第119話 逃走
目を覚ましたツクヨミが最初に目にしたのは、サクヤがくちづけをしていた。
「サ、サクヤ」
「兄さぁぁぁん」
抱きつき、泣きじゃくるサクヤがそこにはいた。
周りを見ると、シャルロット、メリナ、フィオナ、エミリアがみんな泣いている。
「どうやら、打ち勝った様だな」
「ミネルヴァさん、世話をかけました」
ツクヨミの体は力で溢れている。
それはそばにいるサクヤと、竜眼を使えるミネルヴァとシャルロットが理解していた。
「どうやら、まだ体は動かない様だな。今日はゆっくりと休め!詳しく話は明日だ。誰か寝室まで運んでやれ」
サクヤ、メリナ、フィオナ、エミリアが4人で運ぶ。
部屋では4人に囲まれながら、ツクヨミはベッドに横になっていた。
「寝れないんだけど…」
「こっちはねぇ、それどころじゃないのよ」
目を腫らしたエミリアが叫ぶ。
そして右手はフィオナが握り、左手はメリナが握る。
そしてツクヨミは気付いた。
左腕の感覚が無くなっている事に!
「メリナ、俺の左手を強く握ってくれ!」
「はい」
そしてメリナは強く握った。
「握ったか?」
「はい」
「そうか」
「どうしました?」
「いや、少し疲れていて…少し寝かせてくれ」
「どうぞ」
ツクヨミは静かに目を閉じて眠った。
◆ ◆ ◆
魔族領ではアイザックがアリーチェを連れて逃げ隠れていた。
魔王が死んでから7日が経った。
「すいません、姫様。どうやらアレス様の所まで辿り着くのは困難かと」
「いいのです。アイザック、今は無事に逃げのびる事が最優先です」
「はい」
「今のままでは見つかるのも時間の問題です。ここは一番近い竜人族に助けを求めるのはどうでしょうか?」
「そうですね、一番生存率が高いかと…」
しばらく歩くと村が見えた。
「姫様、少し様子を見てきますので、ここでお待ち下さい」
アイザックが様子を見に行くと、ほとんどの村人が殺されていた。
そして竜人と思われる男を見かけた。
声をかけようとしたが少し容姿がおかしい事に気付いて様子を見ると、他の魔族が竜人に近づいてくる。
「マクシム様、ここは既に全滅させました。次に行きましょう」
「おう、そうだな。しかし馬鹿だよなぁ、俺たちに従えば殺されずに済んだのになぁ。お前たち魔族はそんなに魔王に忠誠を誓っているのか?」
「それは一部の者だけです。今の魔王はプロセルピナ様が封印されてから腑抜けになり、私達の様に反魔王派も少し増えてきた所です」
「なるほどねぇ〜、何処の国といろいろあるって事か!それじゃあ次に行きますか」
「わかりました」
「ちょっと待て!(フレア)」
「マクシム様!何を?」
「気のせいか?何でもない、行くぞ」
そしてマクシム達は次の村を目指した。
アイザックは急いでアリーチェの所に戻った。
「アイザック!どうしたのですか!!」
「大丈夫です。気付かれませんでした。どうやら村の者は全滅したようです。奴らは次の村に向かいました。今、この辺りは安全です。少し休みましょう」
「それよりアイザック、あなたの手当が先です」
アイザックは一応気をつけながら、村に食料など無いか探した。
「姫様、多少ですが食料が残っていました。今はこれで我慢して下さい」
「ありがとう、アイザック。あなたも食べて下さい」
「はい」
そして食事を済ませたアイザックとアリーチェは少し休んだ後、国境に向かい歩き出した。
「姫様、もう少しで国境です」
「はい」
すると後ろから槍が飛んできて、アイザックの胸を貫いた。




