?」
「ほっとけば〜、自分で何とかするでしょ」
「そういう訳にはいきませんよ!聖女の事は後回しにして、イエルクさんを助ける方を優先した方がいいと思いますよ」
「え〜〜〜、興味ない!」
「そう言わず、あなたの『瞳』なら簡単に潜入出来るでしょう」
「まぁでも少し効果は薄れると思うよ。信用度によっても効果は変わるからね〜。………しゃーない!行きますか」
ラウラとイリスは夜を待ち、王宮の地下の牢屋に侵入する事にした。
日も経ったせいか、警備も少なく簡単に侵入する事が出来た。
牢屋の中ではイエルクが意識不明の振りをして眠り続けている。
「イエルクちゃ〜ん、朝ですよ〜」
警戒しながらもイエルクはゆっくり目を開けた。
「ラウラ、遅いぞ」
「いろいろあってね〜」
「なんだお前、片腕無いじゃないか!」
「まぁね〜」
「二人とも、とりあえず外に出ますよ」
「おー、イリスさんか。助かる」
イリスは右の手のひらに火の魔法を凝縮して牢屋の鍵を溶かした。
「イリスちゃん、相変わらず器用だよね〜」
「さぁ!行きましょう」
そして3人は一旦町の外へと逃げる事にした。
町から離れた森の中に入るとイエルクは今までの出来事を聞いてきた。
ラウラは面倒くさそうに手短に説明した。
「そうか、あの二人は死んだか。お前もその時に腕をヤラれたか。」
「イエルクならサクッと死んでたよ。運が良かったね〜」
若干イラッとしながらも確かにイエルクは幹部の中では一番弱いので何も言えなかった。
「イエルクはどうして捕まったのですか?」
「あ、ああ、ちょっと学生の女に負けた」
「女の子に〜〜〜ダッサ!」
ラウラは笑っているが気にせずにイエルクは説明する。
「あの女は強い!子供とは思えない。幹部達でも1対1は厳しいだろう?」
「少し気になりますね。そのラウラさんが言うツクヨミって子と、イエルクさんが言う女の子が」
「じゃあさ〜先に調べてみる?うちら顔バレだからイリスちゃんよろしく〜〜〜」
「はぁ〜、はい分かりました」
「イエルク待機ね〜、。私は聖女見てくるよ」
「ラウラさん、危険ですのであなたも待機して下さい」
「ラウラは俺が見ているからイリスさん、後は頼みます」
「はい、それでは行ってきます」
◆ ◆ ◆
王宮では明け方イエルクが脱獄した事に気づく。
第一騎士団が王宮の近辺を、第二騎士団は町の北側を、第三騎士団は東側、第四騎士団は南側、第五騎士団は西側を捜索する事になった。
騎士団長5人は国王の護衛をして、副団長に指揮を任せた。
「フランシスどう思う?」
「エリアスよ、たぶん今回の黒幕はイエルクとラウラだな」
「だろうな。ただ今回の脱走には何の準備もなく、簡単に侵入したように思う。他にも手練がいるとみて間違いない」
「ただ目的が分からないな。だから下手に動けないのが現実だ」
「その通りだ。もう町の外に逃げたかもしれないし、他の企みがあるかもしれないしな」
「だからこそお前やジョナサン、オットー、ダニエルが、王から離れる事が出来ないでいる」
「あぁ、しばらくはこの体制を崩す事は出来ないな」
「イエルクだけなら副団長が何人かでかかれば問題ないが他にもいたら…」
「考えても仕方がない!今は出来る事をしよう」
そして各団長達は国王の護衛を重視する事にした。




