第51話 嘘
エミリアが訪ねて来た。
「サクヤ、頼みがあるの!とりあえず中に入っていい?」
「はい、どうぞ」
エミリアは中に入り椅子に腰掛けた。
「私、冒険者なる!」
「?とりあえず一からは聞かせてくれ」
「だから〜冒険者になる事になったので一緒に来て登録手続きを手伝って!そして私とパーティー組みましょ」
「それは構いませんが…私達これから出掛けるのですが…どうします?兄さん」
「う〜ん…」
「ねぇ何処に行くの?」
「中立都市ブルーメに知り合いがいるから会いに行こうと思ってな」
「私も行くわ!」
「「「えっ?」」」
「決定ね。じゃあ明日出発と言う事で!じゃあ〜ねぇ〜」
エミリアはいきなり来て、言うだけいって帰っていった。
◆ ◆ ◆
「いや〜明日は楽しみだな〜」
エミリアが帰る途中にメリナとフィオナが前からやって来た。
「エミリア〜、何してんの?」
「ちょっとね。あんた達は?」
「町の状態を確認に来たんです」
「ふ〜ん、じゃね」
フィオナは怪しいと思い、肩を掴み引き止めた。
「機嫌がいいわね」
「気のせいよ」
「エミリアさんも復興手伝ってくれますの?」
「ちょっと忙しくてね」
エミリアは目を反らすが、余りにも嘘が下手すぎて全てを吐かされる。
「そっ!じゃあ私も行くわ」
「私も行きますよ」
「王女がこんな時に離れるのはマズいんじゃないかしら」
「平気です。いい考えがあります。二人とも油断するとすぐに抜け駆けしますしね」
「それでは明日朝7時にツクヨミさんの家の前に集合で!」
そのままメリナとフィオナは走って帰った。
「あれ、町の様子見なくていいの?」
◆ ◆ ◆
メリナは王宮に帰るとオスカー達を呼ぶ。
「オスカーいますか?」
「メリナ様、お呼びでしょうか」
「あなたは明日、中立都市ブルーメに行くのですか?」
「はい。しかし、私ではなくテオが部下を連れて向かいます」
「では、私も連れていって下さい」
「それはマズいのでは…」
「リア姉様に会って大事な話があります。って感じでお願いしますね」
「ハァ、知りませんよ。嘘なんかついて」
「では明日の8時に町の入口の所で待っていて下さい。とテオに伝えて下さいね」
「分かりました」
肩を落とし、ため息を吐きながらオスカーはその場から離れた。
「テオはここにいるか?」
「オスカーさん、どうしました?」
「メリナ様からの伝言だ」
テオに全て伝えた。
「えーーーーー!嫌ですよ。そんなの」
笑いながらフランクが近づく。
「御愁傷様!テオ」
「すまないな、俺には断れなかった。メリナ様を頼むぞ」
「はい」
テオは諦めて明日の準備の続きをした。
◆ ◆ ◆
フィオナは家に着くと父を探した。
「お父様」
「おお、ちょうど良かったフィオナよ」
「何でしょう?」
「冒険者をやってみないか?」
「どういう事ですか?」
「実はな、オットーの娘が冒険者になるらしい。実践経験を積むのが目的と言っていた。だからお前も卒業するまでに実践をたくさん積んでおきなさい」
フィオナはニヤリと笑い、フランシスにいろいろ伝える。
「お父様、私もエミリアと冒険者になり、彼女とパーティーを組む事を伝えにきました」
「お〜それはいい」
「それで初任務なのですが…メリナ王女の護衛です」
「メリナ様の護衛?私は何も聞いてないが?」
「ええ、先程決まったらしく、明日中立都市ブルーメに行く事になってます」
「それでは私はレオン国王に確認を取らねばならないな」
「いえ、お父様!これはメリナ様の重要任務で内密と言う事で」
「そうなのか?」
「はい!ですので私は今から支度し、明日の朝早く旅立ちます」
「分かった、気をつけて行きなさい」
「お任せ下さい」
フィオナはサラッと嘘をついた。




