第41話 天才の苦悩
いつも通り午前の授業が終わると珍しい人がツクヨミを訪ねてきた。
「ツクヨミくん、ヘンリーくんが呼んでるよ〜」
ツクヨミは教室を出て話を聞いた。
「やぁーツクヨミくん、代表戦以来だね」
「そうだな、で何の用だ?」
「ちょっと僕に稽古をつけてほしくてね」
どうやらヘンリーは少し行き詰まっていたらしく、自分足りない物をツクヨミなら気づかせてくれると思い頼んできたようだ。
「まぁいいが…それなら俺よりもいい相手がいるぞ」
「本当かい?今日は午後の授業が無いから家に来てくれないか!」
学校はちょうど1学期のテストも終わり、終業式まで授業も午前中で終わりだった。
「分かった、帰りに正面の門で待っててくれ」
そして正面でヘンリーが待っていた。
「悪い、待たせたな」
「僕も今来た所だから、でそちらの女性は?」
「あぁ、妹のサクヤだ」
「初めまして、サクヤです。いつも兄がお世話になってます。」
「別に世話になってないぞ」
「サクヤさん、僕はヘンリーです。よろしく」
「でツクヨミくん、もしかして相手とは彼女ですか?」
「そうだ」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、良い勝負になると思うぞ」
ヘンリーはビックリしていた。
ハッキリいってツクヨミ以外には負けない自信があった。
そしてヘンリーの家に着くと、道場に案内された。
「いいかヘンリー、俺から見たらお前はスキが無い…がそれだけだ。そして槍という武器の特徴しか活かされていない。つまりある程度の予測もたてられる。だから接近戦を鍛えた方がいいと思う」
「なるほど…しかしなぜ彼女が僕の相手にいいというのですか?」
「サクヤは接近戦が得意だからな!いい勉強になるぞ。サクヤ準備はいいか?」
「兄さん、準備は出来てます」
「そうか、本気でいけよ」
「分かりました」
「ヘンリーはサクヤに接近戦させるなよ!油断せず本気で行かないとすぐに負けるぞ」
そしてヘンリーは槍を構えた。
ツクヨミの合図で試合が始まるとサクヤが距離を詰める。
しかしヘンリーは簡単には懐に入れない。
「サクヤさん素晴らしい動きですけど、悪いがこっちも責めさせてもらいます」
突きの速度が上がり、四方八方からサクヤに襲いかかる。
しかしスピードではサクヤの方が一枚上手で、ヘンリーの最速の槍を全て躱す。
「ヘンリーさん、あなたの弱点が3つ程分かりました」
「えっ」
「まずは(紫電一閃)」
ヘンリーは何とか防御するがそのスキにサクヤは(瞬歩)で間合いを詰めた。
そして間合いを取るためにヘンリーは攻撃する。
「次行きます。(陽炎)」
当たった筈の突きがサクヤの体をすり抜けていく。
そして間合いが詰まると
「最後に(桜花乱舞 16連撃)」
ヘンリーは呆気なく負けた。
ツクヨミがサクヤの代わりに教えた。
「ヘンリー、サクヤが見つけた3つの弱点を教えてやるよ」
「一体なんだい?」
「1つ目が強力な攻撃を防御した後にスキが出来る。2つ目が懐に入られると槍のスピードが活かされずに遅くなる。3つ目は接近戦に慣れていない。今まで懐まで入られる事が少なかったからだろう」
「な、なるほど…」
「つまり自分より強い相手と戦いなれないといけないな」
「つまり、今までの僕は自信過剰だったと…」
「あと俺からは…ヘンリー、お前の攻撃は怖くない!ここぞという時に、状況をひっくり返す程の一撃の技がないとな」
ヘンリーはマジヘコみしているとサクヤが声をかける。
「私で良ければ、いくらでも相手になりますよ」
「お、お願いします」
そして暗くなるまで稽古すると、最後にツクヨミが1つ技を教える。
「ヘンリー、お前は才能がある。だから1つ技を教えてやるからよく見ておけよ!」
ツクヨミが槍を構えると神速の突きを放つ。
「穿け(スパイラルジャベリン)」
ヘンリーは目が点になった。
「ツクヨミくん!君は槍も使えるのか?」
「多少な、今日は帰るから分からない事があればいつでも聞いてくれ」
「しかし槍を投げたら躱されたら武器が無くなってどうする事も出来なくなるんじゃ……!!」
「別に投げてないぞ!」
「どうなっているんですか?」
「斬撃を飛ばした形が槍になっている感じだな!風魔法とスピードがカギになる」
「なるほど…」
「相手が初見だと槍が飛んで来たと思い防御する。すると斬撃で防ぎきれない。また、防いだとしても突きの斬撃なので連続で攻撃が出来るし、この技は破壊力もある」
「がんばって会得してみるよ!ありがとう。サクヤさんも…あなたの剣さばき、とても綺麗です。僕も少しでもサクヤさんに近づけるようにがんばるよ」
「ヘンリーさん、がんばって下さいね」
そしてツクヨミ達は家に帰った。




