第1話 旅立ち
この世界は7つの大陸と7つの種族で別れている。
7つの種族とは【人、獣人、ドワーフ、エルフ、妖精、竜人、魔人】である。
7つの大陸は海で別れていて、地図の中央にある最も大きい大陸に、一番人口の多い人族が住んでいる。
その大陸の右上端の方に大きな森があり、そこは迷いの森と呼ばれている。
迷いの森は霧に覆われていて薄暗く、一度迷ったら生きて出る事が困難と言われる場所である。
その森の中央に一角だけ光が入り込む場所がある。
そこはまるで結界に覆われたかのような綺麗な所で、澄んだ水が流れる川に小さな畑と家がある。
そしてそこでは30代半ば位の女性が一人と子供が二人いる。
一人は12歳の黒く澄んだ瞳の少年で、もう一人は金色の瞳の少女、三人は静かに暮らしていた。
ある日、朝を迎えると
「お母さんおはよう、身体は大丈夫?」
朝食の支度をしている少女が母親に挨拶をする。
「今日は大分調子がいいわよ、サクヤ」
母親は体を起こし、しばらくすると少年が畑仕事から帰ってきた。
「ただいま〜」
「お帰り、ツクヨミ」
「お帰りなさい、兄さん」
「サクヤ〜腹減った〜、飯の支度は終わってるか?」
「ええ、用意は出来ているわ。さっ、早く食べましょ」
そしていつも通りの生活が始まる。
朝食を食べ終わると母が二人に
「ツクヨミ、サクヤ、ちょっと話を聞いておくれ」
「な〜に〜お母さん」
「どうした?母さん」
「お前たちはもうすぐ12歳になる。…これからは自分たちの好きなように生きなさい」
「急にどうしたんだい、母さん」
母は二人の顔をジッと見つめて
「母さんはもう長くは生きられないの」
「そんな事ないわよ、お母さん」
「サクヤ、最後まで話を聞いておくれ」
二人は黙り、母は真剣な顔で…そして寂しそうに話し出す。
「今まで黙っていたけどね…2人とも私の実の子ではないの。…そして3人とも血の繋がりはないのよ」
「………」
ツクヨミはただ黙ったままうつむき、サクヤは泣き出した。
「落ち着いてよく聞いておくれ!…今までも、そしてこれからも、本当の家族…いいや、それ以上にお前たちのことを想っているよ」
「…」
「だからいいかいツクヨミ…母さんが亡くなったらサクヤを頼むわよ」
「そんなの当たり前だろ!」
サクヤはただひたすら泣き続ける。
「そして二人とも、一つだけ約束しておくれ」
「ヒック、な〜にお母さん」
「その瞳の力は誰にも話してはいけないよ。」
「………ああ、分かったよ」
「約束するわ、お母さん」
そう、人族には極稀に特殊な力を持つ人が現れる。
それは1000万人に一人現れれば多いと言われている。
特殊な力を持つ人は周りから忌み子として目を背かれる。
だからこそ母は二人を拾い、誰も来ない森で育てていた。
しかし楽しい日々は突然終わりを告げることになる。
どんどん体が弱っていた母は、ついに起き上がる事も出来ず、そっと二人に微笑み、やがて目を閉じる。
そしてそのまま目を開けることはなかった。
翌日。
お墓を建て花を添えると、ツクヨミがサクヤに告げる。
「この森を出るぞ」
「えっ」
「お前はこれからどうしたい?何かやりたいことはあるのか?」
「わ、わたしは…」
サクヤが言葉に迷っていると
「俺はこの世界をもっと知りたい!そして…」
ツクヨミが話しているといきなり
「わたしは兄さんについていく!」
大きな声でサクヤはツクヨミに叫ぶ。
「そうか、分かった。まずは町を探そう。そこで仕事を見つけ暮らしてみよう」
「私は…、学校と言う所に通ってみたいわ」
どうやらサクヤにもやりたい事があるようだ。
「分かった。支度して早速家を出よう」
家には母が若い時に集めた物がたくさんあり、その中に【オケアノスのバッグ】と言うものがある
オケアノスのバッグは一言で言うと魔法のバッグである。
バッグの中は異空間になっている。
どれくらい入るか分からないが、とりあえず部屋にある物すべて入るスペースはあった。
荷物をすべてバッグに入れるとツクヨミは刀、サクヤは両脇にショートソードを装備する。
「さて、行くか」
「はい!兄さん」
そして二人は森を出た。