第53話 恩賞
歩きながらツクヨミはメリナに3英雄の事を聞いた。
「所でメリナ、3英雄って何だ?」
「3英雄とは12年前の出来事なのですが、当時は今以上に内乱や戦争そして他の種族とも争いが絶えませんでした。その中にある組織がありました」
「ある組織?」
「はい、全ての種族が格差なく平等、そして平和を目的とした組織です。その組織は色々な土地に行き、小さな村や町を助けてきました」
「とても良い人達の集まりなのですね」
「そうですね。しかし戦争は終わらない!いくら小さな村や町を助けても結局は大きな国の行動1つでたくさんの人が死んでいきます。そしてその組織も二つに分かれました」
「2つに?」
「1つはこのまま目の前の守れる人達を守ろうとする人達、もう1つは全てを変えて1つにまとめあげようとする人達に分かれました。勿論、後者の方は簡単に言うとこの世界を一度滅ぼし、新たなる国作りをすると言う事です。」
「メリナさん、その後どうなったんですか?」
「世界が崩壊寸前まで追い込まれた所でもう一つの組織、前者の方が防ぎました。その時のリーダー達が3英雄になります。私が知っているのは3英雄がこの世界を救ったと言う話だけです」
するとフィオナ達も話す。
「ツクヨミ、この話を知らない人はほとんどいないわよ」
「そうよ、これから行く中立都市ブルーメはアレス様とヘスティア様が作られた国なの」
「へぇー、アレスさんとヘスティアさんてそんな凄い人だったのか」
「ツクヨミさんのお母様はその人たちをまとめてた方なのですよ」
「お母さんの事を褒められると嬉しいですね。兄さん」
「そうだな」
◆ ◆ ◆
王宮ではレオン国王がフランシスとオットーを呼んでいた。
「フランシス、オットー、呼び出してすまないな」
「レオン国王、何でしょうか」
「実は今回の功労者に恩賞を与えようと思う」
「功労者は?」
「功労者はヘンリー、フェリックス、エミール、フィオナ、エミリア、そしてツクヨミとサクヤの7名だ。どう思う?」
「同意します。恩賞とは?」
「国盛り上げると言う意味ではこの7名を英雄として称えると言うのはどうであろうか?」
「恐れながらお応えします。あの子達は7人ともまだ子供です。しかも12、3歳の学園に通ったばかりの、英雄として称えるには荷が重いかと」
「私も同意見です。レオン国王」
「そうか〜、確かに。何か良いのはないかの〜?結果的にはキルシュの国民全員に活気を与えられれば良いのだか…」
3人はしばらく考えるとフランシスが思いつく。
「こういうのはどうでしょうか。7人には恩賞を与えますが、国民には(学園の生徒達)と称えて代表で学園長に与えるというのは」
「うむ、それで?」
「はい、今回で我が国の兵力は著しく減り、また兵の質も問われます。なので褒美は学園を援助するのと、学園を通うには学費が高くて通える人も限られます。なので学園に通う者にも学費の補助をする。結果として多くの人が学園に通えて、卒業後は国の兵として入隊も多くなるでしょう」
「おお、それは良い」
「しかも学園には実践を積む科目も入れてもらう事で、今後の我が国の兵の質も上がるかと」
「よし、そうしよう。オットーはそれで良いか?」
「同意致します」
「7名の恩賞については何がいいかメリナにも聞こうと思うのだが…メリナが見当たらないのだが知っておるか?」
すると首を傾げながらレオン国王に聞く。
「メリナ様は中立都市ブルーメに行かれたのでは?」
「何!?聞いてないぞ」
「娘から聞いたのですが、重要任務で出かけると私の娘とオットーの娘が護衛に着き、テオ達と共に向かいました」
「全くメリナにも困ったものだ。アイツは一途で自由すぎるからな。まぁ私の責任でもあるが…フランシスよ」
「はっ!」
「話は変わるがあのツクヨミという少年、どう思う」
「どうとは?」
「あの強さだ」
「あれは異常です。はっきり言って彼に勝てる者はこの国ではいないかと」
「そうか」
「はい。レオン国王も見られたので分かるとお思いですが、あの時どうやってモーリスを斬ったのか全く分かりません。動きそのものが見えませんでした。更にあの黒い炎、私は初めて見ました」
「彼はこの国にどう及ぼすかが少し不安だが…様子を見るしかないか。メリナも懐いているみたいだしな」
「はっ!私の娘もオットーの娘とも仲が良いみたいですので」
「なっ!私は聞いてないが…」
「とりあえずフランシスとオットーに先程の恩賞の件は任せる。頼むぞ」
「「はっ!」」
フランシスとオットーは王の間を出て、学園に足を運んだ。




